第42話 謎と噂 5
「……ふぅ」
「終わりましたか?」
「みょわぁっ!!?」
部屋を出ると、そこには別れたはずのカルロスが変な悲鳴を上げたノーマを笑っていた。
「ふふっ……驚かせてしまいましたね」
「で、殿下……あの、なぜ……ここに?」
「君を待っていたんです」
「わたしを……ですか?」
「ええ、君ともう少し話をしてみたくなったんです。ちょうどお茶の時間ですし、ご一緒にいかがですか?」
「えっ!?……えっと……」
カルロスの誘いを断ることが無礼に当たると考えると受けるしかない。しかし、リリアンがこの時間を待ち望んでいるのも理解しているため、ノーマは困り果てていた。
そのとき―――
「姉様ーーーっ!」
「リ、リリ様!?」
「なんでお兄様と一緒にいるの?!」
「たまたま鉢合わせて、成り行き……ですかね?」
「一緒にお茶しようと思ったのに、どこにもいないんだもん……」
「申し訳ございません……師匠に差し入れを届けたら、すぐ戻るつもりだったのですが……」
「リリ、あまり困らせてはいけないよ」
「お兄様……」
「そうだ、今日は一緒にお茶会をしよう。ちょうど、そういう話をしていたんだ」
「……お兄様も?」
「ええ……あなたも構いませんよね?」
「え、あ……はい……」
(肩身が狭いな……)
自分が場違いになる状況が予想できるが、ノーマに選択権はない。にこやかに話すカルロスだったが、リリアンの顔は険しかった。
「……やだ」
「?」
「今は……お兄様とお茶会したくない」
「リリ……どうしてだい?」
「だって……」
「?」
「とにかく……やだ」
ノーマはリリアンの発言にハラハラしていて気付かなかったが、リリアンはノーマを一瞥していた。
カルロスは少し寂しそうな表情を浮かべながら、返事をした。
「……では、またの機会にしようか」
「……ごめんなさい、お兄様」
「君も、無理を言って申し訳ありませんでした」
「い、いえいえ……あっ、よろしければこれをどうぞ」
「……これは?」
「えっと……わたしが作った料理です。お口に合うかわかりませんが、材料は厨房にあったものなので美味しいと思います」
「ありがとうございます。それでは、また……」
カルロスが立ち去り、道中で紙袋を開ける。
「これは……確か、コロッケでしたか。お茶と合わせるには少々重いですね……」
ノーマが焦って渡したのだろうということも見抜いた上で、カルロスは苦笑していた。
一方その頃―――
「えっ!?カルロス殿下のお昼にも、コロッケって出てたんですか!?」
「はい」
「どうしよう……後は非常食のクッキーくらいしかないですけど、こんなの渡せないですし……」
「いいんじゃないですか?こんなのでいちいち目くじら立てるような器の小さい方ではないでしょう」
ハーティスと話してる最中も、リリアンの表情は暗かった。そんな様子を察し、ノーマが声を掛けると、リリアンは恐る恐る答えた。
「……リリ様、どうされました?」
「……姉様。姉様は……お兄様と一緒がよかった?」
「……どういうことですか?」
「……」
リリアンは俯いて押し黙ってしまった。リリアンに代わり、ハーティスが口を挟んだ。
「王子の誘いを姫様が勝手に断ったことを気にしてるんですよ」
「そうでしたか……いえ、大丈夫ですよ」
「本当ですか~?イケメン王子とお近づきになるチャンスですよ?」
「なれたところで友人になることさえもおこがましい立場ですし……」
「ほうほう……立場さえあれば、お近づきになりたいと……」
「えっ? う……う~ん……?」
「悩んでますね?」
「いえ、立場があってもお近づきになるかと言われたら、それも違うような……」
「ふむ……では、王子のことはどう思っていますか?」
「どう、と言われても……わたしの村のことも知っているくらい博識で、わたしの話を興味深そうに聞いてくださる聞き上手な方……でしょうか?」
「……それだけですか?」
「えっ?ええっと……あっ、え、笑顔が素敵です!」
「そうですか……」
「えぅ……」
ノーマ自身も褒める部分が少し苦しい自覚はあったが、考え込むハーティスの様子が不安を掻き立てた。そんな中、リリアンがノーマの服の裾を引っ張りながら不安そうにしていた。
「姉様……」
「はい……?」
「……お茶会、行こ?」
「……そうですね。行きましょうか」
リリアンの表情が曇っているのが気になったが、一先ずいつもの庭園へ向かった。
お疲れ様でした。
話をどこで切るかで未だ迷いがちです。




