夢なら良かった
日本の都会とも田舎とも言えないような場所でその子は生を受けた。その子供は、外に出ることが苦手で、ただ部屋に閉じこもり本を読むことが好きだった。そして、その生涯の殆どを夢の中で過ごしていた。そして、私によく夢の中でしたことを話してくれた。
遊園地に行った夢、プールに行った夢、遊んだ夢、ゲームをした夢、昼寝をした夢、ご飯を食べた夢、電車に乗った夢
そんな夢を私に嬉しげに語ってくれた。
その子供は、時が経つにつれ少年になっていった。
ただ、いつまでも眠たそうにしていた。特に病気などがあった訳じゃない。ただ眠いだけ。
小学校に入学し、少年にも友達ができたようだ。一方で、名前などは覚えることが出来ないようで、結局、卒業まで名前を覚えることはなかったようだ。
定期的に、少年の親は先生に呼ばれ、相談や特別学級と言ったものに連れていかれていた。
少年は私に楽しそうにそこでの出来事を話してくれた。少年は興味があることは覚えられるし、とことんやるタイプの様だった。特に珍しいものでは無い。ただちょっとその傾向が激しい子供だった。学力が足りていない訳でもない。
私は少年に私の名前を尋ねたが、少年は困った顔をして泣き出してしまった。ちょっとだけ悲しい気もする。
こんなこと言ってしまってはダメだと思うが、子供は可愛いものだ。いつまでも子供のままでいてくれたらいいのに
少年は中学生になった。
中学生になった少年は、私の背を抜かしてしまった。子供の成長は目を見張るものがある。気づいたら見上げてそうだ。
ただ、彼の目はどこか虚ろで、先生に怒られたと泣いては、私の元に来た。中身はまだまだ幼いようだった。この頃だっただろうか、彼が死にたいと言い始めたのは。
忙しくてあまり眠れておらず、テストで上手くいかなかったことや、駅から落ちる夢を見たこと、人が死ぬ夢を見たと
少年は私に寄りかかり、教えてくれた。彼の顔は疲れ果てていた。いつまでも眠いのは変わらないようだった。少年は相変わらず可愛かった。
少年が2年生になった頃、私は仕事の都合で少年と暫く会えなくなってしまった。たまに少年とその親から連絡来て、受験合格や日常について聴いては、私は誇らしげな気分になった。
少年が高校生になった頃、私はまた少年が住む地域に戻ってきた。少年は私を忘れていた。仕方がない。元々、少年は物覚えがいい方じゃなかった。名前もそうだが、よく英単語が分からないと愚痴を零していたような気がする。
少年は私に、前のような話し方はしなくなった。
ただ、どこか別人のような感じがした。夢については話してくれなかった。
この頃だっただろうか、どこか気持ち悪さを感じ始めたのは、まるで別の人を見ている気分だった。
私は少年とそれから1年間様々なことを話していた。
...彼は精神を病んでいた。
親との関係があまりよろしくなかったようだ。
よくあることではあるが、もう少し前に手を打てなかったものかと思うことは多かった。
リスカ等はしていなかったが、幻覚や妄想などが絶えないようだった。
時々話の時系列がぐちゃぐちゃになり、日本語ではない何かを話していた。私が知らない親や兄弟、友や旅行などの出来事...まるで夢の中の話だ
この時には、手遅れだったのかもしれない
少年が頼ったのは、その時いなかった私ではなく、親でもなく、友でもなく、幻覚と夢だった。
彼はいつまでも寝ていた。
精神病院に行ってもらって専門家に見させたことはあった。
私の前でだけ、見せるあれは...なんだろうか。
一種の安心感故なのかもしれない。
少年は私が知っている少年ではなかった。
私は仕事と家族の都合で、少年に会うことはできなくなってしまった。他の子も見なければならない。私が少年に出来ることは、祈ることだけだった。
1割ぐらいフィクション




