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第39話 謎と噂 2

 そんな話をしている間に城に到着する、待っていたリリアンがノーマに駆け寄り、抱き付いた。


「姉様ー♪」

「リリ様……お元気でしたか?」

「うん。あのねあのね、新しい絵本をもらったから一緒に呼んでほしいの」

「いいですよ。どこで読みましょうか」

「えっとね……おっきい木のところ」

「姫様。本日の予定の時刻は守っていただきますよ?」

「わかってる!……行こう、姉様」

「はい」


 こうして、中庭に生えている大きな木の下で絵本を読むことになった。木陰が日差しを遮り、草の香りと涼しい風が心を落ち着けてくれる。


「それじゃあ、読みましょうか」

「……えい!」

「あら?……ふふ、ここがいいんですか?」

「特等席ー♪」

「光栄です♪」


 ノーマの膝にリリアンを抱っこする形で本を読み進める。役どころで声色を変え、迫力のある場面では膝を動かして臨場感を演出すると、リリアンは終始楽しそうだった。


「――こうして、彼女の幸福はこれからも続くのでした。……おしまい」

「おもしろかった……姉様、読むの上手だね」

「ありがとうございます。次はどうしましょうか?」

「えーっと、次は……」

「お勉強ですよ」

「えっ、もうそんな時間なの?」


 近くで控えていたハーティスが呆れたように声を掛ける。


「そうです。さぁ、移動しますよ」

「む~……」

「……だから丸一日時間の取れるときに呼んだ方がいいって言ったじゃないですか。ノーマ様だってお忙しい中来てくださっているんですよ?」

「だって……だって……会いたかったんだもん……」

「ちゃんと予定をこなすことが約束だったはず……守ってもらいますよ」

「……」

「……なんだか、ハーティスさんがそういうこと言うの珍しいですね」

「わたしの給金に関わってくるので」

「いつも通りだった……なら、その間に厨房に行こうかな……」

「厨房?……そういえば、最近よく出入しているようですが……」

「料理長さんに手作りのソースの味を見てもらってるんです。もちろん、お邪魔にならないようにしていますけど……」

「そういえば……終わるのは、ちょうどお昼頃ですね……」

「そうなんですね」


 ここで、ハーティスはある名案を思い付く。


「姫様、お勉強を頑張ったらノーマ様がお昼を作ってくださるそうですよ?」

「……えっ!?」

「本当?姉様が作ってくれるの?」

「えぇっ!?……」

「ノーマ様の料理の腕はプリンで実証済み。きっと姫様の期待に応えてくれるでしょう」

「ちょ、ちょっと待ってください……そんな急に―――」

「……まさか、断ったりしませんよね?」

「うぐぅ……っ!」


 ほぼ強迫だったが、目を輝かせて喜ぶリリアンを裏切るようなマネはできなかった。


「……わ、わかり、ました……」

「……そうそう、わたしの分もお忘れなく」

「……ハーティスさんも食べたいんですか?」

「もちろんです。料理長と陛下には話を通しておくので、よろしくお願いします。……さぁ、姫様行きますよ」

「……わかった。姉様、頑張ってくるね」

「え、えぇ……頑張ってください……はぁ……」


 どうにも腑に落ちなかったが、ノーマは厨房へ向かった。


「料理長さん。お忙しい中、申し訳ございません」

「構いませんよ。……このソースですがピリッとした辛みが効いていて、いいと思います」

「本当ですか?」

「はい」

「……それにしても、ハーティスさんはどうしてあんなことを言ったんでしょう?わたしの料理よりも厨房の方の料理の方が美味しいのに……」

「ありがとうございます。……もしかしたら、食の好みの問題かもしれません。実際、以前頂いたプリンのレシピですが、考えを改めさせられました」

「プリンが?」

「ええ、わたしたちは多くの材料を組み合わせることばかりに気を取られていましたが、プリンは材料が少ない分、素朴ながら素材の味が際立っていました。もしかすると、素材の味を生かした調理の方が姫様の好みに合うのかもしれません」

「庶民であるわたしたちでは、そんなにたくさんの材料を使えないですし、なによりモッコクは材料がいいですからね……それでも、やっぱり料理長さんたちの方が美味しいと思うんですけど……」

「あなたが料理を作ることを姫様が喜ばれたのが何よりの証拠かと……なので、実は今回も新しい料理が見られるかと期待しているのです」

「過度に期待されると困るんですけど……ところで、材料はどれを使わせてもらえるのでしょうか?」

「言ってくだされば準備しますよ」

「そんな、悪いですよ……あ、でも、その方が量を調整できますね。……申し訳ありませんが、よろしくお願いします」


 せっかくなので、ノーマは今回持って来ていたソースに合う料理を作ることにした。

 じゃがいも、タマネギ、豚肉にパンと大量の油……材料が次々と運ばれてくるが、一つ懸念があった。


「……なんか、多くないですか?」

「ええ、わたしたちの分。そして、陛下の分も入っているので」

「……へ、陛下の分!?なんでですか?!」

「この厨房を貸す条件の一つですから……お願いします」

「……わかりました。ただし、陛下とリ……殿下に出すに値するかどうか、味の感想をお願いします」


 こうして出来上がったのは刺々しい衣の茶色い物体に、キャベツの千切りとカットしたトマト、別の容器にソースが添えられた物だった。

 完成した料理に、料理人たちは訝し気な表情を見せる。


「……これは?」

「コロッケ……って言うそうです」

「ふむ……いただきます……」

「熱ッ!……でも美味しい。カリカリッとした衣と中のじゃがいもがホクホクして、甘みがあって……」

「素揚げやアロゼともまた違った食感だ。パンを揚げるとこんな風になるのか……」

「これだけでも成立してしまいそうだ。これは食事というよりは軽食に近い……だが、美味い」

「何よりもこのソースとの相性が抜群だ。このソースのピリッとした辛さが味を引き締めて……何個も食べたくなる」

「よかった……あの、どうでしょう?難しいでしょうか?」

「そうですね……後何個かいただきます」

「あっ、こっちにも!」

「こっちは二つ!」

「なら、こっちは三つ!」

「……大丈夫そうですね」


 その後、リリアンたちにも振る舞い絶賛された。リリアンはその後も予定があり、ノーマは残った分をエメスにも分けようと持ち歩いていると―――


 お疲れ様でした。


 料理の工程を丸々カットしてみました。料理タグも付いてないのでいいかなと……

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