査問会の断罪。今さら戻れと言われても「遅い」ですよ?
王都、大広間。
そこには王国の重鎮たちが並び、中心にはボロボロになったフェルディナンド公爵と、青ざめたエレノア、ライオネルが立たされていた。
「……フェルディナンド公爵。説明せよ。なぜ我が国の守護結界の要である君たちの領地が、一夜にして死地と化したのだ」
国王の冷徹な問いに、公爵は震えながら答える。
「そ、それは……何者かの呪いかと。あるいは、不吉な魔力を持っていた長男アルトが、去り際に何か細工を……」
その時。
広間の扉が、音を立てて開いた。
「呪い? 心外ですね、父上」
現れたのは、かつての「ゴミ」の面影など微塵もない、王者の風格を纏ったアルト。
そしてその背後には、威圧感を放つ銀髪の戦女神・セレスが控えていた。
「ア、アルト……!? なぜ貴様がここに!」
「無能のくせに、神聖な場を汚すな!」
ライオネルとエレノアが叫ぶ。
だが、国王は彼らを一喝した。
「黙れ! 彼は今や、『グラズヘイム』を世界最高の聖域へと変貌させた、新たな辺境伯、アルト殿だぞ」
広間にどよめきが走る。アルトは淡々と、一枚の報告書を差し出した。
「父上。あなたが『無能』と呼んで切り捨てた私のスキル……【最適運用】。あれは、対象が死なないよう絶え間なく魔力を循環させ、不純物を取り除き続ける力でした」
アルトがパチンと指を鳴らす。
すると、公爵たちが身に着けていた高価な魔導具が、一斉にドロドロの鉄くずに変わった。
「私が去ったことで、『管理』は終わった。……魔力炉の暴走も、魔導具の自壊も、すべてはあなたたちが私の手を離し、傲慢さでシステムを壊した結果です。これを『因果応報』と呼びます」
「ま、待って、アルト様!」
エレノアが縋り付いた声を上げる。
「私が悪かったですわ! あのブローチも、本当は大切に……! 今さらですが、あれを返していただきたいの! そうすればきっと、私たちの関係も……!」
アルトは、懐からかつて踏みにじられた、今は至高の輝きを放つ『聖母の瞳』を取り出した。
エレノアが「ああ……!」と物欲しそうに手を伸ばす。
だが、アルトはその手を冷たくかわした。
「……エレノア。あなたはこれを『ゴミ』と言って踏みつけた。だけど、今の俺には見えるんだ。このブローチが、どれほど君の側にいたくないと拒絶しているかがね」
「そ、そんな……」
「これはもう、君が触れていいものじゃない。……セレス、これを持っていてくれ。君にこそ、この輝きは相応しい」
アルトがブローチをセレスの胸元に贈ると、セレスは顔を輝かせ、誇らしげに胸を張った。
「はい、アルト様! 私の命に代えても、この『最適』な輝きを守り抜きます!」
自分たちが捨てた「ガラクタ」が、他人の手で「神の至宝」として愛でられている。
その光景こそが、エレノアたちにとって何よりの毒となった。
お読みいただきありがとうございます!
「呪い」ではなく、ただアルトが管理をやめただけの「因果応報」。
かつてゴミと捨てたブローチが、セレスの胸で至高の輝きを放つ光景は、エレノアたちにとって何よりの毒になったことでしょう。 次回、最終回。どうぞ、お楽しみに!




