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苦しみの中模索して辿り着いたものが…

しばらく軽い心神喪失状態で、昭夫は入院し、その後、通院することになった。

桂子は入院中、洗濯物を取りに来ては、また仕事の愚痴をこぼす。人様が見たら呆れ返るだろうこんな日常にも、もう慣れていた。桂子の差し入れはいつも同じ、昭夫の実家から送られてきた柿や梨を剥いたタッパーのみだ。


通院しながら、昭夫は、派遣で働く桂子のために、料理を始めた。やってみたらこれが案外おもしろくてハマってしまう。最初は食器に凝りだした。とはいえ贅沢はできないので、百均やニトリのお世話になる。キッチン道具も探し回り、ありとあらゆる物を買い集めた。鍋にも凝り、手入れ方法までよく調べた。


作る物こそパターン化していたが、カレー、スパゲティナポリタン、グラタン、卯の花、カボチャの煮付け、麻婆豆腐、大根と豚肉の甘辛炒め煮、魚の煮付け、もやしのナムル、等々、凝り出したら徹底的に手を抜かない昭夫は、とうとう鍋、フライパンの表面温度を測る温度計まで買った。


最初は、昭夫の作るおいしい料理をありがたがっていた桂子も、昭夫が温度計を買ったところで、言った。「なんで温度計まで?今まで黙っていたけど、2人の食事になんでそんなにお皿が要るの?それも、飽きたら捨てて買い替えるなんて、もったいないじゃない。」昭夫は言い返した。「食器を買うって、百均だよ。いくらでもない。」



桂子はなおも不満をぶつけてくる。また、いつものが始まった。やれやれ、うんざりだと耳を塞ぎたくなる気持ちでいるところに、桂子が自分の傷口に塩を塗るような言葉をふと吐いた。

「だいたい、料理してるくらいが何?私にだけ働かせて。どうして自分は仕事復帰しないの?」


仕事の打診はいくつかあったが、みな断っていた。今は、仕事ができる精神状態ではない。


桂子は、昭夫さんが仕事しないなら、私もしない、私も仕事辞める、だって不公平じゃない、とまで言った。


桂子が仕事を辞めたら、桂子の僅かな収入でも断たれたら、経済的にちょっと心配だ。


昭夫は、いつものように、なんとか桂子をなだめすかして、一次的にこの難局を乗り越えた。




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