表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
天国のリリー  作者: りん


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

13/20

13. 俺が正しいのならば




「もしもし」

『もしもし…あおい?』

「大事な話がある。本当は会って話したいけど電話でいい」

『あおい…いや、とりあえず聞く』

「…私、妊娠した。裕くんとの子」

『…本当?本当に?』

「本当だよ」

『…本当にごめん。あおいのこと後回しにして、ごめん』

「うん」

『わかった、もう全部説明する。全部話す』



「あおいっ!」

病室のドアを勢いよく開けた衝撃であおいの目が覚めた。

「…裕くん、久しぶり」

「…久しぶり」

久しぶりに見るあおいの顔は、少し瘦せていたが、いつも通りの笑顔だった。


「真は今日来てないの?」

あおいが病室を見回す。

「あなたがすやすや寝てるからさっきしびれ切らして帰ったんだよ」

「俺と入れ違いだったか」

福田さんが気まずそうにベッドの周りをうろうろする。

「で?俺は外に行ったほうがいい?」

「あおい、どっちから話そうか」

「裕くんからでいいよ」

「じゃあ福田さんも聞いてもらおうかな」

裕の言葉を聞き、福田はやっとおとなしく椅子に座った。

「…この話はすべてが片付くまで真には言わないでほしい」



親父は、昔から亭主関白な人だった。

自分が一番偉くないと気が済まない人で、気に食わなければ母さんに暴力をふるっていたらしい。

母さんの日記を見て知った。

でも、両親は親族や俺ら子供に「いつでも親父が正しい」ように振舞っていた。

ある日、母さんが真の誘拐未遂で親父と離婚した。

母さんがすべて悪いと思っていた。

実際犯人は母さんの知り合いだったし、ゴミ捨てから帰ってきた母さんの顔は何かおかしかった。

多分娘がどこかに連れていかれる瞬間を見て見ぬ振りしたんじゃないかなと思う。

その日を境に、俺が暴力を振るわれるようになった。

親戚の中で一番安定して稼いでいる親父に逆らえば、次は俺が追放されると思って抵抗できなかった。


俺は母さんに会いたかった。

でも、真が母さんの行方を探していることを知った親父から、真を母さんに近づけるなと忠告された。

母さんは親戚からの信用を失ったが、代わりに真が事実を話せば親父はすぐに縁を切られるだろうから。

その日から俺は真の監視役になった。

俺は真を監視しつつ、親父の目をかいくぐって1人で母さんの行方を探した。

親父に逆らえるくらいの証拠を探した。

ある日、たまたま仕事で知り合った女性、橋本花音さんの話を聞くうちに、母さんに関係のある人だとわかった。

俺は花音さんと関係を深めて、さらに真実に近づこうと思った。



「…で?橋本さんは裕くんのお母さんの何なの?」

「…それは…」

裕はなかなか言葉が出ずにいた。

「裕、別に無理して言わなくてもいいけど」

「いや、言うから。大丈夫」


「橋本花音さんは、母さんの娘である可能性が高い」




「少々お待ちください。資料を用意してあるので」

取引先の方のデスクで静かに待っていたところある写真に気が付いた。

「橋本さん、この方は、橋本さんのご家族…ですか?」

橋本さんのデスクに置いてある写真を指さした。

「そうです。父と母です」

見覚えのある男女だった。

女性は自分の母親そっくりで、男性は母親の友人、あの誘拐犯にそっくりだった。

「そうですか…」

吹き出す汗を必死に拭って平常心を保った。


2回目の取引。

「橋本さんは一人っ子なんですか?」

「そうです。天野さんはご兄弟いらしゃるんですか?」

「僕は、妹が一人います」

「あ、そうなんですかあ、妹さんがいるんですね、いいですね」

「橋本さんの家庭は、普通の、家庭なんですか?」

「…ええと、はい、普通?だと思いますよ。普通の3人家族です」

「…へえ」


連絡先を交換し、あおい以外の女性と初めて2人きりで食事をした。

「そういえば最近家族旅行行ったんですよ」

「へえ、写真とかないんですか?見たいです」

「いいですよ、これがお母さんとの写真で、これが家族3人での写真で…」

「…花音さんはお父さん似ですね」

「そうですね、よく言われます!」


あおいを不安にさせることよりも、自分と妹の幸せを選んでいた。

「花音さんって一人暮らしされているんですか?」

「いいえ、実家住みです。実家から通勤できる距離だったのでいいかなって思ったんです」

「いいなあ。俺は一人暮らしなんで、帰ったら家族とご飯がある暮らしが懐かしくて」

「帰ったら母がご飯を温めてくれるほっとする時間、最高ですよ~」

「俺もたまには実家帰ろうかなあ、親父が料理得意で、良く作ってくれたカレーチャーハンってのがあるんですけど、なかなか自分じゃ再現できないんですよね」

「え!私の母の得意料理もカレーチャーハンです!そんな偶然あるんですね!」

「え」

「今度母直伝の私のカレーチャーハンでも振舞いましょうか?なんてね、うふふ」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ