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愛しの蛇神様  作者: 香哉
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「理の儀式」前編

突発的作品。感想・ご意見などお待ちしております。

この世界、アビス・ワールドでは、人々が、アビスと呼ばれるものとともに、生活をしている。

アビスは人間達の生活を助けてくれる。

また、それだけでなく、「理の儀式」という古くから伝わる召喚の方法によって、アビスと人は生涯を共に歩む片割れ(パートナー)を手に入れるのだ。

その召喚の方法は、人間がアビスを呼びだすための召喚紋に、自分の血を垂らせば完了だ。

「我の喚ぶ声に応えよアビス!」や、「アビスよ、貴方の力を、私にお貸しください……!」などと言う人もいるが、別にそんなことを言っても言わなくても、なんら関係はない。

ただの本人の考え方の問題だ。


ここで、アビスについて説明したいと思う。

アビスは大別すると、三つの種族がいる。

地を這うもの(アンダーグラウンド)。この種族は、地面を歩くことなどにより行動する、犬や猫、もぐらといったもののことである。

次に、空を駆けるもの(スカイハイ)。空に舞い、飛行する事が出来る、鷹、鷲、鳶などのことをいう。

そして、最後に海を揺蕩うもの(ディープシー)。海を自由に泳ぐことが出来る、イルカ、クジラ、魚などのことを指す。

アビス達は、自分の体の大きさを自由にコントロール出来る。

自分の力同様に、自分の身体もまた制御下にあるのだ。

虫などは、遙か昔から、アビスのどれに入るかが議論されてきたが、「理の儀式」で未だかつて虫は召喚されないため、アビスには入らないという結論で落ち着いている。


そんな世界に住む私の名前は、架乃カノという。

私にもとても大切な片割れ(パートナー)がいる。

愛しくて、恋しくて、狂おしい、そんなとても大切な片割れだ。

しかし、片割れ(パートナー)の話をするよりも先に、より詳しくアビスについて説明しよう。


さきほどの説明の際、地を這うもの(アンダーグラウンド)については「~出来る」、とは表現しなかった。

それは、この三つの種族のうち、地を這うもの(アンダーグラウンド)は、最も馬鹿にされているからだ。

馬鹿にしているのは、人間だけではなく、空を駆けるもの(スカイハイ)、海を揺蕩うもの(ディープシー)のもの達もだ。

何故かというと、空を駆けるもの(スカイハイ)は人や荷物を抱えて飛ぶことにより、長距離移動・輸送を可能にするなどが出来る。

海を揺蕩うもの(ディープシー)も同様の理由で役に立っている。

しかし、地を這うもの(アンダーグラウンド)の犬や猫などは、人間よりもはるかに速いスピードで動くが、空を駆けるもの(スカイハイ)、海を揺蕩うもの(ディープシー)に負ける。

その上、アビス・ワールドの国々はほとんどが地続きではない。

これも空を駆けるもの(スカイハイ)、海を揺蕩うもの(ディープシー)と思われることの要因の一つだ。

だが、「犬の足も借りたい」ということわざのように、空を駆けるもの(スカイハイ)、海を揺蕩うもの(ディープシー)が居ないときに、人間のみで物事をするよりはましだ。

ちなみに「犬の足も借りたい」の意味は、困っているときは、地を這うもの(アンダーグラウンド)でもいいから助けて欲しい状態にあるということだ。

モグラなどは、地面を掘るという、他の種族には出来ないことをするので、重宝される。

だから、これらのものは多少馬鹿にされることはあっても、侮蔑の目で見られたり、誹謗中傷の対象になったり、ということはない。


……では、何がその対象になるのか?

それは、種族名そのもの。すなわち、地を這って移動する蛇である。

蛇という単語そのものが愚鈍、愚かといったものの意味合いで使われることもあるほどに嫌われている。

蛇は何も出来ない、蛇こそこの世界で最も必要とされない。ということを声高に叫ぶものは少なくない。

しかし、実際に蛇の姿を見たというものは少ない。

蛇は昔からの迫害により、野生はもはや存在しない。「理の儀式」でもあまり喚ばれることはない。

喚ばれたとしても、片割れ(パートナー)と共に迫害され、いつの間にか姿を消す。

そのため、蛇は伝説のようなものなのだ。勿論、悪い意味で。


「理の儀式」をするために必要な召喚紋。召喚紋が書かれた書物を見ながら書くことによって、自分の好きな場所で召喚を行うという方法もあるが、多くの者は面倒なため、そんなことはしない。

それではどうするのかというと、街の召喚紋を使うのだ。

召喚紋は街には必ず一つ用意されており、それは何度使用しても消えることはない。特殊な魔法具が使われているそうだ。

それを使えば、わざわざ書かなくても、「理の儀式」が出来る。

かくいう私も、例に漏れず、召喚紋をいちいち書くなんて面倒くさかった。

十六の齢になると、この世界では大人へと仲間入りを許される。各村は一年毎に馬や犬などに台車を引かせ、十六になった子を連れて近くの街へと向かう。

大人になったので、「理の儀式」をすることを許されるのだ。

私もその中の一人として、街へと行った。

そして、私は「理の儀式」によって、愛しの片割れ(パートナー)と出会ったのだ。


召喚紋に血を垂らすと、白い煙がモクモクと召喚紋から出てきた。

その霧が晴れると、縄のようでありながら、自分の意思を持っているように…いや、実際に自分の意思を持って、頭と思われる場所を高く上げ、そこに現れた。

ちょこんと存在する様はなんとも私の目をひいた。

それは雪のように白く、とても小さく、私の膝くらいの高さしかない。……いや、地面に置いている頭以外の場所を含めればもっと高くなるかもしれない。

見つめていると、高く上げた頭部分にある、小さな円らな目でこちらを見つめていた。

なんだか分からないが、可愛いじゃないか。

しゃがみこんでから、自分の手を伸ばし、近所の猫にしてあげるように、首を掻いてあげる。

それは嬉しそうに私の手に擦り寄ってきた。


一人と一匹が、「理の儀式」によって選ばれたものどうしの和やかな雰囲気は、一人の者によって壊された。



「そ、それは蛇ではないか!」



そうか、この子は蛇なのか。召喚紋の管理をしている役人が恐れを含んだ目でこちらを見るのを見つめ返しながら、一人思う。

役人は私達よりも博学だから、蛇の姿も知っていたのだろう。

だが、この子が蛇だからといって、それがどうしたというのだ。

この子は私の片割れ(パートナー)だ。忌避の念を抱く筈も無い。


しかし、その場でそんなことを思ったのは私だけのようだった。

一緒に村から街まできた知り合いの子達も、ここまで連れてきてくれたおじさんも、役人の人も、まるで親の仇でも見るようにこちらを見ていた。

私を見る視線もあったが、多くは蛇に向かっている。私は蛇の首の下にあった手を、蛇の目前に真っ直ぐに伸ばした。

私の意を見事に読み取った蛇はするすると腕に巻き付いた。



「ひっ」


「カノ! そんなの捨ててこっちにおいでよ!」



私は、私の片割れ(パートナー)に怯えたり、そんなのと呼ぶ知り合いの元には行かなかった。

おじさんはそんな様子を見て、蛇に向けていた視線を私に向けた。



「やはり、うさぎの子はうさぎだな! お前の母親も、地を這うもの(アンダーグラウンド)の立場の向上なんて、意味のわからねぇことを言ってたな!

そして、娘のお前はあの、伝説の蛇を召喚した。とんでもねぇこった!

お役人様! アイツはきっと地人なんです! どうぞ地人狩りをしてくださいませ!!」


「どうやら、そうした方が良いようだな。

衛兵! 衛兵はおらぬか! 地人が出たぞ!」



地人とは異端者のことであり、地人狩りは異端者狩りのことである。

このままでは、私は殺されてしまうだろう。しかし、私にはどうしようもなかった。

父は私が自我を持ち始める前には既におらず、母は私を大切にしてくれたが、このような時に対する身を守る術は教えてくれなかった。

母自体、地人狩りで死んでしまったそうなので、私に教えることは無理なものだ。

私も母と同じように、地人狩りで死ぬのだろうか。

私は自分が喚んでしまった事により、こんな状況の真っ只中に居させることになった蛇を見つめた。



「ごめんね。だけど、今ならまだ間に合う筈だよ。君を喚んだ召喚紋は近くにある。

今ならまだ還れる。お還り」



蛇はただ私を見つめて頭を傾げただけだった。

そうこうしているうちに、役人が呼んだ衛兵が私の周りを取り囲みだした。

彼らと私の距離は二メートルほどしかない。



「アキツギ村のカノ! お前は地人である! 皆の安全を保証するためにも、お前をここで捕らえる!

衛兵、かかれ!!」



役人の言葉と共に、周りを取り囲んでいた衛兵が私に飛びかかろうとするが、それよりも早く、腕に巻き付いた蛇が口を開け、その中から・・・・・・が出てくると、辺りにはまばゆい光が放たれた。

光が現れたと共に、私の身体をどこかへと引っ張っていく力が出現した。

その力により、私がどこかへ行く前に、最後に私に見えたのは、悲しそうな、置いていかれた子供のような目をした幼馴染みのエルーだった。

主人公と蛇のイチャラブを書きたかっただけだった。そうだったはずなのに、説明だけで終わった。

……こんなの絶対おかしいよ!

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