第37話 暗躍
場所は変わり、アレクの自室の扉がノックされる。
「……誰だ」
「報告ですよヒゲ。入りますね」
「……普通、余が許可してから入るものではないか?」
「そういう面倒なのいいんで」
「お前というやつは……何かわかったのか?」
ハーティスの行動に呆れつつも、アレクは続きを促す。
「いいえ、さっぱり」
「尋問を命じただろう。口を割らなかったのか?」
「どうやら任務失敗を悟った瞬間、自害したようです。……死人に口なし、敵ながら感心しますよ」
「そうか……被害は?」
「警鐘の付近の見張りが三人。巡回中の兵士が四人、後は新兵数人……見張りを先に始末する周到さ、王子の護衛もまんまと誘い出されたようですし、かなりの手練れですね。この被害も妥当と言えば妥当です」
「……奴らの狙いは息子と娘か?それに……お前には娘の護衛を頼んだはずだ。なぜ傍を離れた?」
「王子たちを狙った可能性はあります……なので、前もって排除しようと動いたのですが、結構な人数がいたのは想定外でした。なので、姫様の護衛はノーマ様にお任せしました。本人にもよろしくお願いしますと言ってあります」
「エメスの弟子とはいえ、いくら何でも……何かあったらどうする」
「あの偏屈なロリコンが認めたんです。まぁ、大丈夫でしょう。それに、わたしが動いたことで被害が抑えられた部分もあるんですから、酌量はしてください」
「お前というやつは……一先ずご苦労だった。……だが、いよいよという感じだな……引き続きよろしく頼む」
「……割に合いませんね。御守りに護衛に隠密調査とは……」
「契約は契約。しっかり働いてもらうぞ」
「はいはい、わかりましたよ」
同時刻、とある場所にて―――
「おのれ……あの平民、余計なマネを!!」
「荒れているな。黙って我々に任せておけば良かったものを……」
「うるさい!貴族の連中に協力を仰ぎ、多額の融資をしているにもかかわらず、お前らがグズグズしているからこんなことになったんだろうが!」
「何事にも段階はある……ところで、その平民の情報は? 手練れの暗殺者を退けるとは、相当腕が立つと見えるが……」
「エメスの弟子で、五体の精霊と契約した精霊術師だ」
「それはまた……日を改めるべきだったのでは?」
「城内の警備が手薄になる日は今日しかなかった。しかも、よりにもよってその精霊術師が城内に、しかも姫と王子の傍にいるなど知らされていなかったのだ!おまけにエメスまで城に残っているなど……なぜこうも上手くいかない!」
「その結果、仕留めることもできなければ、警戒を強められただけ……我々の足を引っ張らないでもらいたい」
「貴様……誰に向かって口を利いている!!」
「これはこれは申し訳ない……まもなく準備は整います。そうすれば、あなたの悲願も果たされましょう。もうしばらくお待ちください、モッコク王国宰相、サミュエル・タリバ殿」
「~~~……!」
「やれやれ……」
サミュエルは近くにあった椅子に八つ当たりをして、その場を去った。
翌朝、リリアンの護衛をハーティスに代わってもらったノーマは徹夜明けでフラフラとした足取りでエメスの元へ向かう。昨晩の活躍を知った侍女や使用人たちに声を掛けられても、眠気のせいで話半分の状態だった。
エメスの元へ辿り着き、帰ろうとしたそのとき、呼び止める声が響いた。
「……待って!」
「……リリアン殿下!? どうしてこのような場所に?」
「見送りたいとのことでお連れしました」
「そうだったんですね。……ご足労をお掛けしました」
リリアンはノーマに抱き付く。ノーマは別れのハグなのかと思い抱き返したが、リリアンからの言葉に衝撃を受けた。
「……姉様、今度はいつ来てくれるの?」
「姉様って……わたし!?」
「状況的にそうだろうな」
「こ、これって、問題になりませんか?」
「姫様自らが呼んでるなら、いいんじゃないですかね?……知らんけど」
「無責任!」
「……ダメ?」
「だ、ダメ……じゃ、ない……です。……はい」
「♪」
「~~~―――」
いろいろ思うところはあるが、リリアンの満面の笑みの前では、ノーマはこれ以上何も言えなかった。
こうして、城での長い一日は終わった。これから先、起こる苦難など知る由もなく、エメスの背中を涎で汚しながら、ノーマは眠っていた。
お疲れ様でした。
スマホが寿命を迎えて買換えたんですけど、引継ぎに翻弄されました……体調崩したり、約八話分の話をボツにしたりと結構ボロボロです……




