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第31話 奉仕の喜び 1


 エメスとノーマは謁見の間へ向かう。


「……ノーマ、大丈夫か?」

「はい、師匠!遺書はバッチリです!」

「後ろ向きに全力なのやめろ」

「……だって……だって~~~……」

「いざとなったら助けてやるから泣くな!」


 エメスを信じていないわけではない。だが、怖いものは怖い。謁見の間へと向かう道は、ノーマにとって処刑台への階段と変わらなかった。

 謁見の間へ入ると、アレクと騎士団長の他に、怪訝そうな顔の宰相が立っていた。


「早々に呼び立ててすまない。……随分と顔色が悪いようだが?」

「ぇ……えっと……その……」


 ノーマはなるべく平静を保とうとしたが、顔色は隠せなかった。しどろもどろになるノーマの態度を宰相は叱責した。


「なんですかその態度は、王に対して無礼では?」

「も、申し訳ございません……!」

「これだから、礼儀も知らぬ平民は嫌なのだ……」

「宰相、控えよ」

「……失礼いたしました」


 アレクが宰相を諭したおかげで再び静寂は訪れたが、ノーマは不安と恐怖で言葉を続けることができなかった。そんなノーマを助けるべく、エメスが動く。


「陛下、弟子に代わり発言をお許しください」

「エメス殿、あなたの弟子とはいえ、この神聖な謁見の間に平民を連れてくるなど、どういう了見ですか?」


 アレクが答えようとしたのに被せて、宰相が苦言を挟む。それがアレクには不愉快だった。


「宰相。話が進まぬ故、今後の発言を控えよ」

「しかし―――」

「彼女を呼んだのは余だ……余の決定に異議があるか?」

「……失礼いたしました」


 一瞬顔を歪めた宰相は頭を下げる。そんな宰相を気にする様子もなく、アレクは話の続きを促した。


「エメス、続けよ」

「はい、我が弟子は先日の謁見の間での無礼、及びリリアン殿下に対する無礼を大変悔いております。それを罰するようであれば、師であるわたしの監督責任です。どうか処罰はわたしに……」

「先日……ブフォッ! ……ンン゛ッ! 謁見の間での無礼は不問とする。リリアンへの無礼については初耳だが、特に報告はないのでこちらも言及はしない。過去に遡り罰することもしないと約束しよう。今回、其方たちを呼んだのは依頼を受けてもらいたいのだ」

「依頼……我が弟子にも関係しているのでしょうか?」

「むしろノーマ・ムビオスに対するものだ。確か、氷の精霊術を使えると聞いている」

「はい」

「氷はこれまで行商人に頼んでいたのだが、トラブルがあって、いつになるかわからなくてな。そこで、氷室の氷の補充を頼みたい」

「かしこまりました」

「それと、其方は菓子を作ったと聞いている。確か……プリンと言ったか?」

「は、はいっ!料理長から、参考にしたいと……恐れながら、何か問題が……?」

「いや、エメスから聞いていると思うが、我が娘リリアンは大変我儘でな。好き嫌いも激しく、余も手を焼いている。そんなリリアンがどうしても食べたいと言う品、余も気になっている……そこで、我らにも振る舞ってもらいたい」

「……ぇ、えぇっ!?わ、わたしの、お菓子を……ですか?」

「料理人たちもマネて作ったらしいのだが、どうにも違うらしい。厨房には話を付けているし、レシピには報酬も支払おう。……頼まれてくれるか?」

「は、はいっ!身に余る光栄です。謹んでお受けいたします」

「よろしく頼む。……エメス、肩を貸してやれ」

「陛下、流石にもう……」

「し、師匠、安心したら足に力が……」

「……馬鹿者」


 氷室に氷を補充し、ノーマたちは厨房へ向かう途中でリリアンと侍女に鉢合わせた。対面し、エメスが挨拶を交わす中、ノーマはリリアンに謝罪する。


「殿下。先日の無礼、どうかお許しください!」

「! …………」


 リリアンは様子を窺うように侍女の影に隠れてしまった。そんなリリアンを侍女は諫めた。


「姫様、ちゃんと応えてください」

「……ぃ……いい、よ……」

「ありがとうございます。……え、えっと……い、一生懸命作りますね」

「……!」

「……それでは失礼します」


 その後、厨房での案内を終えたエメスは別件で席を外し、ノーマはプリンを作る準備にかかる。材料も道具も揃え、準備は万端。……しかし、一つだけ不安要素があった。


「……」

(なんで殿下がここにいるのーーー!?)


 あの後、すれ違ってそのまま別れたはずだったが、ノーマが材料を準備している間に、調理台にいた。リリアンはノーマを見つめており、ノーマはとてもやりにくかった。


(えっ、どうしよう。これ作ってる最中にドレスとか汚したら弁償とか、無礼になるのかな?だったら、離れてもらって……ダメだ、言葉選びを間違えたら処分されるかも……でも、でも、一体どうしたら―――)


 ノーマは完全にパニックを起こし、固まってしまう。そんな様子を見ていた侍女がノーマに声を掛けた。


「……姫様、少しの間お待ちください。ノーマ様はこちらへ……」

「えっ、は、はい……」


 厨房の外へ連れ出され、侍女はノーマに頭を下げた。


 お疲れ様でした。


 「あれ、今回短い」と思った方もおられるでしょうが、詳細は活動報告に記載しています。気になる方はお手数ですがご覧ください。

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