「よっしゃ、もっと派手にいこう!」
夕刻。
服部半蔵宅の大広間には十二人の美少女たちが集まっていた。
お萌とルエルとIKB10の十二人だ。
お萌との話を終えたあと、おれは団子屋にルエルたちを待たせていることを告げた。
「では、使いの者を迎えに行かせましょう」
「え、いいの? 大人数だよ」
「構いません。お萌としても側室たちがどのような者であるかを確かめておかねばなりませんから」
「うん、だから側室じゃないからね」
ということで、みんなが集まった。
その全員がおれを見ている。美少女の二十四の瞳だ。
あ、クルスはアイパッチをしているから二十三の瞳か。
それはともかく。
おれはみんなに江戸城に乗り込むことを改めて告げた。
「四天王を救出して、家康が豊臣方の者であることを暴く。そうすれば徳川家はみんなに対して恩義を感じるから、その後も面倒を見てもらえることになる」
徳川家のためではなく、自分たちのために戦う。
計算高いと言われるかも知れないが、このミッションが成功したら、おれも安心して元の世界に戻れるというものだ。
「ということで、戦略会議を開きます」
広間には大きな卓があり、その上に江戸城の見取り図が広げられていた。
さすが伊賀の頭領の家、こういうものがちゃんとあるようだ。
その見取り図の一箇所を指してお萌が言った。
「四天王のみなさんは、この地下牢に閉じ込められています」
「なるほど」
とおれはその部分に目をやって「?」と首を傾げた。
「やたら広くないか、この地下牢」
江戸城の幅全体と同じくらいの広さがある。
いったい何人収容するつもりなんだ、と言いたくなるくらいだ。
「地下牢そのものは大きくはありません。一番奥にあるのですが、そこに至るまでが一仕事です。八幡の藪知らずのようになっています」
「ああ、迷路ね」
万一、牢を破られた時の対応策だろう。迷路にしておけば、すぐには脱出できない。
それはつまり、救出する側にとっても厄介だということになる。
「だとしたら、ここはチューブの出番だな」
「はい」
チューブがうなずく。彼女の直観力があれば、迷路で悩むこともないはずだ。
「まずは、ここを目指す。で、四天王を牢から出したあとは、オクラのところに行く」
「ここにいるはずです」
お萌が指差したのは最上階の五階。
おれも過ごしたことのある本丸御殿だ。地下から五階まで一気に駈け上がる、と。
途中で誰かと行き会う可能性もある。刀で斬り合いというのもイヤだし、ここは大坂城の時と同じく……。
「クルスについてきてもらおうか」
「分かりました」
出会った相手を軒並みブルーに沈めてもらう。メンタル攻撃で道を切り開く。
「で、それ以前に、どうやって城の中に入るのかって話だけど……」
作戦は夜に決行することにしていたが、それでも門には見張りがいるだろうし。
「門番はあたしがぶっ飛ばすよー」
「うん、そうだね。頼もうか」
とおれはロップにうなずき、そこで気付く。
……これ、他のメンバーが活躍するシーンがないじゃん。
ロップが門番を制圧する。
そのあと、チューブとおれが地下牢に行って四天王を救い出し、本丸御殿に行く。
途中、邪魔する者がいたらクルスが退ける。ロップと合流してもいい。
で、オクラに会ってふん縛る。
流れとしては問題ないけど……。
「どうしました、殿?」
お萌がおれの気持ちを察したのか、そう言った。
他のみんなも「?」と見ている。
おれはみんなを見渡しながら思った。
これは徳川家に対するIKB10のプレゼンテーションのようなものだ。
一人ひとりの力をしっかりアピールして「この者たちは使える」と思わせなくてはならない。
そのためには、夜の闇にまぎれてこそこそするのはふさわしくない。
なのでおれは作戦を変えることにした。
「よっしゃ、もっと派手にいこう!」




