五百羅漢、ポーカーフェイスでお見送り
「今日もさっぱり売れんかったのぉ…」
古物商の高井シナモンは、大量の売れ残りと共に帰路についていた。
「ネット販売もさっぱり振るわんし、次の支払いをどうしたものやら…」
資金繰りに悩みながら車を走らせていると、ふと道の傍に佇む五百羅漢像に目が留まった。
「こんな所にこれだけの石仏があったとは…今まで気付かなんだわい」
遠くから見れば石垣と見紛う程の石仏群は、各人各様の表情を湛え静かに佇んでいた。
「きっとこれも何かの御縁じゃ、商売繁盛でも祈願するかのぉ」
そう言って、おもむろに売れ残りのスマホを一つ一つ供えていった。
「スマホは回線契約をしておらんので、ネット接続はこれで我慢してくだされ」
最後にモバイルルータを一つ供え、帰っていった。
次の日、ネットショップの管理ページを見た高井は驚愕した。
高評価が大量に入っていて人気のショップとして検索上位に浮いてきていたのである。
過去最高のページビューを叩き出し、売り上げもそこそこ上がっていた。
「こりゃあ仏様のお陰じゃあ、ありがたやありがたや…」
これで何とかなるかもしれない、そう思っていた矢先にネットショップが凍結されてしまった。
あまりにも突然の事態に狼狽しつつも運営に問い合わせたところ、
「rakan_001からrakan_500の連番のアカウントによる短時間で大量の高評価は不正の疑いがあるので一旦凍結しました。」
との返答だった。
アカウント名を見てもしやと思い五百羅漢像を見に行くと、お供えしたスマホに運営から不正に関与したと指摘されたアカウントが作られていた。
「仏様…お気持ちは有難いのじゃが、ネットの販路が台無しじゃ…、かくなる上は金品でも恵んでくれんかのぉ…」
クレームついでに煩悩をぶつけて帰っていった。
その日の夜、高井家を訪れる人影があった。
もしや仏様が金品を!?と喜び勇んで玄関を開けると、そこには数人の男が立っていた。
「高井シナモンさんですね。警察までご同行願えますか。」
「な、なぜじゃ…」
「スマホの不法投棄事件を捜査中なのですが、現場にあったモバイルルータの契約名義人である高井さんに参考人として事情をお聞きしたいと思いまして。」
高井を乗せ像の前を通り過ぎるパトカーを、五百羅漢像は無表情で見届けていた。
なろうラジオ大賞が開催されると聞き、折角なので投稿させていただきました。
次こそは完成度を上げたいと思い続けて4回目、次回こそは…なんとか…