心地良い空間
お願いします!
気が付くと笑っていた声は聞こえなくなっていて、広間にいたランクルスも消えていた。
(今まであった事は全部夢だったんじゃないか…)
そう思いたい自分がいたが目の前に広がやる広間のおびただしい血の量が夢じゃないことを物語っていた。
「…」
「…」
二人とも抜け殻のようにその場にいる。
そういう僕も以前立ち尽くしたままだ。
「グランデル様ー、ユリーシャ様ー…」
かすかに聞き覚えのある声が後ろから聞こえ僕らは振り返る。
そこには、アルデルン王国に行ったはずのアルとエリ二人が走って近づいて来ていた。
「ア…ル…、エ…リ…どうして…」
僕はかすれた声で言う。
「主達に…(はぁはぁ)いくら…テレパシー送っても…返ってこなかったので…心配になり…」
アルは息を切らしながらそう言う。
「一緒に行ったエルグとララル、シャルは?」
イリアルは聞く。
「エルグ隊長達三名は当初の目的通り国王の元に行かれました。隊長から連絡ありまして、目を覚まされ朦朧とはしていらっしゃいますが命に別状はないそうです。」
エリは淡々とそう答えた。
「そうですか…お父様はご無事でしたか…」
「よかった…」
ユリーシャとイリアルは少し安堵の表情を見せた。
「主達はいったいどうされたのですか?抜け殻のように…それとこの広間のおびただしいほどの血は?いったいここで何があったのですか?リーク様達は見つかったのですか?」
アルは僕らを見ながら静にそう言った。
「それは…」
今まであった事を言おうとしたが僕ら三人はそこまで言うと黙り込んでしまった。
「まぁ…グランデル様達が言いたくないのでしたら無理にとは言いません…」
エリは何かを悟ったようにそう言い優しく微笑み静にイリアルとユリーシャに手を伸ばした。
「エリ…」
イリアルとユリーシャは泣きそうな顔でエリの手を取り立ちあがる。
「ひっく…ひっく…」
二人が立ち上がった瞬間二人の目からは波だがボロボロと出て嗚咽を漏らしながらエリに抱き付いた。
「…」
エリは何も言わず二人の頭を優しく撫でる。
「主も…」
僕の目の前にも手が差し伸ばされ、その手を取り立ち上がる。
「…」
アルも何かを悟ったのか何も言わず優しい目で僕を見て微笑んでいた。
僕の内側から(ブワッ)っと何かがこみ上げ一気に波だが出て来る。
「あれ?どうしたんだろう…」
僕は必死に涙を拭う。
「主…」
(ギュッ)
アルはそういって優しく僕を抱き寄せた。
「わーーー!!」
プツリと何かが切れたかのように僕は泣き出した。
「…」
そんな僕をアルは何も言わず優しく頭を撫で背中を擦る。
シンとした洞窟で僕とイリアル、ユリーシャの泣き声だけが響き渡っていた。
気付くと僕らはアルとエリに連れられ出入り口に向かっていた。
アルもエリも何も言わず僕らの歩幅に合わせゆっくりと歩いてくれている。
アルとエリは尚も無言出歩く…だけどそれが妙に心地よく、落ち着いた。
前を見ると光が見えた…出口だ。
洞窟を出るとグリフィンとドラゴンが待っていた。
グリフィンには僕とアル、ユリーシャがドラゴンにはエリとイリアルが乗り僕らは洞窟を後にした。
(あれは…あの声はいったい…)
僕はそう思いながら遠ざかる洞窟を見つめてまた前を向く。
最後まで読んで下さりありがとうございます!
今後も投稿不定期になることもあると思いますがこれからもお願いします!




