開幕
さぁさぁ、舞台の幕は上がった。
これより語られますは、楽しい楽しい物語
朝が来ない世界で不死者と呼ばれる化け物を殲滅しつつ、朝を取り戻そう奮闘する少年少女達の物語
______狂った現実に花束を、歪んだ幸せに祝福を
2×××年
パチパチと爆ぜる火花の音
此の世のモノとは思えぬほど悍ましい”何か”の呻き声
真っ暗な空には大量の鳥の大群
次々と崩落していく家々
そして
「あ”、あ”あぁぁぁぁぁぁぁああああああああ?!?!」
一帯を埋め尽くすほどの悲痛で、絶望を溶かしたような悲鳴が様々な場所から上がる
逃げ惑う人々の群れ、子だけは守ろうとする女の姿、訳も分からず喚き散らす男の怒声
膝まづき神に救いを求める教祖、苦し気に呻く子供の顔に噎せ返るほどの血の匂いが漂う。
誰が見ても分かる異常な光景
「あははははははははははっ!」
そんな光景を見て、恍惚といった表情を浮かべ笑う男が一人
その男は両手を血に染め、その手を掲げて狂喜に満ちた笑い声を上げていた。
その姿は正気を失ったようにしか見えない。
しかし彼は間違いなく正常だった。
美しい長い白髪を掻き乱し高らかに笑う男の顔は見えない、ただ、一つ言えることはこの男は正常であるものの”異質”であり”異常”である、という事だけだ。
軈て男は笑いながら、一歩踏み出す。
足元に広がった誰のモノかもわからない血だまりが飛沫を飛ばし、足を濡らす。
踏んだ際に跳ねた血液が素足に素足の甲に絡みつく。
男はそれに気を止めることも無く、やせ細った手を輝く満月に伸ばし、見えている口元を大きく吊り上げる。
「ようやく!漸く私の夢が叶う時が来た!」
一片の光すら届かぬ闇の世界で男は歪に笑う
「さぁ、粛清を始めよう___神の名のもとに」