第34話 変な人 1
庭園の中にお茶会に使うであろう場所に辿り着く。白く輝く美しい大理石でできたガゼボ、剪定されて形の整った生垣と、花々が彩となり優雅な空間を演出していた。ノーマは疎外感を感じつつも見惚れていた。
(綺麗……案内されたときも思ったけど、こんなの絵本でしか見たことない)
「それでは、お茶を準備しますのでしばしご歓談ください」
「え、あの……」
「ごゆっくり」
ハーティスは立ち去り、リリアンと二人きりになった。料理に集中していたときと違い、面と向かって何を話せばいいのか戸惑っていると、リリアンの方から話しかけてきた。
「……ねぇ、精霊触らせて?」
「せ、精霊……ですか?」
「猫ちゃん……触りたい」
「……ああ、はい。ルビィ、おいで」
ルビィが現れ、尻尾を揺らしながらリリアンを見つめている。
「撫でてもいい?」
「……はい、いいそうです」
頭を撫でようとリリアンは手を伸ばす。しかし、ルビィはその手をすり抜けて、リリアンの膝の上で丸くなった。
「ちょ、ちょっと、ルビィ!」
「あったかい……」
「……申し訳ございません。撫でられるなら頭より背中の気分だったみたいで……」
「かわいい……」
精霊たちの助力もあり、リリアンと少し打ち解け、談笑する余裕も出てきた。
「アクリアもひんやりモチモチでかわいい……いいな、わたしも精霊ほしい」
「契約しなくても留まってくれる精霊はいるそうですが、わたしはまだ見たことはありませんね」
「……ねぇ、一匹ちょうだい」
「……申し訳ございません。わたしにとって精霊たちはもう家族なんです。……差し上げることはできません」
「……そう」
「あ、あの……たまにこうやって触れ合う機会を設けるので、それでお許しいただけませんか?」
「……じゃあ、今遊ぶのはいい?」
「はい、もちろんです」
「お茶の準備が整いました」
ハーティスがお茶を運んできた。お菓子も並べられ、二人で作ったプリンも置かれる。
「プリン……やっと食べれる」
「わたしはこのクッキーをいただきますね」
「プリンでしたら、わたしの分を一つ差し上げます」
「えっ……いいんですか?」
「ええ、レシピが料理長に渡ったのなら、いつでも食べられるでしょうから」
「……ねぇ、なんであんたも席に着いてるの?」
「プリンを前に我慢できるわけないでしょう?」
「威張るな!」
「あはは……」
こうして精霊たちを交えながらお茶会は続き、気付けば夕方になっていた。
「あっ、もうこんな時間。さすがにもう帰らないと……」
「えっ、もう……?」
「その件について、謝罪しなければなりません」
「謝罪……ですか?」
「お茶会への許可を取るつもりが、うっかり宿泊許可と間違えてしまいまして……そういうことですので、今晩は城内でお過ごしください」
「どんなうっかり!?」
さすがに食卓を共になどできず、夕食はエメスと共に城下町で食事を摂ることにした。二階の特別な席だったが、城内とは違い上品ではないが賑わいがある空間が心地よく、気が抜けたノーマは料理が来るまでの間テーブルに突っ伏し、口から魂が出てきそうなほど疲弊していた。
「お疲れ。しかし、驚いたぞ。伝書鳩が飛んできたかと思えば、こんな手紙を持ってくるとは……」
「手紙?」
「いろいろ書かれているが、「ノーマ様の宿泊許可ヨロ☆」って書かれたやつだ」
「軽い!? しかも、絶対うっかりじゃない!」
「お前、わたしと別れた後何があったんだ?」
「それは……」
ノーマはこれまでのことを話す。エメスは複雑な表情をしたが、黙って聞いていた。
「……珍しいこともあるものだ。殿下が誰かを引き留めるとは……」
「そうなんですか?」
「家族かあの侍女以外では、他の誰かにそこまで心を許すような方ではないからな。まぁ、我儘のせいで周りが近づかないのもあるが……」
「わたしはあまり我儘な方には思えませんでしたが、どうして殿下はわたしに……?」
「精霊たちが良いきっかけになったのかもな。陛下からの許可も降りているし、わたしも今日は城に泊まる。くれぐれも失礼のないように」
「……師匠、悔いが残らないように思いっきり食べても良いですか?」
「……ほどほどにしておけ。そして、失礼がない方に努めろ」
結局、テーブルが皿で埋まるほどの食事を済ませ、エメスたちは城に戻る。
その後はリリアンの部屋に招かれ、寝巻を借り、ノーマはリリアンと話をした。内容はノーマの故郷のことや、修業の話、魔獣と戦った話など……ノーマの話が中心になっていたが、リリアンは興味深く聞いていた。
お疲れ様でした。
メリークリスマス。
何かの作品の脚本家か監督か、記憶が定かではありませんが、「キャラクターが勝手に動き出す」という話があり、自身の創作物でそんなことがあるのかと疑問だったのですが、今はその言葉の意味が分かる気がします。
この侍女勝手に動く……




