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二つの時間

よろしくお願いします!

〈 朝、屋敷外の開けた草原… 〉


「はー!」


(ガキン!)


「ふっ!まだまだ爪が甘いですよ!悠真様!」


「くっ…まだまだ!」


(ガン!ガン!ガシン!)


僕は今ユリーシャと剣の稽古をしている。

ユリーシャの剣裁きは相変わらず軽やかで、僕の剣を次々にかわしていく。


「はぁ…はぁ…はぁ…はぁ…」


「悠真様…少しばかり休憩しましょう!」


息が上がりきっている僕を見て、ユリーシャはそう言い剣を納めた。


「はぁ…はぁ…ユリーシャ…あんなに動いて…息切れしないって…やっぱりすごいな…」


ユリーシャ同様剣を納めた僕は、草原に倒れ息を整える。


「ふふっ!だてに勇者はやってませんよ!それに私は、小さい頃から修行や稽古は当たり前の日々を送っていましたので」


ユリーシャは横になっている僕の隣に座り、笑いながらそう言った。


「ふー…気持ちー…」


草原に心地よいそよ風が吹く。


「ユリーシャ…昨日は僕の話を真剣に聞いてくれてありがとう!感謝してる!」


「昨日も言いましたけど、私は心から悠真様を愛しているのですよ?真剣に聞くのが当たり前です!」


ユリーシャは倒れている僕の顔に、自分の顔を近づけてそう言った。


「ちょっ!ユリーシャ…顔!近い近い!」


僕は慌てて顔をそらしそう言う。


「わざとですよ…私がどれ程悠真様を愛しているか、証明します!だから、悠真様、私から目をそらさないでください…」


ユリーシャはそう言うと僕の顔を自分の方に向け、少しずつ目を閉じながら唇を重ねてきた。



「ふぅ…ふふっ!さぁ…休憩は終わりです!もう少し、頑張りましょう!」


唇が離れた後のユリーシャは頬を赤らめながら優しく微笑みながらそう言うと、スクリと立ち上がり僕に手を伸ばす。


「了解!」


僕はユリーシャの手を掴みそう言いながら立ち上がった。

そして、草原ではまた、剣が交わる音が響く…。







〈 昼過ぎ、屋敷近くの森の中… 〉


「やー!」


「悠真よ、その程度か?」


(ドスン!)


目の前にあったはずのイリアルの顔が一瞬にして僕を見下ろしていた。


「いてててて…けど…まだまだ!」


「うむ!そのいきだ!だが、まだ甘い!」


昼御飯を食べた後、僕はイリアルと武術の稽古のため近くの森に来ていた。

ユリーシャの剣さばきも凄かったけど…イリアルの武術も凄い…最小限の位置から動かず僕の攻撃をかわしたと同時に僕を投げ飛ばしているのだから…


(ドスン!)


「はぁ…はぁ…はぁ…はぁ…」


「悠真よ…少し休憩にするか?」


息を切らしながら立ち上がる僕を見て、朝のユリーシャ同様、イリアルは息切れひとつしないで、拳を下ろしそう言う。


「ユリーシャもだったけど…イリアルも息切れしないって…凄いね…」


僕はそう言いながら近くの木にもたれかかる。


「ふっ!まぁ、だてに魔王をしてるわけではないからな!悠真は少し力が入りすぎなんだ!今から攻撃しますよって言ってるも同然だ!もっと肩の力を抜いて、相手の懐に瞬時に入り攻撃しないと!後、パンチするときは最初から力を入れてたら腕を痛めるぞ!パンチはな…」


イリアルは僕のとなりの木に的を定め構える。


「こうするんだ!」


(シュッ)


イリアルがそう言ってパンチをした瞬間、物凄い風と共に僕の隣にあった木が折れて倒れた。


「いやいやいやいや…無理…無理だって!」


僕は冷や汗をかきながらそう言う。


「コツさえ掴めばさほど難しくないぞ?パンチをする瞬間にキュッて力を込め前につき出すんだ!」


イリアルは軽くジェスチャーを交えながら僕に教える。


「うーん…まぁ、頑張るだけ頑張ってみる…」


僕は苦笑いをしながらそう答えた。


「あっ!そうだった、悠真、これ飲むか?」


イリアルはそう言うと僕と同じ木に背をつけコップを渡す。


「何?」


「トルティって言う甘くて栄養がある市場には出回らない果実があるんだ!それを絞って作ったジュースだ!」


「へー!」


僕はコップに口をつけて飲んでみる。


「んっ!んくっんくっゴックン!」


何とも言えないさっぱりした甘さが喉を潤し、僕はそのジュースを一気に飲んでしまった。


「どうだ?うまいだろ?」


イリアルは僕の顔を見てニコニコと笑いそう言う。


「うん!甘くて美味しかった!イリアルは?飲まないの?」


僕の問いかけにイリアルはニヤリと笑う。


「悠真が口移しで飲ませてくれ!」


「へぇっ?」


僕は戸惑ったようにそう言い目をパチクリさせる。


「朝、ユリーシャとキスしていただろ?だから…いいから早くしろ!」


イリアルは真っ赤に頬を染める。


「みっ…見てたの?でも、普通にするのじゃダメ?口移しは…」


「駄目だ…お願い…」


イリアルはコクリと頷きそう言うと上目遣いで僕を見つめる。


「はぁ…するしかないか…分かったよ!」


頑固なイリアルに負け、僕はため息をし、ジュースを口に含みイリアルに口付けした。


「んっ…んくっんくっ…ゴクン…はぁ…はぁ…はぁ…ふふっ…悠真からのキスは初めてだな?悠真…私はお前を愛してる…ユリーシャに負けないくらいにだ!」


口を離した後のイリアルはユリーシャと同じように微笑みそう言いうと、イリアルの顔が近づいてきて僕の唇に重ねた。


「んっ!」


僕はいきなりのキスに驚き腰が抜けたようにゆっくりと地面に尻餅をついた。


「くっ…なに腰を抜かしている?」


イリアルは笑いながら僕の顔を見てそう言う。


「いきなりするからだよ!」


僕は手で真っ赤に染まった顔を隠し言う。


「ははははっ!まぁ、いいじゃないか!さっ、続きを始めるぞ!」


イリアルはサッと立ち上がると僕に手を差し出す。


「はぁ…まったく…」


僕はため息をついてイリアルの手をとるとひょいっと立ち上がった。


「じゃあ、行くぞ!」


イリアルはそう言うと僕から間合いをとり、拳を構えた。


「了解!」


朝と同じようにそう言い僕も拳を握りしめる。


「はぁー!」


森の中では、また僕の声と拳がぶつかる音、そして…


(ドスン!)



僕が投げ飛ばされる音が響いていた…



運命の日まで後……83日

今回も最後まで読んでいただきありがとうございます!

二人からの愛のキス、はぁ…書いていて主人公悠真が羨ましい…と思う僕…

まぁ、それはいいとして、次回の話も読んでくだされば嬉しく思います!

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