【友葉学園】フェアリーラバー
主人公は、小野 広樹くん。乙男系男子です。
友葉学園、中学棟の3-C教室。
そこで今、俺こと小野 広樹の目の前では信じられない光景が起こっていた。
「転校生の青空 華さんだ。仲良くするように」
「よろしくお願いします!」
な、なんでみんな普通に対応してるんだ!?
まず、身長からして人間ではない。
確かに制服は着ているけど、そもそもチョークを両手で抱えるような手のひらサイズの人間は胎児以外いないと思う。
なによりも彼女、自力で羽動かして空飛んでるし。もし羽が生えている人間がいるのなら俺が変ということだ、ごめんなさい。
「じゃあ、小野の隣に詰めて座ってくれ」
(しかも隣の席かよ!?)
彼女はスクールバッグを吊り下げながらフヨフヨと飛んでくる指定された席に座った。
「よろしくね」
「あ、あぁ……うん」
誰か俺にUMAとの接し方について教えてくれ……。
*****
しかし、そんなことが起こっても3日もすれば慣れるもので一週間後には普段のクラスの日常風景までになっていた。
「広樹は青空さんのことどう思ってる?」
「妖精」
「もう……もっと具体的に言ってよ」
「これ以上なく具体的だとおもうぞ」
俺は、女子で机を合わせながら弁当を食べている青空さんを見ながら呟いた。
弁当もやっぱ小さいんだな。
「じゃあさ、好きか嫌いかで言ったら?」
「そんなに親しく話したことも無いし知らないよ。でも可愛いとは思う」
可愛いというのはもちろんフェアリー的な意味である。
「……ってかなんでそんなこと聴いてくるんだよ」
俺は一緒に食事をしている牛沢 梨花にツッコミを入れた。
一応言うと変な仲では無い。単純に部活とクラスが一緒なだけである。
「あー……いや、青空さんモテるらしいから」
「お前も大概じゃないのか?」
「そんなことないよぉ、青空さんには劣ると思うよ」
そういいながら牛沢は胸につけた二つの風船をばるんと揺らした。
ちなみに、牛沢は名前の通りに胸が大きいことで有名である。
まだ中学生なのに、大きさは学園の中でもトップ5には入る(という噂を男子から聞いた)。
さらにのほほんとしたゆるい性格なので、告白の噂も絶えない。
「お前さ、そういやなんで告白されんのに付き合わないの?」
「うーん、恋人って大変そうじゃん」
「……それもそうだな」
つまりは俺には、ほの字も無いということだ。
まああったらあったで困るのだが。
*****
6時間目は男女合同の体育だった。
内容はソフトボールである。
相変わらず男子は牛沢の踊る胸ばかり見ている。アホか。
「おい、小野いいか?」
「? なんすか先生」
「いや、女子の方なんだが……」
…………
……
先生に呼ばれて向かうと牛沢も待機していた。
「……なにがあったんだ?」
「ボールが当たっちゃったらしいね」
俺の目の前にいたのは、目をくるくる回して倒れている青空さんの姿だった。
「……生きてるのか?」
「みたいだね。とりあえず保健室いこ」
「そうだな」
俺と牛沢は保険委員ということで青空を保健室に連れて行くことにした。
「そっとそっと……うおっ軽っ……柔らか……」
「気をつけてね、そっとだよ」
「わ、わかってるって……」
*****
保健室に着くとそこには先生はいなかったため、とりあえず消毒液だけ手にとる。ティッシュや直接だと溺れるかもしれないので湿らせた綿棒を使う。
「羽は破れてないみたいだね。よかった」
「そうだな。羽は俺たちにもどうにもならないし……」
……まあこの消毒も妖精に効果があるのかは知らないけど。
「……しかしこんなに小さいんだな」
遠目では分からなかったが、身長は煙草箱一つ半くらいの大きさしかないし、体重も俺のペンケースの方が重いくらいだった。
しかし、こうしてみると顔は可愛い系の美人だし、スタイルも悪くない。
「……あ」
「どうした牛沢」
「青空さんのジャージ、破れてる」
よく見ると確かに青空さんの上着が少し糸がほつれていて、穴が空いていた。
「じゃあ直しておくか」
「どうやって? 脱がすの?」
「……」
*****
「……う、ううん……なにぃ?」
「あ、起きた」
牛沢は青空さんの唸り声を聞くと寝かしていた机に顔を近づけた。
「安心していいからね」と意味深な言葉を告げる牛沢。
何故か湿っている綿棒。
痣を負った体。
服を一枚脱がされている青空さん。
そして、後ろで自分の服に何かをしている俺。
「ぴやぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!?」
「お、落ち着いて! 落ち着いて青空さん!」
そう言いながら両腕を抑える牛沢、おいやり方が違うだろ……。
「な、なにするの!? っていうかなにしてたの!! ナニしてたんでしょ!」
体をよじらせながら涙目で訴える青空さん。
なんか本当に目覚めそうだからやめてほしい。
「おい牛沢! ったく、青空さん勘違いしてるだろ」
「え?」
「……自覚なしかよ」
俺が青空さんの上に直したジャージを掛けると、当の本人はキョトンとした顔になった。
*****
「そ、そうなんだ。怪我したんだね私。ごめんね勘違いして」
「いや、いいけどさ。消毒液とか大丈夫なのか?」
「うん、皮膚の仕組みは人間と同じだから薬に拒絶反応……は……え? お、小野くん? 私のこと、なんだと思ってる?」
突然どうしたんだろう。とりあえず答える。
「クラスメイト」
「いや、そうじゃなくて生物学的に!」
「え? 妖精だろ」
「ええええええっ!? なんでバレてるの!?」
バレてるも何もその容姿だろう。
「いや、牛沢だってそう思ってたんじゃないのか?」
「え? 私は青空さんのこと、人間だと思ってたよ?」
「なんでだよ! 小さいし羽生えてるだろ!」
「そりゃ十人十色だからね」
……つまり小さくて羽が生えた人間もいるだろうとそう言うことか。
……どんだけ天然なんだよ。
「え、えっと、これは私のせいなの! ご、ごめんね小野くんだけビックリさせちゃったでしょ」
「……まあ、最初はビックリした」
「実は私、ここに入るために存在阻害に似た魔法を使ってたの」
あーなんかファンタジー系のラノベで聞いたことあるな。
たしか周りの人に自分の存在を気づかせないとかそういうのだっけ?
似たというのは、周りに存在を妖精ではなく、あくまで羽の付いた小さい人間と思わせる魔法なんだろう……あれ?
「でも俺は妖精だと気づいたぞ?」
「そ、それは……その……ここに入学した理由が関わってくるんだけど……」
入学動機?
「……私、広樹くんのことを追うためにここに来たんだ」
「……ええ!?」
というかそんな名前で呼ばれる関係だったのか!?
「え、えっと、以前私に会ったの覚えてない?」
……そんなこと言っても妖精を見たのは初めーー
ーーあれ? そういや初めてじゃないのか? え? デジャビュ?
「えっと……いつだっけ?」
「12年前だよ?」
「12年前かよ! 俺、2歳だよ! まだ歩き始めたくらいだよ!」
そりゃ覚えてるわけがない。
「……でその赤ん坊は青空さんとどんな話してたんだ?」
「その……それは……こ、告白を……」
「……」
俺氏、2歳で女の子に告白する。
「……でなんで今来たんだ? ……というかそれ覚えてるって青空さん何歳なんだ?」
「2つしか変わらないよう!」
サバ読んでたのか。
「そ、その、流石に2歳児と付き合うわけにはいかないし、少し成長を待ってからと思って……」
「青空さん、本当に2つしか変わらないのか?」
4歳児の思考じゃない。
「よ、妖精の成長は早いの!」
そう言うと青空さんは、コホンと軽く咳をすると真面目な表情でこちらを見てきた。
確かに、人間の大きさにさせたら俺よりもお姉さんに見えないこともない。
「ひ、広樹くん……そ、その、私、広樹くんとなら……つ、つ、付き合ってもいいよ……?」
……
……なんだこれ。
クッソ可愛い。
……そ、そのなんだ……うん、断れるわけないよな! うん、そうだ!
ここで付き合っても俺は何も負い目を受ける必要がない!
「……こ、こちらこそ、お願いします」
「だ、ダメだよ! 青空じゃなくて華でしょ!」
「は、華さん」
「そう! 広樹くん!」
そう言うと青空さん……もとい華さんは俺の体に飛び込んで来た。 優しくこちらも手で包み込む。
「……びっくりした」
「えっと終わったかな?」
俺と華さんはそういえばと華さんの存在に気がつく。 飛びついた華さんに関しては顔を真っ赤にしている。
「それともこのあとシッポリする?」
「し、しねぇよ!」
「ひ、広樹くんとなら……多少無理してでも……」
「やめて、それ愛が重く感じるけど、ただの変態発言だから」
しかし、皆は魔法を受けていたのか。俺に通じなかったのは、多分俺に関しての思いが強いとかそんなところだろう。
「じゃあそろそろ先生のところに戻ろう?」
「そうね……あぅっ!!」
突然飛ぼうとした華さんは背中を抑えた。
「せ、背中の筋肉が……」
ああ、羽を動かそうとして攣ったのか。
「しかし、あとはもう着替えるだけだからな……牛沢頼めるか」
「ガッテン」
俺は牛沢の言葉を聞くと、裁縫で疲れた背中の筋肉をメキメキと伸ばした。
「おー、鳴るねぇ」
「結構集中したからな」
俺と牛沢は保健室から出ると運動靴を履いて外に出た。
「……あれ? 華さんは?」
ふと気がつけば牛沢は華さんを手に抱いてなかった。
「んー? いるよ? 怪我しないように優しく包んでるよ」
そういつもの平行線テンションで答えた牛沢は自分の胸を指でぽよぽよと突っついた。
「……」
「……?」
*****
放課後
「……柔らかかった」
「そ、そうか……また、牛沢に頼めばしてもらえると思うぞ」
「……うん、ちょっと癖になるかも」
羨ましくはない。
というと嘘になるから、そんなことを考えないようにする。
「そういや、華さんはどこに住んでるの?」
「あ、いや……」
「……人間禁止の妖精の都みたいなところなのか? 」
「……え、えっと……実は……」
…………
……
「……まさか家がなかったとはな、ちょっと待って掃除する」
俺は華さんを部屋に連れてくると机の上に乗せた。
「そんなお構いなく」
そうは言うが、少し気になっている様子はある。……というか部屋をクンクンしないでほしい。
「……で、これからどうするんだ?」
とはいえ予想はできている。
「……えっと、やっぱり元の生活かな? いつもと変わらずホームレス」
「……あー……いや、それはダメだ。というか彼女にそんなこと許す彼氏がいるわけがないだろ」
「で、でも、家なんてないし……」
俺はため息をつくとゆっくりと述べた。
「事情は聞かないが、帰る場所がないならうちに暮らせばいい。俺の家族には華さんは人間に見えてるんだろ。俺んち甘いから、クラスメイトと暮らすと言えば許してくれるから」
「そ、そんな……今日付き合ったばかりで同居なんて……」
「……と、とりあえずこの同居は恋愛関係ない! 人助けだ!」
「う、うん」
…………
……
結果、やはりあっさり許してくれた。流石俺の親、甘い。
「すいません、私用に夕食まで作ってもらって」
「いいわよいいわよ、それに広樹と仲良くしてもらってるみたいだし」
「は、ははは……」
もはやこんなんである。
「ねーねーちっちゃいお姉ちゃん、あとで遊ぼ!」
「うーん……私にも出来る遊びにしてよ?」
「えー? テレビゲームは?」
「……少し大変だと思う」
妹の律香とも仲良くなってよかった。律香は少し人見知りのところもあるからな。
…………
……
俺は部屋に戻ると課題に手をつけた。
「……ふーん、広樹くん意外と真面目さんなんだね」
「これくらい皆するだろ」
「……あ、ここは二次関数で……」
「あ、そっか……」
……
「……え、えっと華さん?」
「ん?」
「悪いけど……書きにくい」
ペンを走らせるたびにテキストにあぐらをかく華さんに当たりそうになる。
「あ、ごめん」
「いや、いいけど……」
華さんはテキストから降りるとパタパタと空を飛ぶと俺の頭に乗っかった。
「……そういえばこの部屋男の子っぽくないよね。どちらかというと中性っぽい感じで……」
「……まあな、少し恥ずかしいけど裁縫とか料理とか好きだからな。俺自身も中性っぽいっちゃそうなんだよ」
「そういえば体操着も直してくれたんだよね。ありがとう」
「あーいや、あんなのでも応急手当てだし……」
とはいえ感謝されるのは悪くない。
「あ、そうだ。あとでベッド作ってあげる」
「ええっ!? い、いいよ。タオルケット一枚もらえれば充分だって!」
「そんなペットみたいな扱いできないよ。よし終わった! 律香! いらないクッションとかない!?」
「だ、大丈夫だよ!!?」
…………
……
「ごめん、結局無かったみたい。とりあえず俺のクッションで我慢してくれるか?」
「……これが広樹くんのクッション……」
「え?」
「え、あ、いや。 ……ううん、これでも充分すぎるよ」
そう言うと華さんはクッションのニオイを嗅ぎ始めた。
「やっぱ汗臭いよな、ごめん。今、別のものに……」
「い、いい! こ、これがいいの!」
「えー……」
そう言うと、さらにクッションに顔をつけて必死にモゴモゴしていた。
これはやめてほしい。
「じゃ、風呂入るわ」
「あ、じゃあ私も……」
「ごめん、うちは風呂一つしかないんだ」
「それくらい知ってるよ」
……。
「えっと、華さんが一人でお風呂入れないのは分かるけど、それなら律香と入ってくれた方が……」
「……可愛いなぁ。恥ずかしがってるんだ」
「あ、当たり前だろ……というよりも、華さんだって脱がなきゃいけないんだぞ」
「もう照れなくてもいいのに」
こう言うことをいうと、華さんはやはり年上なのだと思わされる。
結局、華さんは根負けしてくれて俺は一人で、華さんは律香と風呂に入ることになった。
*****
「ねー広樹くん、この服……」
「俺が作った。サイズは知らないけど、10センチくらいだろうし適当にちょちょいと」
テーマはクリスマス。赤と白のコントラストがポイント。
「……すごい可愛い……。嬉しい! ありがと!」
キュン
「ま、まあそんな褒められた特技じゃないけど……」
「もう照れちゃって〜可愛いなぁ〜」
俺と比べるのも何だけど『お前が言うな』という奴だ。
色々このあと2人で遊んでいると遅くなってしまった。
ちなみに、遊ぶと言うのは言葉のそのままの意味であって深い意味があるわけではない。
「もう12時だな」
「そうだねー。じゃあ寝よっか」
そう言うと華さんは俺のクッションにポフンと飛び込んだ。
「うへへ……広樹くんのニオイ……」
「……やっぱ「これでいいから」はい」
やはり華さんのことはよくわからないな。
俺はベッドに入ると電気を消して眠りについた。
*****
次の日、朝起きたら華さんがクッションからいなくなっていた。
「……そうか、全て夢だったのか」
俺の彼女欲しい願望もついに種族を超えてしまうとは……
「……仕方ない。華さんは居なくても俺の心にはしっかりと生きてるからな」
俺が最終回っぽく締めた瞬間、突然布団がモゾモゾとし始めた。
「……え?」
「ふわぁぁぁあ……あ、広樹くんオハヨー」
「は、華さん!? なんでそんなところで危ないぞ?」
「いいのいいの、それに……いいモノ見れたし」
そう言いながら華さんは俺の足の間に降り立つと目の前の膨らみを感嘆の声をあげて見つめた。
「ほぉ……これが人間、もとい広樹くんの」
「ちょ、見るなよ! 生理現象だ!」
俺は枕で股間を隠すと制服を持って部屋を出た。
「ふふふ、からかい甲斐があるなー」
華さんはやはり妖精だなぁ……
オトメンとか懐かしいですね。
他のキャラは、
青空 華(妖精系女子)
牛沢 梨花(天然系女子)