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天国のリリー  作者: りん


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14/20

14. あなたのそばへ




「…え?娘って、その、親子ってこと?」

「何回も写真を見せてもらって、何回も確かめた。見れば見るほど、母さんにしか見えないんだよ」

「その、花音さんって何歳なの?」

「…確か、俺の…一個上」

「…え?」

「…」

全員が黙り込んだ。

裕の言葉が本当ならば、2人が生まれる前から裕の母は浮気をしていたことになる。

静寂を切り開いたのは福田だった。

「で、裕は今、自分の母親に会いたいと思ってる?」

「…正直分からなくなってるよ。母さんは、俺らよりも花音さんを選んだってことになってしまう気がして怖いんだ」

「真に言わないでって言ってたのはそういうことか。あの子には、今の話は衝撃が強いな」

「まだ、血がつながったと決まったわけじゃない。変な憶測をあいつには話さない」



「お疲れ様です」

「…あ、天野さん!」

帰宅しようと席を立つと、斎藤も勢いよく席を立った。

「駅までご一緒していいですか、話したいことが」

「ああ、いいですよ」


「…」

エレベーターの中からすでに2人きりなのに、斎藤はきょろきょろして口を開かない。

「えっと、話と言うのは」

思い切って真から話しかける。

「はい、すみません、言います」

と言いつつも、なかなか心の準備ができていないように見えた。

「天野さんが、最近ずっと元気がなさそうなのが気がかりで、でもこの前、僕の力じゃ天野さんを笑顔にできないってちょっと感じて」

「うん」

「今はまだ、天野さんの中で僕の存在が小さいのかなと思ってます。でも、この前から、それじゃいやだって強く思うようになって」

「うん」

「…僕、天野さんのことを笑顔にできるような人間になりたいです、天野さんが、好きなので」

「…え」

「すみません、天野さんの迷惑になりたくはないのですが、でも、自分の気持ちをちゃんと伝えたいと思ったので、伝えました。返事は全然今度でいいです。」

斎藤は足を止め、真の顔を見つめた。

斎藤の顔は真っ赤に染まっていた。

「じゃあ、僕は電車こっちなので、失礼します!」

「あ…うん」


電車に乗り、外を見つめる。

斎藤さんは、私のこと、ずっと待ってたのかな。

でも、ちゃんと私に気持ちを伝えてくれた。

私もあおいと裕と、ちゃんと話し合って、ちゃんと自分の気持ちを伝えたい。

それができたら、斎藤さんに、返事を伝えよう。


駅に着き、速足で家へと向かう。

明日、あおいに会いに行こう。



アパートの前に見知らぬ車が停まっていた。

特に何とも思わず横を通ろうとした。

運転席にいた男が、真の顔を見て車から出てきた。

顔を見てもピンとこない。

真の顔を見つめ、男が口を開く。

「やっと来た」

声を出す前に、腕をつかまれた。



車の中に引きずり込まれた。

恐怖のあまり声が出てこない。

「君、天野真?」

「あ…え」

「ねえ、聞いてるんだけど。ちょっとカバン見るね」

カバンの中から自分の名刺とスマホを取られる。

「…ん。君ばっかり誘拐するのも申し訳ないんだけど、あなたのお父さんとお兄さんが俺の家族に迷惑をかけているんすよ」

「…え」

「君のお父さんは俺の妻に暴力するし、お兄さんは俺の娘に詐欺を働き、もう限界なんだよ」

男はナイフを取り出す。

「今から脅させてもらう。動いたら殺すから」


男は車を運転し、見覚えのない道を迷わず進んでいった。

道の途中に車を停め、男が振り返る。

すると、男は持っているナイフで真のスマホをカンカンと叩いた。

「あなたのお父さんに電話してくれる?」



あおいは、1日ですぐに退院することができた。

裕に迎えに来てもらい、車の助手席に乗った。

「ありがとう」

「ううん、当然だから。…あのさ」

「ん?」

「今まで、ずっと俺の都合で、辛い思いさせてごめん。俺は、あおいに何か言う資格はないから、その子をどうするのか、俺と、別れるかどうか、あおいに従うよ。俺は、金なら絶対に払」

「別れない。あなたとこの子を育てる」

「…はい」

「…でも、プロポーズは、いつかして」

「…うん」

裕は前を向きながらしっかりとうなずいた。


「そうだ、真に電話してもいい?」

「いいよ」

あおいは、真に電話を掛けた。

発信ボタンを押すと同時に、真が電話に出た。

「スピーカーにするね。もしもし、真」

『…は?』



脅されながらスマホを必死に操作するが、手がぶるぶる震えて電話が掛けられない。

「もういいよ、俺がやるから貸せ」

男にスマホを奪われる。

「…えっと、天野義明だっけか」

男が私の代わりに父へ電話を掛けた、ように見えた。

男がスピーカーに切り替えると、すぐに声が聞こえる。

『もしもし、真』

父の声とは思えない、若い女性の声だった。

「…は?」

男は思わず首を傾げた。

『…え?あれ?…真の番号なんだけど、あれ』

スマホの画面を覗くと、あおいとの通話になっていた。

男が間違えたのか、操作中に電話がかかってきて、気づかずにボタンを押したのか?

「すみません、天野義明さんのお知り合いですか?天野裕さんでもいいですよ」

『…はい?』



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