届けられた「聖剣」の最適運用。一方で、最新鋭の鎧を爆発させる元婚約者
グラズヘイムに、一人の老人が辿り着いた。かつて王都で「伝説の鍛冶師」と呼ばれながらも、目が衰えたという理由でギルドを追放されたバルガスだ。
「……ここが、あの公爵家の『無能』様が治める地か。フン、死に場所には丁度いい」
彼が背負っているのは、刃こぼれし、中身の魔力が枯渇した「折れた聖剣」。誰もが「修復不可能のゴミ」と投げ出した一振りだ。
だが、黄金都市の入り口で彼を待っていたアルトは、その剣を一瞥して微笑んだ。
「バルガスさん。その剣、死んでませんよ。ただ、『眠り方』を間違えているだけです」
「……あ? 何を言って――」
アルトが折れた剣身の断面にそっと指を触れる。
【対象:折れた聖剣『エクスカリバー・レプリカ』】
【状態:過剰な自己修復による回路の目詰まり、および魔力疲労】
【最適運用:不純物(これまでの修復跡)を全排除し、芯材の『神鉄』を再配列せよ】
アルトの手から放たれた光が、剣を包み込む。
次の瞬間、バルガスの手の中で剣が脈動した。折れていたはずの刃が、周囲の大気から魔力を吸い込み、光の刃として「進化」を遂げたのだ。
「な、なんだこれは……!? 以前よりも鋭い。いや、これはもう聖剣を超えて……『神剣』の域だぞ!」
「バルガスさん、あなたの腕も『最適化』しておきました。衰えたのは目じゃなく、魔力のピントがズレていただけですから。……さあ、俺たちの街の武器庫を任せてもいいですか?」
老鍛冶師は、震える手で自分の視界がかつてないほど鮮明になっていることに気づき、その場に泣き崩れた。
アルトの元には、こうして世界中から「見捨てられた才能」が集まり始めていた。
その頃。
アルトを追放した元婚約者・エレノアの通う魔導学院では、激震が走っていた。
「……報告します。本日の実戦演習、参加した騎士団全員の『魔導鎧』が、起動直後に爆発・破損しました」
「な、なんですって!? あれは我が家が巨額の資金を投じて用意した最新鋭の……!」
エレノアが叫ぶ。
教官が冷ややかに告げた。
「専門家の鑑定によれば、これまでの『完璧な整備』が嘘のように、内部の魔力回路がデタラメに絡まっていたそうです。……エレノア様、失礼ですが、以前あなたの屋敷で整備を担当していたのは、どなたですの?」
エレノアの顔から血の気が引いていく。
彼女の脳裏に、かつて自分が「ゴミ」と罵り、ブローチを踏みつけたアルトの姿が浮かぶ。
(まさか……あの無能が、これらすべてを一人で抑えていたというの……!?)
同時刻、フェルディナンド領。
アルトという「最適化の重石」を失った領地では、大地の魔力が暴走し、作物は枯れ、かつての「黄金色の田園」は見る影もなくなっていた。
「父上! 領民たちが暴動を起こしています! 『アルト様を戻せ』と……!」
弟ライオネルが顔を真っ青にして報告すると、公爵は震える手で書類を握りしめた。
そこには、王家からの「査問会」への呼び出し状が届いていた。
国家の根幹を支える魔力バランスを崩壊させた罪。フェルディナンド家は、今や王国最大の「負債」になろうとしていた。
お読みいただきありがとうございます!
アルトは鍛冶師が持ち込んだ「聖剣」の真の力を引き出します。
一方で、最新鋭の鎧を爆発させてしまったエレノアたち。
どんなに良い装備も、扱う人間次第。
アルトの【最適運用】がいかに規格外か、お楽しみいただければ幸いです!




