18. 歪でまっすぐな思い
「あ…ま、真…?」
「…お母さん、どうして、私を、捨てたの」
真を見て近づこうとする裕を男が威嚇する。
「真、ちがうの」
「おい、近づくな、父親はどうした」
「まだ来てない」
「あなた、何をしてるの、危ない真似はやめて」
あなた、という些細な言葉にも現実を突きつけられている気がした。
「俺はこいつらと俺らとの縁をもう一度切るためにこんなことしてる」
「こいつらなんて言わないでよ、あなたにとっては何でもない人たちだけど、私にとっては大事な」
「まだ未練があったのか?お前と花音を傷つける人間を家族だと思っているのか?」
「違うの、そうじゃなくて」
何も解決せずに、男と母親の言い争いを聞くしかなった。
「この男が花音に近づいた理由がお前だとわかってうれしかったか?まだこの子は自分のことをお母さんだと思ってくれてて嬉しかった?」
「…」
「やっぱり、血の繋がりがそんなに大事か?」
「…えっ?」
匠が真を連れ去った時、子どもを抱えた匠と入れ違いで家に戻っていたことに気づいていた。
匠に相談した時、怒りにあふれた顔をしていたのは、今日の伏線となったのかと感じた。
ごみを捨てて家に帰り、真がいないことにすぐに気づいた。
匠が連れ去った子供が真ということも、すぐに理解できた。
少し戸惑ってしまった。このまま自分も匠について行けば私は自由になれる。
しかし、普通の母親のように、私は警察へと電話してしまった。
匠と生きる代わりに、子どもを失った。
すべてを惜しく思った結果、中途半端なものだけが残った。
きちんとした手順を踏んで、義明さんと別れるけじめを付けたかった。
正義感が邪魔をして、悪者になりきることはできなかった。
匠と、一人の女の子と過ごすことになった。
亡くなった匠のお姉さんの子どもらしい。
3人で過ごすうちに、本当の家族のように感じるようになった。
匠にプロポーズされ、2年後には戸籍的にも本当の家族になった。
花音は、私のことを本当のお母さんだと思っているだろう。
でも、私は、自分が産んだ子たちを忘れたことはない。
今どうしているのかな、無事に生きているのかな。
あの子たちは、私のことをお母さんだと思ってくれているのかな。
「元旦那と違って、俺はお前らのために何でもしてやれるのに!」
「無理だった」
「…何が?」
「私は、匠の事、友人としか思えない。私が本当に好きだったのは義明さん」
「何言ってんだよ…」
「お姉さんを亡くして、花音を一人で育てて、私のことも助けてくれて、本当に尊敬しているし、助けになりたいと思った。けどやっぱり違った」
「俺は、ずっとお前のことを想って」
「私の子に手を出す人間はどんな人でも許せない」
「なんだよ、俺は、お前が喜ぶと思ってやったのに」
男の体がだんだん震え始める。
「私は、私なりに家族と向き合おうと思ってたのに、その覚悟を無視したのはあなたよ」
「なんだよ!どうして俺の事を一番に考えてくれないんだよ!?」
「おい、もうやめろよ」
裕は苛立ってきた男を止めようとなだめようとするが、男は激しく暴れ出す。
「うるさい!」
ナイフを持っている腕を動かし、ナイフが真の頬をかすめる。
真はナイフに驚き、少しよろめいた。
「喜んでくれると思ってやってるのに、どうしてわかってくれないんだ!」
「やめろ!犯罪なんかで喜んでくれるわけないだろうが!」
真の表情を見て、裕が男に近づく。
「お前がいるせいで…!お前が産まれたせいだ!」
一気に男が走ってくる。
「危ない!」
裕は母親の前に立ちふさがった。
どんな人と付き合っても、「束縛が辛い」「私の家族を悪く言わないで」ばっかり。
彼女を傷つけるやつらに制裁を下しているだけなのに、どうして嫌がるの?
ある日、姉貴が遺体で実家に帰ってきた。
姉貴の苦しみに気づくことができたら。
旦那の家へと行き、胸ぐらをつかみ、姉貴の分も殴った。
すると、警察に連れていかれたのは俺だけだった。
でも、きっと姉貴は喜んでくれてるだろうな。
姉貴の子どもは俺が預かることになった。
なんとしてでも俺が幸せにしてやるから、安心して。




