それぞれの用事とウィルへの買い出し(後編)
遅くなりました!
今年最初の投稿です!お願いします!
シャルが呪文を唱えると僕らが立っている所が光輝く。
僕は眩しさに耐えれきれず目を閉じた。
「…」
「悠真様?もう眩しくないですから目を開けて下さい。」
シャルの声が聞こえ僕はそっと目を開けた。
「うわー!」
目を開けた僕は、目の前の景色に驚いた。
景色が物凄いスピードで後ろに流れている。グリフィンやドラゴンに乗ったときとはまた別な感じで、移動しているのに風一つ感じられずただただ、静に景色が流れているだけだった。
皆は、各々眠りに入ったり読書をしたりしている。もちろん、シャルに手をついてだ。
「悠真様…気分は悪くないですか?」
シャルは真っ直ぐに前を向きながらそう言う。
「あっ…いや、大丈夫だよ?」
僕は(ハッ)となりそうシャルに言った。
「良かったです。悠真様も退屈でしたら何かしていても良いですよ?あっもちろん、僕の体から片手だけは離さない手下さいね?魔法が解けて落ちてしまいますから。」
シャルは真剣な声でそう言うと意識を集中させるように黙り込んだ。
シャルが意識を集中させるとスピードはさらに増し光の速さのように景色が流れる。
僕は、シャルの集中を妨げないようにそっとマントの懐に入れたシャルの本を取り出し、続きを読むことにした。
「……………」
やっぱり、この本は面白い。向こう(現実世界)に居たときのどの本よりも面白く斬新で、僕は段々とその世界に引き込まれていく。
「…様…ゆう…様…悠真…様…」
遠くの方で僕を呼ぶ声が聞こえた。
「悠真様!!」
「…はっはい!」
今度はハッキリと聞こえ僕は慌てて返事をした。
「大丈夫ですか?着きましたよ?」
シャルにそう言われ僕は辺りを見渡す。
辺りは木々や草で覆われた森のようだった。
「ここが…ウィル?」
「ここから、まだ奥に歩いて行った所にウィルはあります。」
首を傾げて聞いた僕にシャルは森の奥を指さしそう言う。
「ふーん…」
「悠真様…ここからはフードを被って下さい。」
シャルはそう言うと僕にフードを被せた。
「悠真様…これも付けていた方が良いかもです。」
そう言ってハクアが僕の胸に黒いペンダントをはめた。
「ん?これは?」
僕はそれを見ながらハクアに聞く。
「はめていた方が何かと便利な物なので、絶対に外したらいけませんよ?」
ハクアは微笑みながらそう言った。
「…そうなんだ。うん、分かった!」
僕はそう言って頷いた。
「最後にウチからこれを…」
キルからは布に包まれた物を渡される。
「…?」
僕は首を傾げながらそれを受け取った。
(ズシッ)
「のぁっ…」
(ガシャン!)
受け取った瞬間その物の重さに耐えきれず僕は受け取った物を地面に落としてしまった。
「大丈夫ですか?」
シャルとハクアはビックリして僕に近寄ってくる。
「あっ…魔法といちゃってました…悠真様…怪我ありませんか?」
キルは心配そうに僕を見る。
「悠真様?」
シャルとハクアも心配そうに僕を見ている。
「あー…大丈夫だよ!でも、こんな重たい物は僕には無理かな?」
僕は苦笑いをしながらキルに言う。
「すみません…」
キルはシュンとなり下を向く。
「…うーん。これならどうにかなるかな?」
落ちた物を見ながらそう言うとハクアは自分が持ってきたカバンから道具を取り出すと何やらし始めた。
「ん?」
僕らは何をしているのか分からず首を傾げていた。
「ふー…。うん…上出来…」
ハクアは汗を拭いながらそう言うと僕の方を振り向き布に入れた物を渡す。
「何を作ったの?」
僕はそれを受け取りながらそう言った。
「まぁ…開けてみて下さい」
「…うん」
僕はハクアに言われるまま布を開ける。
「…えっ?これって…。」
僕は中を見てびっくりした。中からは銀色の鞘に入れられた剣が出てきたのだ。
「キル、ハクアありがとう!」
僕はそう言って頭を下げた。
「…どういたしまして!」
2人は顔を見合わせてクスリと笑うと僕を見てそう言った。
「では、行きましょう!」
僕らはそう言って歩くシャルの後を着いていきながら森の奥に進んでいった。
数十分歩いただろうか、森が開けてきて大きな門が見えてきた。
「皆さんはここでお待ち下さい!」
シャルは僕らにそう言うと門の前に立っている奴(門番だろう)に近づき何かを言う。
「…はい!確かに…では、門を開けます。」
門番がそう言うと鈍い音がし、門が開いた。
(ガヤガヤ)
『ウィルへようこそ!』
ウィルに入るとそう書かれた看板が目の前に現る。
想像していたよりかなりにぎやかな雰囲気で僕はビックリした。
「悠真様、はぐれないで下さいね?」
そう言いながらシャルが僕の手を引く。
「シャル…ここでは、悠真様の事名前で呼んだらまずいのでは?」
キルが辺りを気にしながらシャルに囁くように耳打ちをした。
「…?」
僕は何の話をしているのか分からず首をかしげる。
「それもそうですね…では、悠さんでどうですか?」
「それでいきましょう!」
三人は何やら輪になり話をしながら頷き、僕の方を振り向いた。
「ウィルに居る間だけ悠真様の事を悠さんと呼んでも良いでしょうか?」
シャルが控えめに僕に言ってくる。
「ん?僕は別に構わないよ?と言うか…ウィルに居る間だけじゃなく帰ってからでもそう読んでもらえると僕的には嬉しいんだけどね。」
僕は微笑みながら三人に言う。
「……」
「あっ…えっと、シャルたちが嫌なら今までの呼び方でも…」
僕が言いかけたところで三人は瞬時に輪を作り直し何やら話している。
「何…今の…」
「ウチ、ビックリしました…」
「僕も…今までにないくらいドキッとしたんだけど…」
三人は僕を(チラッ)と見るとまた話し始める。
「さすが、ユリーシャ様が好きになった方です…」
「いや…さすがグランデル様が好きになった方でしょう!」
「いや…グランデル様とユリーシャ様に見染まれた方ですよ!」
「…そうですね!」
三人は頷きながら何かを言っているけど僕には良く聞こえなかった。
「じゃあ…買い物に向かいましょう!」
話が終わったのか皆は僕の方に近づきシャルとハクアは僕に腕組みをしてきた。
「えー…ウチだけ除け者?」
「…えっ?えっ?」
僕はいきなりのことで戸惑いながら腕組みをするシャルとハクアを見た。
「さぁ、悠さん?行きますよ?」
「まずは僕の買い出しに行きませんか?」
「えっ…うっうん、分かったけど…これじゃあ歩きにくいんだけど…」
僕はシャルとハクアを見ながらそう言う。
「…まぁ、悠さん良いじゃないですか!では、シャルさんの用事から済ませていきましょう!」
ハクアはニコリと笑って僕を見上げた。
「…えっとー、ウチの事忘れてませんよね?」
キルがガックシと首を下に下げながら言う。
「ちょっと待って…ハクア、シャル、腕を一旦放して貰えないかな?」
「はぁ…分かりました」
僕がそう言うとシャルとハクアはため息をつきながら僕から手を放した。
「はぁ…ウチって影的存在なのかな?」
キルは下を向きながらブツブツとそう言っていた。
「キル?」
「もういいですよ…」
僕はキルに話しかけているがキルは聞いてない様子だ。
「キル?」
僕はもう一度名前を呼ぶ。
「…はぁ」
(完璧にネガティブモードに入ってるな…)
僕はそう思いながら軽くキルの肩を叩いて名前を呼ぶことにした。
(ポンポン)
「キル?」
「はい?」
やっとキルに言葉が届く。
「キル…行くよ?」
僕はキルに手を差し出しながらニコリと微笑む。
「…はっ…はい!!」
キルは目を潤わせながら僕の手を握る。
「まったく…悠さんは優しすぎますね?」
「ふふっ…先が思いやられますね?」
シャルとハクアは僕とキルを見ながら何やら笑っている。
「ん?シャル、ハクア?どうかした?」
「いえ!悠さん、じゃあ行きましょうか!」
そうして僕らは買い物を始めた。
最初はシャルの買い出し、そしてハクアの買い物と進んでいく。
昼食を挟んで最後にキルの買い物を皆で見る。
買い物が全て終わったときは辺りは暗くなり、電灯がつき出した。
「では…帰りましょうか!」
シャルが言う。
「あっ…その前に僕ちょっとトイレに行ってきて良いかな?」
「着いていきましょうか?」
「いや、すぐそこだったから大丈夫だよ?ここで待っていてくれるかな?」
さすがにトイレまでは恥ずかしいと思った僕はそそくさとトイレに急ぐ。
「…ふぅ」
トイレを済ませた僕は手を洗い外に出た。
「…お前、金持ってるだろ…」
いきなり野太い男の声がして僕は顔を上げた。
そこにはマントに身を包んだデカくがたいの良い男が立っていた。
「…いえ、金は持ってません。この通り何も。」
僕はそう言いながらポケットを裏返して見せた。
「じゃあ、お前のお友達に金を持って来させろ!」
男はデカイ声で僕に掴みかかってくる。
そうして僕は暗い路地の中に連れて行かれる。
「…えっと、そう言われましても…」
僕は苦笑いしながら言う。
「あん?おい!野郎ども出て来い!」
男がそう言うと三、四人の男たちが路地の暗闇から姿を現した。
「さぁ…叫べ!命がけ惜しけりゃな。」
男はニヤニヤとした顔をしながらそう言う。
「それは、無理な話だね?だって、僕には友達はいないから…」
こんな状態、昔の僕なら助けを呼んで逃げ出す所なのに今の僕は自分でも驚くくらい冷静にそう言っていた。
「…おめー!!」
男が手を振り上げた時だった。
「悠さん!!」
そう叫びながらシャルたちがどこからともなく現れた。
「シャル、ハクア、キル!」
三人のいきなりの登場に男は怯んで僕から手を放す。
それを見てすかさずシャルがスピード魔法で僕に近づき僕連れて男から離れた。
「悠さん、お怪我はありませんか?」
シャルたちは心配したような声と怒りの声が混じったような声をして僕を見て、男たちをギロリと睨みつけた。
「ははは!そっちから来るとは…まぁ手間ははぶけた!」
男はそう言うと関節をならして僕らに近づいてくる。
相当腕には自信があるようだ。
「何で僕の居場所がわかったの?」
僕は近づいてくる男を見ながら皆に聞く。
「それです。」
ハクアが僕のマントに付けてあるペンダントを指さしながらそう言う。
「ペンダント?」
「そうです。それにはちょっとした細工がしてありまして、それのお陰で悠さんの居場所が瞬時に分かったんです!」
ハクアは言う。
「悠さんがあまりにも遅いから心配になって…探してみたらトイレじゃないところにいたから何か面倒なことに巻き込まれたと思いましてね…」
キルが続けるように言う。
「僕の魔法で急いで来たって分けです!全くもう…悠さんは油断しすぎなのですよ?」
シャルが呆れたような声でそう言う。
「あはは…ごめんね?」
僕はちょくちょくツッコミたい所はあったが素直に謝る。
「所で悠さん…本当に何もされてないですか?」
シャルが再度僕に聞く。
「えーと胸ぐら掴まれたくらいかな?」
僕がそう言うと
「…ほー、胸ぐらを…」
「…掴まれた」
「ですか…」
そう言って三人は男たちを見る。
「お話は終わったのか?じゃあいくら置いて行ってくれる…」
(ゴフッ!)
男がそう言いかけたときだった。
男を見るとそこには、鈍い音と共に地面にお腹を抑えてうずくまる男の姿があった。
一瞬過ぎて僕も回りの男たちも口をポカーンとあけ唖然としていた。
「では、私も。」
腰に差した剣を抜いてハクアは男たちに斬りかかろうとする。
「ハクア!待て!」
それを見て僕は自分の腰に下げた剣を抜かず鞘でハクアの剣を受け止めた。
「悠さん!?」
ハクアはビックリしたように僕を見て剣を放す。
「ハクア…殺しは駄目だよ?」
僕は剣を腰に戻してハクアに言う。
「ふっ!死ねー!」
僕の背中めがけて男が小刀を振りかざしてきた。
「悠さん!!」
(ガキン!)
鈍い金属音が静かな路地に響き渡る。
「お兄さんたちも後ろから襲うのはどうかと思いますよ?」
僕はそう言いながら腰に下げていた剣を抜き小刀を受け止めた。
「なっ…」
小刀の男は焦った表情になり固まった。
「僕と本気でやり合いたい?」
僕の中にある斑模様の僕が目を開ける。
僕の目は赤と青に光、男たちを見る。
「ひっ…ひー!!」
僕の目を見て男たちは蜘蛛の子を散らすように逃げていった。
男たちが逃げていき斑模様の僕はまた眠りにつく。
それと共に僕は気を失ってしまった。
こうして、ウィルへの買い出しは終わった。
最後まで読んで下さりありがとうございます!




