15. もう子供じゃない
「…チッ、話が通じないと思ったら」
男はようやく通話先が父ではないことに気づき、電話を切った。
「まあいいや」
男は父に電話をかけなおした。
「…え」
「ちょっと待って、車停める」
「も、もう一回電話かけてみる」
真に電話をかけなおしたが、通話中のようで応答がなかった。
「でない、どうしよう、え」
「とりあえず一回福田さんに電話しようか」
「う、うん」
急いで福田さんに電話をかける。
『もしもし、どうした?』
「福田さん、助けて、真が、危ないかも」
『え?危ない?落ち着いて、何があったか教えてくれるか』
「福田さん、俺もいます。俺が説明しますね」
車を駐車場に停めた裕があおいの代わりに今の状況を説明した。
『わかった。裕とあおいはお父さんと真に電話をかけ続けてくれ。本当に危ないようであれば俺にまた連絡して。外に出る準備はしておくから』
「うん、ありがとう、じゃあまた」
電話を切り、2人で深呼吸をする。
「あれ、誰?」
「知らない、親父の声でもなかったし」
「でも、お父さんと裕くんの名前知ってるってことは、何かしら関係があるよね?」
「そうだな、何か事情があって真のスマホから連絡しようとしてたのか…?とりあえず、電話かけてみようか」
『もしもし』
「天野義明さんですか?」
『はい?…真?』
「真さんの電話借りてます、天野義明さんですか?」
『そうですけど、どなた?』
「…こいつは?本当にあんたのお父さん?」
声も画面の表示も父なので、一生懸命顔を縦に振る。
「ちょっとあなたにお会いしたいので指定した住所に来てもらってもいいですか」
『はい?あなたはどなたですか?』
「あなたの娘さんを人質に取っている者です。さっさと来て」
『…は?』
男は電話を途中で切り、マナーモードに切り替えた。
「お父さんと普段やり取りしてるアプリは?」
「えっと、LINEも、メールも知らなくて、電話しか」
「じゃあSMSか」
「くそ、親父も出ないか」
「真もやっぱりだめだ、どうしよう…」
「大丈夫、落ち着こう」
顔が真っ青になっているあおいの背中をさする。
「いっつも私たちに遠慮して1人になりたがるよね、真って」
「確かにね」
「3人でずっと一緒にいたいのに、なんで、真にばっかり迷惑かけちゃうんだろう、なんで真に嫌な思いさせちゃうんだろうな」
「…ちゃんと3人で話し合おうね、思ってることちゃんと伝えないと真はわかってくれないから」
「あなたと真は昔から鈍感だから」
「え、俺も?」
「もちろん」
「親父から電話かかってきた」
あおいと目を合わせ、少しうなづいた後にボタンを押す。
「もしもし」
『もしもし…』
「真から電話来た?」
『来たよ、人質に取っているとか何とか言われた。どういうことだ?』
「ああ、あおい、福田さんに電話して。親父、真が危ない目にあっている」
『はあ?何、もう少し説明してくれよ、どうして』
「ちょっと考えればわかるだろ!俺と親父のせいで真が傷つくなんて、母さんのことしかないだろ」
『…お前、俺と親父って言ったか?俺に隠れて動いていたのか?』
「そんなこと今はどうでも」
『お前がちょろちょろするせいで今こういう状況になってるんじゃないのか?お前の行動で幸せになる奴はいないっていい加減気づいたらどうだ』
「…」
『あのバカ女もそうだ、外の男を優先して犯罪して、そこから生まれたお前らは変なところに首突っ込んで勝手に後悔して』
「俺は後悔するような行動は1度もしたことない。母さんだってそうだ」
『お前、お前にあの女の何が分かるんだよ!』
「この前引っ越しを手伝った時、母さんの日記を見つけた。そこに全部書いてあった」
「もしもし、福田さん」
『はいはい』
「真、誘拐されたのかも、やっぱり危ない」
『分かった、1回俺んとこの署に寄ってから捜索始めるから、2人は手がかりがあれば俺に教えてくれ』
「うん、うん」
『大丈夫だからな、真はそういうとこ強いから』
「うん」




