暇人は結局暇人
おめでとうございます!
貴方は累計一千万人目のお客様です!
……そんなにココに読者は来ませんよ?
「じゃあまたなー」
「うん、また来年」
「遠いな!」
まったく…。
いつも思う。どうして俺がツッコミに回らなければならないのか。元々俺はボケる側だってのに。
いや、厳密に言うとエンドレスツッコミな訳じゃないけどな?俺がボケれば大体奴らはツッコんでくれる。ただ、俺がツッコむ比率が圧倒的に高い。
最近になってボケが二人に増えて俺の仕事が三倍になった。二倍ではない。あいつらは妙に意気投合していて抜群のコンビネーションでボケてくる。二倍で済む筈がない。
どこかからツッコミを辞めれば良いじゃないかと聞こえた気がするが、それはできない。俺は見ず知らずの人達の会話にすら心の中でツッコむ始末。
つまり、俺はツッコミを放棄することはできない。
ついでにもう一つ言わせて貰うが、あの二人がその抜群のコンビネーションで矢継ぎ早にボケてくるものだから俺がボケを挟む隙がない。さしずめ“ずっと僕達のターン!”と言ったところか。
そう思案している内に自宅へ到着。自転車を所定位置に停め鍵をかける。
そして家の鍵を開ける。
「お帰りなさい、あ・な・た♪」
俺はそっと扉を閉めた。
そういえば最近音ゲーやりに行ってないな、ちょっとやりに行こう。
「ちょっとちょっと!それは酷いんじゃないかな!?」
先ほど理解不能な台詞を吐いた奴が扉を開けて出てくる。
「何が酷いのか言ってみな」
「そんなに冷たい目で見つめないでくれよ…ドキドキするじゃないか…」
俺はチャリの鍵を開ける。確かカバンには五百円はあった筈だ。
「だから、無視は酷いって!」
「もう一度聞こう。何が酷いのか言ってみな」
「うん、さっきの冗談だから!悪いのは私だから!」
「……」
再びチャリの鍵を閉める。まったく、仕方のない奴だ。
「で、なんでお前が家に潜伏してるんだ」
「潜伏って!私はちゃんと合鍵使って鍵開けたから!」
「提議してる問題はそこじゃない。どうしてお前がわざわざお出迎えしてんだ」
「一度やってみたかったんだ」
「この暇人め…わざわざ俺かよ。アイツでも良かっただろ。アイツは多分嬉々として乗ってくれるぞ」
「別にどっちでも良かったから近い方選んだんだ」
適当に問い詰めながら家に入る。靴を脱いで自室へ向かう。
「母さんとか姉ちゃんは?」
「まだ帰ってきてないよ」
「そうか」
「あ」
「 ? どうした?」
「言い忘れてた事があったよ」
「なんだ?」
「ご飯にする?お風呂にする?それとも、わ・た・し?」
「お前どうせ飯作ってもなけりゃ風呂沸かしてもねぇよな?」
「ご飯にする?パンにする?それとも、わ・た・し?」
「言うと思ったよ。今この家にパンないからな?」
「…私にする?あたしにする?それとも、ぼ・く?」
「ぶっちゃけどうでもいい」
「ぼくにする?僕にする?それとも、ボ・ク?」
「漢字だとアイツとかぶるからやめてやれ」
自室に入る。もちろん奴も入ってくる。
鞄を床におろして制服を脱ぐ。奴が見てるが制服の下には運動着を着ているので問題無い。
「もう、つれないなぁ」
「つれなくて結構。大体一人称なんて自分の好きなようにすればいいだろ?」
「ふふっ、そうだね」
コイツの一人称なんてほぼパターン決まってるしな。そう考えながら鞄から色々取り出す。弁当箱とか。
「じゃあ、ボクはお風呂入れてくるね」
「おう、悪いな」
「こっそり食器用洗剤を流し込んで…」
「やめろ」
あー…しまった、筆箱引き出しに置いてきたな…。まぁどうせそこの机の上に文房具あるし、問題無いか。
弁当箱と水筒、それに親宛てのプリントを持って居間へ向かう。制服着てないと動くのが楽だ。
『ふっふふーん♪』
風呂場から浴槽を擦る音と奴の鼻歌が聞こえてくる。陽気な奴だ。なんにせよ俺の仕事が一つ減ってありがたいんだが。
『ここで〜♪食器用洗剤を〜♪』
「おいおい…」
奴が何か言っている。冗談だと分かっているから放置で良し。
『………ツッコミが無くて悲しいよボクは』
「俺がいつでも何にでもツッコむと思ったら大間違いだからな?」
『少しくらい反応してくれたって良いじゃないかな!?』
「おいおいって言った」
『聞こえ無いよ!』
そこで奴が浴槽の泡をシャワーで流し始める。なんだかんだ言って仕事はきっちりこなすタイプなのだ。でなきゃ有無を言わさず俺がやる。
棚から煎餅を取り出し封を切る。この煎餅は値段のわりに美味しいから気に入っている。醤油味。
奴が仕事を終えて居間に入ってくる。入ってくるなり、
「あ、美味しそうだね。ボクにもちょうだい」
と言ってくる。座ってる俺の後ろにきて口を開く。
「早くくれないと君の指ごと食べるよ?」
練りわさび突っ込んだろかな…。
とか思ったがわさび取りに行くのが面倒なので素直に煎餅を奴の口に突っ込む。危うく指まで喰われそうになった。
「結局喰おうとするのかよ」
「早くなかったからね」
「やれやれ…なんて奴だ」
そこから暫しの沈黙。互いに煎餅を咀嚼する音だけが響く。
「…そういえば、どうだい最近、学校は」
「子供との絡み方のわからない父親かお前は」
「ふふっ、突っ込んだ」
「次から無言で凝視してやろうか?」
「興奮するじゃないか」
「………」
「あぁっ……♪」
「うわぁ…」
「冗談だよ」
「分かってんよ」
コイツの行動は傍からみたらただの変態であることが多い。勝手知ったる俺相手だからこそコイツの真価は発揮される。厳密には俺限定では無いが。
「で、どうなんだい?」
「どうって…普通」
「友達はできたかい?」
「……」
「できてないんだね…」
「……デキタヨ」
「どうせ発端は君じゃないだろう?」
「……」
図星だよ。悪いか。
「……うん。まぁ、元気だせよ。ボクがいるじゃないか」
「そうやって慰められると悲しみが加速する…」
「君をこうやって追い込めばいずれボクに依存するように」
「空恐ろしい事いうなと」
「まぁボクは変態みたいなモノだからね」
「みたいな、じゃなくてそのものだろ?」
「ふふっ、違いない」
自覚はあったのか。それにしても、よく笑う奴だ。
「そんな変態とこんな風に談笑してる君も充分に変態だね」
「ははっ、かもな」
「……」
「……」
「……煎餅、なくなったね」
「出さないぞ?」
「もとより期待してないよ」
「知ってる」
何年来の付き合いだと思ってんだ。
「暇だね」
「風呂沸くまでなんかするか?」
「ツイスターゲーム」
「うちにないしあってもやらねぇよ。てかお前もやらないだろ」
「出てきた瞬間引くね」
「じゃあ言うな」
「…つまらないな」
「落ち着けよ。久しぶりにス〇ブラでもやるか?」
「あっ、良いね。フルボッコにしてあげるよ?」
「お前の場合 有言実行だから困るんだよなぁ…」
「ふふっ…♪」
結局、俺達は“風呂が沸くまで”と言いながら、俺の家族が帰ってくるまでゲームにのめり込んだ。
本編にも登場するでしょうか?