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「なんでございましょう、ご主人様!」

 どうやら彼女たちは、おれが自分の命と引き換えにルエルの身を守ろうとした態度を評価してくれたらしい。

 ルエルの望みを叶えてやろうとしたことも。

 元を辿れば、アベシやデフ、ギーたちに勝った時に命を奪おうとしなかったことで好感も持たれていたようだ。

 人生、なにが幸いするか分からない。


 彼女たちは「いざとなったら身を挺して自分たちを守ってくれるだけではなく、決して見捨てることはない」と、そんな風におれのことを思っているようだ。

 正直、そんなカッコイイもんじゃないけど、殺されないのはありがたい。

 いやしかし、それにしても、だ。

 徳川家康をクビになったと思ったら、今度は異国の美少女くノ一集団のご主人様とは、人生はなにが起きるか分からない。


 とは言え。

 おれはもうすぐ元の世界に戻る人間だし、ここで安易にご主人様(ま、リーダーということなんだろうけど)になるのを安請け合いするのは無責任な気がする。

 なので、事情を話して辞退することにした。

 美少女たちは落胆したが、こればかりは仕方がない。


「あのさ。君たちは自分の国に帰ろうって気はないの?」

 聞くと、彼女たちはそれぞれドイツとイギリスから来たらしい。

 もし帰る気があるなら、徳川家にお願いして便宜を図ってもらえるのでは……と思ったのだが、彼女たちはあっさり拒絶した。

「国に帰っても火あぶりにされるだけだから」

 やっぱりみんな魔女狩りの対象なのか。となると日本に残るしかないようだ。

「なあ、ルエル」

「なんでございましょう、ご主人様!」

「やめろよ、それ」

「ふん。さっき、すごくうれしそうだったぞ!」

「ウソつけ。それより、彼女たちを徳川家で雇ってもらえないかな?」

「うーん、どうだろうな。私自身もお払い箱みたいだから、なんとも言えないな!」

「そうか。うーむむ」

 とおれは腕組みをする。


 元の世界には戻りたいが、彼女たちを放り出したままというのもどうかと思う。

 なにかいい方法はないかな。もぐもぐ。

 こういう時は甘い物を食べて糖分を脳に行き渡らせる、と。

 幻だけど。もぐもぐ。

 おれが真剣に悩んでいる姿をくノ一たちは期待を込めた目で見ている。

 おれは言った。

「ごめん。いまはいいアイディアが浮かばない。とにかく、おれたちと行動を一緒に取ってくれるというんなら大歓迎だよ。まずは、いますべきことをする」

「いますべきこと?」

 アベシが首を傾げる。

「うん。このルエルのお姉ちゃんに会いに行く」

 考えてみれば、十人もの忍者が味方になったのだ。

 おまけに彼女たちはそれぞれに秘術も持っているときた。

 大坂城に忍び込むのも、それだけ容易になったということではないだろうか。

 ここは前向きに、そして楽観的に考えながらベストの選択をしていくことにしよう。


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