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カフチェーク  作者: 月夜調
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「キャアァァァ・・・‼︎」


 うら若き乙女の悲鳴が響き渡り、草花を伝う朝露が震える。


「・・・」

「ふぅ〜・・・」


 声を失い地面へと崩れ落ちた乙女を見下ろしながら、白は大きく息を吐く。


「今日の朝活はこの位にするかな」


 その身を朝靄で潤しながら、軽い口調で物騒な台詞を吐いた白。


「その前に・・・」


 皆の待つ元へ帰る前に、乙女の元へと膝をついた白。

 そこには美しい乙女の姿を持つモンスター、水の精霊『クフシーンカ』達の亡骸が転がっていた。


「う〜ん、ハズレか・・・」


 クフシーンカのドロップアイテムの中では最下位の『水の結晶』を拾い、少し毒づく白。

 言葉を失ったクフシーンカは、不満の声を上げる事も出来ず、静かに霧散していった。


「相変わらず、精が出ますね」

「ん?あぁ、結さん」

「また、一人で・・・、ですか」

「・・・」


 最近は結とグレイスとのパーティ活動にも協力的だったが、ソロでの訓練も怠る訳にはいかず、物騒な朝活は欠かさず行っていた白。

 結としては白からの歩みよりは感じていた為、強く言う事も出来ず、しかし、僅かでも不満は示しておきたくての発言だった。


「私も初めてみましょうか?」

「え?何をですか?」

「・・・ソロです」

「・・・」


 結の言葉に、恍けてみせた白だったが、結はそんな白の考えに気付いた様に、僅かに間を置きながらも、しっかりと白を追い詰めた。


「それは、おすすめしませんね」


 僅かな間では当たりを引く事が出来ず、決して上手くは無い返しをした白。


「おすすめですか?」

「・・・⁈」


 軽く膝を曲げ、そんな白を見上げる姿勢で距離も詰める結に、決して女性慣れしてない白は体を強張らせてしまう。


「・・・」

「・・・」

「ゆ、結さん」


 白を無言で見上げる結。

 中性的とはいえ、美人といって差し支えない結に、そんな風な態度をとられ、静寂の間に直ぐに耐えられなくなってしまった白は、意味もなくその名を洩らした。


「まあ・・・、良いですねどね」

「・・・」

「そろそろ、朝食にしましょう?」

「は、はぁ・・・」


 動揺する白をよそに、結は何でもない風に白から距離をとり、特段不満を述べる事も無く、話題を変えたのだった。



「あむあむ」

「・・・」

「う〜ん、美味」

「そ、そうか?」

「うん!」


 その見た目には似合わぬ、幼子の様な食事の作法と満面の笑みを見せるグレイス。


「本当にグレイスは稲荷が好きですね」

「うん、お姉様!」

「やっぱり、狐だからかしら?」

「狐・・・、だから?」

「え?」

「結さん」

「どうかしましたか?」

「ここでは、狐=お稲荷様は通じませんよ」

「あ・・・、そうでした」

「・・・」


 職務に忠実な結でさえも、既にゲームと現実の世界の混同はかなり進み。

 当然の様に現実世界の常識をこちら側へと持ち込む状況。


「ねえ、お姉様。どうして?」

「え、ええ、そうねぇ・・・」

「・・・」


 食いさがるグレイスと対応に窮す結。

 そんな、平和な二人を眺めながらも、白の心には一抹の、しかし、確かに深い不安がよぎった。

 それに合わせる様に・・・。


「ん?」「アキラさん・・・!え?」

「あぁ、すいません。通信です」

「ちょ・・・!」

「すいません。お任せします」


 食いさがるグレイスの対応に、白の助けを求め様とした結。

 しかし、丁度届いた通信に好都合とばかりに、白は食事の席を立ったのだった。


(ナイスタイミング、ケン)


 心の中で、この世界で出来た唯一の友と言える存在への礼を述べ、その流れで通信を開いた白。


「っ⁈」


 しかし、直前に心の中で軽口を述べたとは思えない程、狼狽を隠せない表情の白が居た。


「・・・、雪」


 表情だけはなんともいえず、しかし、その立ち姿はまるでフリーズしたかの様に固まり、呻き声さえも発せられない白。

 一分には満たず、しかし、白には永遠にも感じられた時間を経て、やっと絞り出した一声。

 それは、白の親友の名。


《五日後、『ジャードノチス』で待つ》


 待ちに待った親友からの便りは、あまりに一方的で、簡潔なものなのだった。

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