プカリ真鍮
海に来た。
海に来たけど、特にすることない。
海なんて、泳ぐか、太陽に焼かせるかしかない。
泳げなくて、水が嫌いで、塩分に敏感で、太陽を避けて生きてきた私には、天敵しかない。
唯一の味方である友達も、トイレを求めるように去ってから、もう一時間が経つ。
誘ってきたのに、私を置いて何処行った。
目の前の海に、何かが流れてきた。
黄色か金色、みたいな色をしている。
プカリプカリと浮いて、ゆらりと波に漂う。
金属のようにも見えるそれを、追っている私がいた。
幻想のようなものでもいいから、とにかく追いかけていきたかった。
身体が勝手に動いた。
その金属のようなものは、沈むことなく、再び沖に流れ行く。
身体は嫌いなものの塊である、海の奥へどんどん導かれていった。
不思議に嫌な気はしなかった。