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僕達の七夕戦争  作者: 小月 恵
戦争前日
2/14

2013/07/05

「ーーーー……ル!……ハルっ!!」



誰かの呼ぶ声に、長月ながつきはるか(ハル)は目を覚ます。


見慣れた教室、いつしからか寝てしまっていたハルが目を窓の方へと向けると、日はすでに沈み始めていた。




声のした方には、高校三年間ずっと見てきた顔、神無かみなしたくみと、霜月しもつき純斗すみとが立っていた。



「ハル、五時間目からずっと寝てた。よくそんなに寝れるな」


そう言うのは、霜月純斗、通称ミト。


「じいさんみてぇだな!はは……ハルじいだ」


神無匠、通称タク。



三人は入学直後、クラスが一緒で家も近所で、必然的に仲良くなった。


高校の友達なんて、そんなものだろう。



以来、ずっと三人で過ごしていた。無口でぶっきらぼうなミトと、明るくちょっとバカなタク、その二人をまとめるようにハルがいる。



「ハル。今日も行くだろ?」

「早くぅ〜支度しろよぉ〜」



ミトとタクに、急かされるようにハルは出したままだった教科書やノートをかばんの中へと押しこむ。


そう、今日も行かねばならないのだ。



「早く行こーーゼッ!!」


ゼッ!!のところで謎の決めポーズを取るタクを無視し、準備を終えたハルとミトは教室を出ていく。




向かう場所はハルの家。




目的は、カレー作り。





普通の高校生だったら、放課後集まってゲームや馬鹿騒ぎをして遊ぶんだろう。

事実、三人も少し前まではそうだった。



それが今は毎日のようにカレー作り。なぜか。


それは、ある女子の一言から始まった。




「私ね!カレー作るのが上手な人が好きなんだっ」



クラスの、いや、学校中の男子から羨望の、眼差しを受ける唯一の女子。宇佐木うさぎ心海みみ


高校に通いながらも、あるアイドルグループに所属し、その中で行われている熾烈なセンターポジション争いに勝利。

今や日本では知らない人のなどいないであろうスーパーアイドル高校生。



学校中の男子が憧れながらも、どこか諦めてしまうような高嶺の花。

そんな女の子が言ったのだ。



ーーーカレーが上手だったら、付き合う。と。




そんな事件があったのがハルたち三人とアイドル宇佐木が三年生になったばかりの春、当初学校ではカレー戦争が勃発し、宇佐木の元へは下心満載の男子から大量のカレーが届けられた。




宇佐木はそんなカレーを一口食べては「ダメですっ」と可愛らしい笑顔と共に切り捨てていく。




三人もまた、そのカレー戦争に参加していた。

正確には、タクが参加し、それに巻き込まれていた。



実家で洋食レストランを経営しているハルの家へと行き、毎日のようにカレーの試行錯誤を重ねている。



何度も、何種類も作ったカレーはどれも"おいしい"止まり。

決定的な何か、が足りなかった。




その日作ったカレーも、進展は無し。

やはり、何かが足りない。



「よし!!」


三人でカレーの入った鍋を見ていると、タクが唐突に話しだす。



「このままじゃ埒が明かない!!それこで俺がから提案があります

明日明後日、二日間のカレー作りはお休み!ただし、休みの二日間で各々カレーに合う食材を探してこよう!

幸い明日からは三連休、時間はあるだろ?」



「まぁ………」

ミトが答える。


「別にいいけど、食材選びに忙しくて宿題できなかった。見せてくれ!って言うなよ」



「えっ!?いや……それは……っ!」


慌てるタクに、ハルがさらに畳み掛ける。


「提案したからには、凄いの期待してるからな」

「え?や…!そう言うのは関係ないんじゃ………!?」




「「じゃあな。」」




見事にハモった二人はてきぱきと片付けを済ませ、ハルは自宅である二階へ、ミトは出口へと向かった。



「え!ちょ、ちょっとまってくれよ!」


 

こうして三人の夏は動き出した。

忘れられない。七夕の出来事。





僕達の七夕戦争が、始まった。

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