表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
35/37

第35話 変な人 2

 就寝時間になりハーティスが声を掛けにきた。


「姫様、そろそろお休みの時間です」

「あっ、もうこんな時間なんですね」

「ノーマ様は客間へどうぞ。ご案内いたします」

「殿下、夜分遅くまでお邪魔いたしました。わたしはこれで……!」

「……」


 立ち去ろうとした瞬間、リリアンがノーマの服を引っ張った。その様子を見たハーティスがノーマに声を掛ける。


「……! ……ノーマ様、こちらが客間の鍵です」

「あっ、はい……」

「これを、こうして……はい!」


 ハーティスが客間の鍵を手で握り、手首を一回転させると手の中から鍵が消えていた。ノーマは鮮やかな手さばきに感動し、拍手を送る。


「すごーい!……あの、鍵はどこに?」

「申し訳ございません。たった今失くしました」

「はいっ!?」

「なので、今晩はこの部屋でお過ごしください」

「ちょ、ちょっとそれは問題になりませんか?」

「……どうです、姫様?」


 リリアンは首を横に振る。逃げ道を塞がれたノーマは、覚悟を決めるしかなかった。


「そ、それでは、一晩お世話になります。失礼ですが、ソファで寝るので毛布を貸していただけませんか?」

「毛布持ってくるのダルいので、一緒のベッドでお休みください」

「い、いや、流石にそれは……」

「わたしもう仕事上がりなので、姫様のことよろしくお願いしまーす」

「え、あの、ちょっとーーーっ!!」


 ノーマの制止も空しく、ハーティスは部屋を施錠して出て行ってしまった。

 ノーマはリリアンにひたすら頭を下げる。


「……殿下、わたしはソファで寝ます。もしうるさかったりしたら外に叩きだしてください!!」

「……一緒に、寝よ?」

「―――!!?」

(かわいい!)


 リリアンの厚意に甘え、同じベッドに入る。その後も話をしているとリリアンの眠気が限界を迎え、ほどなくして寝息を立てていた。そして、ノーマはと言うと―――


(眠れない……これ寝返り打って殿下に何かあったら、わたし処分されるの?……離れようにも殿下が服を掴んでるせいで逃げられないし……うぅ、何かお腹痛くなってきた……)


 動けないでいるノーマだったが、リリアンに目をやると、リリアンの目から涙が零れていた。


(……涙?)

「お母……様…………」

(!? ……そういえば、王妃様って会ったことない……もしかして、会えてないのかな……?)


 哀れに思ったノーマは、リリアンの頭を軽く撫でる。すると、リリアンの表情が少し緩み、甘えるように撫でている手に頭を押し付ける。


(寂しかったのかな……)


 寝息が落ち着くまで、ノーマはリリアンの頭を撫でていた。しばらくして、リリアンが目を覚ました。


「う……うぅ……」

「殿下?」

「……トイレ」

「あっ、はい……今どきます」

「……一緒に来て」

「かしこまりました」


 部屋を出て、トイレを済ませた帰り。バルコニーの方に目をやると、綺麗な満月が目を引いた。


「すごい……ここまでハッキリ見えるのは珍しいですね」

「お月様……見たい……」

「あっ、殿下。お待ちください……」


 リリアンと共に月を見上げる。神秘的な光景に見惚れながら、ノーマは不意に故郷を思い出していた。


「綺麗……」

「そうですね……」

(……そういえば、修業でバタバタしてたから、ゆっくり月を見る機会なんてなかったかも……)


 手紙でのやり取りは定期的に行っているものの、エメスの仕事の関係で予定が合わず、故郷には帰れていなかった。


(みんなも同じ月を見てるのかな……お父さん、お母さん、ブラン、ターナ姉、ハック兄、ダレス、村のみんな……久しぶりに、会いたいな……)

「……泣いてるの?」

「え……あれ?どうしたんだろう。涙が……」

「そこにいるのは誰だ!」

「!?」


 ノーマがホームシックになったのも束の間、誰かに呼ばれて振り返る。

 そこにいたのは王子であるカルロス・バーコン。ノーマは謁見の際にもその姿は見ているが、容姿端麗で、立ち振る舞いだけでも高貴だとわかる。しかし、瞳の奥には底知れぬ冷たさも感じられるという印象だった。

 一方で、カルロスから見たノーマは夜風になびく髪と、月明りに照らされた潤んだ瞳、寝巻の艶やかなデザインも相まって、一枚の絵画のように写っていた。

 お互いが硬直したが、ノーマが王子を認識した瞬間、即座に跪いた。


「カ、カルロス殿下。申し訳ございません!」

「君は……」

「ノーマ・ムビオスと申します。リリアン殿下のご厚意で、分不相応にも一晩お世話になっております」

「ああ、あのときの……ハーティスはどこに?」

「仕事上がりと言って、帰ってしまいました」

「そうですか……ノーマさん。すぐに妹と一緒に避難してください」

「お兄様……?」

「えっ、それはどういう……」

「賊が侵入している可能性があります。」

「!? わ、わかりました……よろしければわたしにお二人を護衛させてください」

「……わたしも多少剣術に覚えがありますが、精霊術師であるあなたが一緒なら心強いです。……では、一緒に広間に避難しましょう。そこなら交代で常駐している近衛騎士もいますし、安全です」

「わかりました」


 三人がバルコニーから立ち去ろうと廊下へ向かって歩いていると、突如として人影が現れる。黒衣に身を包み、手には鋭利なナイフが握られていた。素早い動きと不意打ちだったこともあり、カルロスは反応が遅れた。

 お疲れ様でした。


 明けましておめでとうございます。

 昨年に比べ、作品を見てくれる人が増えているようで、とても嬉しいです。

 これからも頑張っていきますので、今年もよろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ