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8月31日が来たら。  作者: 真岳仁緒
最終日、8月31日
4/9

vs『中立』其の壱

自分がどんな状態にあっても、物事は想定外しか起こらない。

ただし、それが良い方向に傾いた時、それを想定外だと思わない。



塞がってるな。

ガラスに手を当てる。傷一つない。

「そんなに簡単には出られないという事なのか?」

わからないけど。

御魂豊作を飛ばして突き破った壁は、そのままだったが、外に出るために突き破ったガラスは何事もなかったように修復されていた。

御魂がどこまで飛んで行ったのかはわからないけど、意識があるなら大丈夫だろう。一応、まだ3階だ。下手しなければ死ぬような高さではない。

それに、多分無傷だろうな。もし上がってこられたら、結構厄介だな。

初めてその可能性に気付く。

それについては考えていなかった。やっぱり気絶していた方が助かる。

スタッフルームを出る前に見つけたタワーの全体図には、7階に放送専用の部屋があるらしい事がわかった。

次目指すところもわかった。

全31階の内、下の方にあって本当に良かった。



と思ったが、地図なんて全く役に立たないことに気づいた。先ほどと同じように階段を上って、7階を目指す途中人に会う事はなかったし、壁や階段が崩れる事もなかった。が、しかし。

7階の構造は、全体図で見た時とは全く違っていた。ここでいう違っていたというのは壁やら床やらがボロボロになっていて、部屋の区別がつかないとかそういうわけではなく、そもそも、フロア自体が全く違う様相になっていた。

「ああ、そうか。空間認識阻害……そういう能力じゃなくて、その中の能力だったって事か」

空間の入れ替え。多分、おかしな継ぎ目とかはないから、フロア毎に、バラバラに組み立てられていると考えてみていいのかもしれない。という事は、もしかしたら今までいた階すら、別のフロアだったかもしれないという事だ。それならば、エレベーターか、階段のどこかに書いてあるだろうと思ったが、どこもぐちゃぐちゃに潰れていた。対策済みか………。

「しまったな」

7階に行こうと思ったせいで、4階から6階は何も見ずに来てしまったけれど……

一回戻るしかないか。

可能性は低いが、確かめない理由もない。そう思って、7階からまずは4階まで下がって、一階ずつ照らしあわせようと思い、4階まで下がろうとしたが、

え?なんだこれ?

5階から6階にある中間地点まで下りて行く途中。

それから下には階段がなかった。

いや、階段どころではない。下の階も、そのまた下の階も、その下も、何もない。

何故なんだ?本当に訳がわからない。



視界の先にあるのは、真っ黒い直方体の塊。

「今、これでこのタワーを支えているのか…」

なるほど、そんな事も出来るのか。どうやってこんな広いタワーで人を集めるのか疑問に思っていたが、まさかこんな方法で来るとは。

しかもこの黒い塊、少しずつ足元に伸びている。これは……つまり……

振り返って猛ダッシュ。6階まで辿り着く。すると次の瞬間、さっきまで俺が立っていたところはあっさりと飲まれ、一瞬でその黒い塊は6階まで動いて、止まった。

じ、冗談じゃない。

止まっている場合じゃない。すぐに7階へ戻る。いや、7階じゃ全然安心できない。

31階もあるタワーにとって、7階なんてのは、下のそのまた下の階___。

と、焦っているのも束の間、今度は真上の階、すなわち8階がぺしゃんこに潰れた。

「………は?」

まるで紙を丸めるかのようにぐしゃぐしゃになったフロアは、そのままどんどん小さくなり、消滅した。

さて、こんな異空間でも重力は正常に働く為、8階が無くなれば勿論、次に落ちてくるのは9階だ。

ただ、その9階も見えたのは少しの間だけ。またすぐに、くしゃくしゃになって、潰れる。

冗談だろ?

そうして10階が、11階が、12階が、13階が、14階が、切り離され、少し落ちて、丸められ、なくなる。この繰り返し。

ち、ちょっとまて、早くしないと、上もそうだが、下も危ない。だんだんと、迫ってきている。

15階が、16階が、17階が、18階が、

ま__まずい。もうすぐそこまで来ている。

19階が、20階が、21階が………なにか、赤い液体のようなものが顔に落ちる。急げ。

床はだんだんと飲み込まれ、遂には俺のいる、7階とあったはずの8階につながる階段以外は、真っ黒に満たされた。

22階が、23階が、24階が、25階が、

は、早く、まずい。目的が出来た俺は、さっきみたいに諦めるわけにはいかない。諦めるわけには、いかない。

26階が、27階が………………潰れなかっ…………た。…………26階が潰れた後、めっきり27階は、潰れたり、くしゃくしゃになったり、していなかった。

そして、重力が働く。

いきなり急降下するように27階が落ちてくる。

ま、間に合わない。

もうすでに足場はほぼない。

落ちてくるまでには最低でも数秒、対してこちらは、もう、1秒もない。

垂直に、跳ぶ。

触ってはいけないような気がした。触ったら、もう二度と、戻れないような、そんな気分が。

まもなく、27階が8階に辿り着く。

が、俺の足はもう黒い塊に着く瞬間だった。

「こ、れは……きつ

「ラッキーチャーンス」

それは幻覚だったのか。

腑抜けた声が聞こえて、何もないところからいきなり手が生えてきて、そんな言葉を言って、こちらに手を伸ばして、まるで助けるような事をして、その手はなんなのか、誰の手なのか、わからなくて、だけど、

「巡り合わせは……嫌いだ………」

その手は沈み。

俺は上空へと飛んで行った。



vs絶無無人

戦闘内容:共に『中立』の為戦闘禁止。

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