「理の儀式」後編
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最後に見たあのエルーの目はどういうことだったのだろうか。
まるで、私がエルーを置いて行くのはあり得ない、というもののようにも見えた。
しかし、私は天涯孤独の十六の女。エルーはアカツギ村の村長の一人息子。
幼馴染みと言っても、今ではほとんど口を聞くこともなく、目があえば逸らされることが大半だった。
なのに、どうして……?
思考の渦にのみ込まれそうになっていた私のだったが、蛇が二又の細い舌で腕を舐めていることに気付き、意識を現実へと戻した。
舐められている腕へと視線を向けると、あの白い、小さい蛇が舐めていたわけではないことを知る。
白い、小さい蛇の口の中から(・・・・・)頭を出している蛇が舐めていたことがわかった。
その蛇は、エメラルドのような綺麗な緑色をしていた。
私が見ていると、やっと気付いたか、と言わんばかりに、つい、と頭をこちらへ向けた。
それから、段々と緑色の蛇は白い蛇の中から出てきた。
どう考えても、緑色の蛇の方が大きく、どうやって入っていたのだと私はただただ不思議に思いながら、見つめていた。
でも、どこかでわかった。
白い蛇が私の片割れ(パートナー)なのではなく、こちらの緑の蛇こそが私の片割れ(パートナー)なのだということが。
緑の蛇は、全身が出ると、地面にぼとりと落ちた。そして、私の目の前で、どんどんと大きくなっていき、最後には、目測三・三メートルくらいの全長の蛇になった。
しかし、頭がある部分だけを持ち上げているので、頭の高さは二メートルくらいの位置にあった。
私はここで、衛兵も役人も、おじさんもいない場所にいることを理解した。
瞬間移動の一種だろうか?
また考え込みそうになる私の全身を、蛇はその眼で見た。
そして、何かに納得したように目を細めた。
「娘よ」
「はい」
「汝の名はなんと申すか」
「カノと申します」
「ふむ…架乃か……。 あやつらも良い名を授けたものだ」
私は今平然と話しているが、実際はアビスは人間と話すことは出来ない。
蛇が話しているのは信じられない事態なのだ。
だが、私は何故か当然だと思う気持ちがあった。
この蛇はなんでも出来る。そんな風に思わせる何かを発しているとしか思えない佇まいだった。
私は圧倒される他なかった。
「あの……もしかして、両親のことを知っているのでしょうか?」
「ふむ、汝は知らぬのか?」
「母のことのみ存じております」
「……ならば、まだ知らぬ方がよかろうて。
いずは知るときが来ようぞ」
「……はい」
「そう落ち込む必要もなかろうて。
そうじゃ、我を呼ぶ名をくれんかの?」
「呼ぶ名……ですか?」
「左様。 我は汝を架乃と呼ぶ。汝は我をなんと呼ぶか?」
そう緑の蛇が言うと、視界の端で、白い蛇が、緑の蛇に対して全身で抗議をするように体を揺らしている。
白い蛇は小さいので、緑の蛇はそれを一瞥してから、我関せず、という態度をとっていた。
私はというと、悩む必要はなかった。
私の中で、なんと呼ぶかはもう決まっていたのだ。
「蛇神様、と。 そう呼んでもいいですか?」
「蛇神様…名は体を表すというが、二つの意味で当てはまるとはの。
まあよい。 これから頼むぞよ、架乃」
「よろしくお願いします、蛇神様!」
こうして私は、蛇神様と一緒に人生を歩み始めるのであった。
という終わり。
ここで一応完結にしときます。
細々と書きたいところを書いていきたいと思います。
次は小説書きながら思いついた設定含む登場人物紹介です。




