最適運用された未来。俺を捨てたことを、一生あちら側で後悔してください【完結】
査問会から一年。
かつて「死の地」と呼ばれた辺境グラズヘイムは、今や世界中の商人や冒険者が憧れる「地上の楽園」と化していた。
アルトが設計した魔力循環路は、街の隅々にまで行き渡り、噴水からは魔力が混じった水が湧き、街灯は一晩中、住民の心を癒やす優しい光を放っている。
「アルト様、本日の『最適化』スケジュールです」
執務室に入ってきたのは、白いドレスを纏ったセレスだ。
その胸元には、あの日アルトから贈られたプラチナのブローチ――『聖母の瞳』が、持ち主の幸福を祝福するように青く澄んだ光を放っている。
「ありがとう、セレス。……今日はバルガスさんの工房に行く予定だったかな?」
「はい。バルガスさんが『新しい神鉄の配合を思いついたから、アルト様の目で見極めてほしい』と、朝から騒いでおりました」
アルトは窓の外を眺めた。
そこには、かつて「無能」や「ゴミ」と捨てられた人々が、それぞれの才能をアルトに【最適運用】され、誇りを持って笑い合う景色があった。
「……アルト様、何を笑っていらっしゃるのですか?」
「いや。……あの時、すべてを捨てられて、ここに来て本当に良かったと思ってね」
もし、あのまま公爵家で「都合の良い道具」として使い潰されていたら、この温かな景色に出会うことはなかっただろう。
その時、街の広場で大きな歓声が上がった。
アルトが領地の中心に植えた、かつては「枯れ木」だった世界樹の苗木が、空を突くほどの大樹へと急成長を遂げ、黄金の葉を降らせ始めたのだ。
それは、この地が完全に「神域」へと進化した証だった。
「アルト様! 行きましょう。皆が、あなたの言葉を待っています」
セレスが差し出した手を、アルトはしっかりと握り返す。
「ああ。……行こう」
同じ頃。
王都の北、過酷な強制労働施設で土を運ぶ一団があった。
フェルディナンド元公爵、ライオネル、そしてエレノア。
「……あ、アルト様……」
エレノアが力なく見上げた空の向こう。
遥か彼方の辺境から、黄金の光が空を染めているのが見えた。
彼らにはもう、一生届かない光。
自分たちが踏みにじり、捨て去った「ゴミ」が、今や世界の中心で輝いている。
その事実こそが、彼らに与えられた、終わることのない刑罰だった。
アルトは、黄金の葉が舞い散るテラスに出て、集まった領民たちの前に立った。
隣には、自分を信じ抜いてくれた戦女神。
アルトの視界には、これから先、この国がどう成長し、どれほどの人を幸せにするかという「未来の最適運用」が、どこまでも明るい回路として映し出されていた。
「俺たちの旅は、まだ始まったばかりだ」
空はどこまでも青く、アルトとセレスの歩む道には、二度と闇が差すことはなかった。
【――完――】
最後までお読みいただき、本当にありがとうございました!
無能と蔑まれたアルトが、最後には世界を最適化し、自分自身の幸せをもぎ取るハッピーエンド。
一方で、全てを失い黄金の空を眺めるだけの元家族たち。
これにて『最適運用』の物語は完結です。
アルトとセレスの未来に、幸あれ!




