第40話 謎と噂 3
「……ノーマ!」
「? ……シルト、今は休憩中?」
「まぁな……それより、何を持ってるんだ?」
「わたしが作った料理だよ。師匠にも持って行こうと思って……」
「料理?なぁ、一個くれよ!」
「いいけど、時間帯的にお昼は食べたんじゃないの?」
「まだまだ入る。どれ……」
「あっ、勝手に……」
「まぁまぁ、味見ってことで……」
「もう陛下たちにも食べさせちゃったから意味ないんだけど……」
「……美味っ!これ、もっとくれよ!」
「聞いてないし……師匠とわたしの分もあるんだから手加減してよ?」
シルトとは度々に会うことがあり、噂などの雑談することがある。周りのほとんどが立場のある人間であるため委縮せざる負えないノーマにとって、唯一気兼ねなく話せるシルトとの時間はとても心地良かった。
「……やっぱり美味いな。最近とんでもない物ばっかりだったから余計に美味い」
「とんでもない物?」
「姫様の侍女いるだろ?あの人、差し入れとか言って姫様が作った料理を持ってくるんだよ」
「ハーティスさんか……そんなにひどいの?」
「……グチャグチャで殻の入ったオムレツみたいなもの、黒焦げなのに中は生の肉、野菜の甘味も消し飛ぶほど大量に塩が入ったスープ……」
「うわぁ……」
「最近は卵に殻が入らなくなったけど、それでも酷いものだ」
(一緒にプリン作ったとき、卵の割り方を教えたからかな……)
「……でも、なんで王族であるリリ様が料理を……?」
「さぁ?話によれば料理だけでなく、掃除や針仕事なんかも教育の一環でやっているらしい」
「そうなの?なんか意外だね。王族の人ってそういうことしないと思ってた」
「詳しいことはオレにもわからない。でも、姫様の性格上、陛下の指示でもなければそんなことしないと思う」
「そっか……」
ここで、ノーマはあることを思い出し、シルトに聞いてみた。
「そういえば、リリ様って王妃様と会ってないの?」
「王妃様はここ数年は公務でおられない……とされてるな」
「……なんか含みのある言い方だね?」
「いや……あくまで噂なんだけど……」
シルトは言いにくそうに聞いた噂を話す。王妃メル・バーコン。現在は公務でモッコクを離れている……とされているが、王国の資産を食い潰して男遊びをしているという噂が立っていた。それというのも、資金援助を要請する割に成果がなく、仮住まいの家に男を連れこんでいる姿を目撃した者がおり、そこから噂は広まったという。
「そんな……リリ様は寂しい思いをしてるのに……!」
「待て、あくまで噂って言ったろ?アクティブで豪快な人だが、そんなマネをする人じゃない。きっと理由があるんだ」
「……そう、なのかな?」
「ああ、きっとな」
ここで、ノーマはあることに気付く。こうして話している間にも、シルトはコロッケを食べ続けていたのだ。
「……って、食べすぎ!」
「おお、しゃべってるうちについつい……すまん」
「もぅ……」
「その……ほら、また作ればいいじゃないか」
「簡単に言わないでよ。厨房を借りるのだって簡単じゃないし、この食材だって使わせてもらってる物なんだから……」
「悪かったって……」
「もー……」
シルトは反省しつつも、あることをリクエストする。
「……ところで、これって肉で作れるか?」
「できると思うけど……なんで?」
「いや、もっと肉がほしくてさ」
「これだけ食べておいてよく言えるね……」
「だからだよ。じゃがいもだと軽くてパクパク食べれてしまう。肉だったら満足感が出て、こうはならないと思うんだ」
「これも結構なボリュームだと思うんだけど……」
「頼むよ。いつでもいいからさ」
「それはいいけど……わたしは基本的にリリ様に呼ばれなければ来れないし、シルトとこうして会うのだって、偶々タイミングが合ったときだけだから、いつ渡せるかわからないよ?」
「そうか……」
「……あっ、わたしが持って行こうか?いつも訓練場にいるんだっけ?」
「それはダメだ!」
「うぇっ!? や、やっぱり、部外者が立ち入っていい場所じゃない……よね……」
「そういうわけじゃないけど……ダメだ」
「? ……そうだ、他の騎士の人にお願いすればいいんだ。料理は冷めるかもしれないけど、それなら渡せるよ」
「……」
「えっ、なにその顔……」
「なんでもない。……そろそろ休憩も終わるから行くわ」
「そうなんだ。頑張ってね」
「……おう」
シルトを見送り、ノーマは再び歩き出す。曲がり角を曲がろうとしたところ、突然現れた人影にぶつかりそうになった。
お疲れ様でした。
伏線をいろいろ仕込みたい気持ちと、回収しきれなかったらどうしようという思いで板挟みにあっています。




