そこにいたのは、そう、女子高生だった。
山道を登りながらこう考えた。
ABCのアベシ、DEFのデフ、GHIのギーときたわけだから、次はJKLと考えるのが自然だろう。
JKL。
どう発音するんだろう? 母音が入っていないので読み方が不明だ。
ジェーケーエル? なんとなく座りが悪いな。
他になにか……と探っているうちに「これだ」としか思えない発音が頭に閃いた。
ジャッカル。
確か、狼に似た動物だった。その言葉には不吉な印象があった。
とは言え、ジャッカルと決まったわけではない。
他にも読み方があるかも知れない。
ジェーケーエル、ジェーケーエルとおれは口の中でつぶやきながら歩く。
そこでふと「エルという名前の女子高生みたいだな」と思いついてしまった。
すなわち、JKエル。
それがいけなかったようだ。
直後、目の隅に信じがたい存在が映った。
思わず足を止めて凝視する。ガン見をしてしまう。
「…………………」
ビックリし過ぎると頭の中が真っ白になるというが、この時がまさにそうだった。
「殿。いかがなされました?」
お萌が首を傾げる。おれは我に返り、目を強く閉じ、再び開ける。
幻覚、ではなかった。
そこにはさっきと同じく、ありえない存在がいた。
そこにいたのは。
木の幹に持たれてこちらを見ようともしない、他人への無関心まるだしのそいつは、白い襟付きのシャツに淡いクリーム色のベストを着ていた。
タータン柄の短めのスカート。
足もとは白のショートソックスに黒のローファー。
そして手にはスマートフォン。
あと、茶髪。
そこにいたのは、そう、女子高生だった。
つまりはJK。
「う〜おい!」とおれは素でツッコんだ。「なんなんだよ、それは!」
その言葉にJKはスマホから顔をあげ、眉をひそめた。
「きも」
「………」
思わず言葉を失うおれに「うざ。死ねば?」と吐き捨てるように言って、JKは歩きスマホで木立の向こうに消えた。
「殿。いまのは?」
「……いや、気にすることはないかな。先を急ごう」
「はい」
なんとか動揺を鎮め、再び山道を早足で進む。
ギーが呼んだ仲間たちに遭遇する前に少しでも遠くへ行っておきたい。
いや、すでに遭遇はしたわけだが、あのJKは出落ちキャラのようで、行く手を遮るほどではないようだ。
と、思っていたのだが、また出てきた!
さっきと同じように木の幹にもたれ、スマホを見ている。
なんなんだ、こいつは。なにがしたいんだ?
おれはJKに近づいて言った。
「どういうことだ。どうしてこの時代に女子高生がいるんだよ」
「きしょ。意味分かんない」
「説明しろよ。お前も召喚されたのか」
「ださ」
「うぐ」
「うざ。きっしょ。きも。死ねば」
「………」
よろけるおれをお萌がはっしと支えてくれた。
JKの罵倒は地味に傷つくんだよね。
「殿。この者は害をなすようには見えないので、ここは放っておかれては」
「そ、そうだね」
それ以上JKに関わることをやめてまた歩き出した。
で、また遭遇した。
どこにでもいる奴だな! それも毎回同じ格好をして! 没個性どもめ!




