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異世界を中国拳法でぶん殴る!  作者: 犬童 貞之助
第二章 工業都市ボルドー
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2-50 大英雄の生涯

 ──神暦555年。魔神と魔族が大陸を席巻(せっけん)し、その魔神たちに住む場所を追われ数を大きく減じていた神と人族たちは、異世界の住人を呼び出すことに活路を見出そうとしていた。


 神たちは依り代として生み出した魂を持たない人型の器に、総力を挙げて力を、魔力を、知識を注ぎ込んだ。この世界の神ですら耐えられないほどの莫大な力で満たされた器に、異世界の存在の魂を降ろすことで、その存在を使役し魔神たちに対する切り札としようとしたのだ。


 異世界住人を降ろすという案を取る前、魂を持たぬ力だけの器を神々が操作し、それを決戦兵器として運用するという手段も取られていた。


 しかし、これは悪手であった。


 魔神たちの謀略によりに器を奪われてしまい、それどころかその器が魔神らに戦力として吸収されてしまったのだ。


 このことが切っ掛けで幾柱かの神は魔神たちに敗れ消滅し、今日(こんにち)の窮状へ繋がっていた。神たちはもはやこれが最後の一手だと、一縷(いちる)の望みをかけて異世界の魂を呼び寄せるための儀式を行ったのだ。


 星明りが僅かに照らす新月の夜、神たちと人族の高位の神官・術者がススキで覆われた草原に集う。


 天の光は全て星。地に満ちるは闇ばかり。


 星の光を受けて金に煌めくススキに見守られながら、神たちは祭壇(さいだん)に安置された器へ異世界の魂を呼び寄せんと心を一にして魔法を思い描く。神を補佐する人族たちは神たちに、そして森羅万象に祈りを捧げた。


 煌めくは神々の魔力。(つむ)がれるは人々の祈り。

 それらの全てが、力の器へと捧げられていく。


 その魔力と祈りが通じたのか──。闇を切り裂く光の柱が、魂を持たない力の器に降り注ぐ。


 光の柱は夜空の星々をかき消すほどの光量を放ち、しばしの間、草原は昼夜が逆転したかのような明るさとなった。


 そんなまばゆい光の柱が、ある時脈絡もなく、(こつ)として消え失せる。


 まさか、失敗してしまったのか──? そんな考えが神々の、人々の脳裏をよぎったその時。


 魂を持たないはずの人型を()した器が、何者の意思も受けずに、身動(みじろ)ぎした。


 大英雄ユウスケ、目覚めの時である──。


◇◆◇◆


「──長いわッ!」


 ごく短い突っ込みと共にすぱぁん! と勢いよく本を閉じるロウ。


 工業都市ボルドーの大図書館で「大英雄の望郷(ぼうきょう)」という本を読み進めていた彼の、あまりにも冒頭の前置きが長いがための暴言である。


「何で大英雄の人柄に(せま)る様な内容のはずなのに、その大英雄の召喚から話が始まるんだよ。しかもなんかやたら物語風だったし」


 ぶつくさ言いながらも再び本を開いた少年は、今度は流し読みに変えて読み進めていく。


(まあ、あの長ったらしい前置きのおかげで大英雄の規格外な力の裏付けは取れたか。神さえも凌ぐ力、一体どれほどのものだったのやら。……ふんふん……その絶大な力で大陸を平定していったと……ほうほう……英雄の苦悩ねえ。元が日本人なら、魔族と言えど人型の存在なんて人種違いの人間にしか見えないもんな。力があってもそれが降って湧いた力なら思い悩みもするだろう。だけど、この世界の住人にとっては文字通りの死活問題だったから、英雄の悩みを解消させようと色仕掛けに人身御供(ひとみごくう)に……うげぇ)


 読んでいく内に生々しい描写が出てきたために、ロウは思わず顔をしかめてしまう。いつの世もどこの世界も、男を篭絡(ろうらく)するのは女の仕事なのだろう。


(生き死にがかかっているとはいえ、人間不信になりそうなものだが……丸め込まれたか、諦めたか。……この後の描写だと諦めた感じか? いくら厚遇でも殺戮(さつりく)兵器扱いじゃあ帰りたくもなるわな。これだと望郷というか、届かぬ夢、失われた思い出か……やばい、泣けてくる)


 ユウスケの心情を思うと身につまされる思いとなるロウ。


 片や英雄、片や魔神ではあるが、共に日本からの召喚者。


 少年自身は異世界生活を謳歌(おうか)しているが、(まか)り間違えば彼の様に世界の、いや、人族のために殺戮者としての人生を強要されていたかもしれないのだ。


(こういうことならネットスラングをばら撒いていたのも頷ける。きっと自分がいた記録を、異なる世界である日本人がいたのだということの、証を遺したかったんだろう……。俺が大陸拳法の套路(とうろ)に、前世以上に入れ込むのと似たような理由か)


 大英雄の無念を想い合掌(がっしょう)していた少年だったが、ふとあることに気が付いて思考を再開する。


(──ん? そういえばユウスケは、明らかに現代日本人なのに、900年くらい前に召喚されたのか? 向こうとこちらの時間の流れも、俺の創った異空間とこちらの世界みたいに異なっているのか。……900年前から今に至るまで、地球においては殆ど変化がないってことか? 面白いもんだな。昔話の竜宮城(りゅうぐうじょう)みたいだ。この場合は逆だけど)


 ロウがなんとなしに考えた内容は正鵠(せいこく)を射ていた。


 宇智英雄介(うちえゆうすけ)ことユウスケが召喚されたのは地球の西暦2018年の秋口であり、ロウに中島太郎(なかじまたろう)の意識が宿ったのは西暦2019年の夏である。地球で高々一年ほど時間が経つの間に、この世界では900年もの月日が流れていたのだ。


 少年が表現したように、正に正しく竜宮城のそれである。


(最終的にユウスケは、大陸の西部で亡くなったのか。墓の場所は現ランベルト帝国の首都ベルサレス。同郷人を(しの)ぶだけなのもなんだし、墓参りに行ってみるか。きっとユウスケも、同郷人が参りに来てくれた方が嬉しかろう)


 真っ当に生きる──そんな大目標を(かか)げるロウであるが……潤沢(じゅんたく)な資金を得て、自身が魔神と発覚してからは、父親の手がかり探しくらいしか人生の目的がない。


 その父親も魔神であろうということ以外は何の手掛かりもない以上、彼が風の吹くまま気の向くままに予定を決めるのも、仕方がない事だ。小さな目的を持たぬ者の気まぐれである。


(──それにしても。神をも凌ぐほどの力を持っていたユウスケでも、地球へ戻ることは叶わなかったのか。単にユウスケの魂が宿った器に対して、この世界に束縛するような措置がとられていただけかもしれないが。俺は空間魔法を磨いてる限りにおいては、地球への帰還ってのも出来そうな気がしてるけど。帰ることができないって可能性も、考えておかないとな)


 大英雄の人柄が気になって図書館へ足を運んだロウだったが、思わぬ形で彼の苦労や地球とこの世界の関係が明らかになり、唸り声をあげる。


 そんな少年の声が気になったのか、同じように本を読み漁っていたセルケトが、少年の近くへと寄ってくる。


「妙ちくりんな声を出してからに。どうしたというのだ?」


「大英雄も苦労してたんだなーってな。というかセルケト、お前は本、というか字が読めたのか」

「うむ。我が母が人族より覚え込まされた知識の中に、言語の理解や識字も含まれていたのだ。おかげで我がこうして書を読めるというのも皮肉よな」

「そうか。母さんに……って言っても迷宮か。まあ感謝しときな」


 ロウの問いに対し複雑な色を滲ませた表情で答えたセルケトだったが、そんな彼女に彼は軽く言葉を返すにとどめる。


「むうっ。貴様は軽薄なきらいがあるな。もう少し温かな言葉をかけられんのか?」

「母親から勘当されてるお前が、母親に対してどういう感情を持っているのか俺には計りかねる。復縁したいのか? それくらいなら止めはしないけど」

「我は母が生み出した魔物をけしかけられたのだぞ? 今更戻る気などさらさらないわ」


 頬を膨らませて不快さを表すセルケトを眺めながら、ロウもまた何とも言えない表情を浮かべる。


 (もと)を正せばロウが異形の魔物を襲ったことが原因で迷宮から追放されたようなものだ。彼にも罪悪感めいた感情が湧いていたのだ。


 とはいえ、ロウの内面において既に決着している問題である。セルケトが迷宮を守るために人族を殺してきた以上、過度(かど)な同情心は不要と考えていた。


「さいですか。また戻って迷宮の守護者をやるなんて言い出さなくて良かったよ」

「……ふん。人族と敵対して貴様に殺されてはかなわんからな。魔神と敵対など願い下げだ」


 鼻を鳴らしたセルケトは読書へ戻る。


 熱心に読んでいるなと思ったロウが、なんとなしに彼女の読む本の背表紙を窺ってみれば──「大英雄ユウスケの知られざる一面─彼を取り巻く愛憎劇─」のタイトルが。


「選りにも選ってそれを読むか。お前に人族の愛憎劇とか分かるのか?」


「むっ? 中々面白いものだぞ。英雄を支えようと献身する人間族の美姫(びき)、英雄を崇拝し他の女どもを蹴落とし遠ざけんとする森人族の王女、英雄を(たぶら)かし堕落させようとする美貌の魔族……。彼女らが英雄と織りなす物語は、甘くもあり苦くもある。今は魔族の美女が英雄に(ほだ)されたところだ。先が気になって仕方がない」


「へぇ~……っておい、さり気なくネタばらしすんな!」


 意外と内容が気になっていたロウだった。


◇◆◇◆


 窓から差す日が赤く焼けだし閉館時間が迫ってきたところで、ロウは本を読む手を止めてセルケトに呼びかけた。


「セルケトー帰るぞー」


「なぬっ!? 何故だ? 我はまだこの本を読み終えておらんのだぞ」

「この図書館だって一日中開いてるわけじゃないんだよ。ほら、本棚に返しに行くぞ」

「ぬあー止めろー今いいところなのだぞー」


 (しぶ)るセルケトから情け容赦なく本を奪い取ったロウは、本を書架へ戻し彼女を連れて図書館を後にした。途中、ロビーでまたも司書長ブロワとエンカウントするも、ぞんざいに扱い素早く離脱である。


 そうしてロウたちが、上層区から宿のある居住区へと向かう帰り道。


「──何やら騒がしいな?」

「そうだな。事件って感じじゃない、集会か?」


 上層区と商業区を区切る城壁の近くまでやってきた時、ロウたちは城門が慌ただしい雰囲気であることに気が付いた。


 ロウが魔力で強化された目を凝らしてみれば、増員されている衛兵たちの態度は物々しいというわけではないが、集まっている市民たちの空気はかなり緊迫している様子だ。


 不穏な空気を感じ取ったロウは身体強化を聴覚まで拡張し、耳をそばだて情報収集をしていく。


「──静粛(せいしゅく)に、どうかご静粛に! この都市の備えは万全です!」

「万全だと? ならあんたらには竜がどうにか出来るってのか? 街道を溶岩で破壊し尽くした、あの白竜が!」

「街道沿いに竜が現れたんだろう? 今に都市部へやってきてもおかしくないじゃないか!」

「──落ち着いてください! 落ち着いて!」


 半ば暴徒化した市民らが制止するよう呼びかける衛兵たちに詰め寄り、ついに衛兵たちが剣呑(けんのん)な空気を発した──その時。


「──静粛になさい」


 思わず動きを止めてしまうような、凛とした美声。無意識に声の主を探してしまうような、蠱惑的(こわくてき)な声音。そんな女性の声が、周囲に響いた。


 思わずといった風に辺りを見回す民衆と同じように、ロウも釣られて声の主を探してみれば、いつの間にか上層区方面より到着していた馬車から現れる女性が一人。


「──……」


 流れる金髪、輝く碧眼。

 上品ながら装飾の殆ど見られない貴族服の上に、青に煌めく金属板を重ね合わせた薄片鎧(はくへんよろい)を纏う女性は、彫りの深い美しい顔立ちながら猛禽類(もうきんるい)を彷彿とさせる。


「この都市には、貴方たちが敬愛する『征服者』ヴィクターや『山穿(やまうが)ち』ベルティエがいる。そして何より──この私がいる。仮に蛇もどきがボルドーへ攻めてこようとも、私が素首を斬り落としてくれよう!」


 手に持つ長大な薙刀の石突を石畳に叩きつけ、そう宣言する金の女傑。その音で正気に戻ったのか、呆けた顔で女性の言葉に聞き入っていた市民たちが声を取り戻す。


「公爵様!」「公爵様、その御姿は!?」「きゃーっ! 公爵様ぁー!」「ああ、お美しい公爵様……」

「こ、公爵様!? ええいお前たち、一度に話すな! 寄るな! 離れよ!」

「構いませんよ、今は緊急時ですからね。この街の政を放って、私が直接討伐に出向くということはありません。この装いは万が一の事態に備えてのことです。何分、あの蛇もどきは気まぐれな存在ですから」


 抜き身の刀剣のような鋭い表情から一転、柔らかな微笑みを浮かべ市民らの疑問に答える女公爵。離れた位置からその姿を見ていたロウが頷きながら呟く。


「あれがこの国の公爵の一人、そしてこの街の領主か。カレリア公爵……想像してたよりずっと若いな」

(また見惚れていたんですか? ロウは節操がありませんね)

(人間族の貴族にしては珍しく武闘派みたいだな? あの長柄武器は相当な品と見える)

「ふむ。長身であり端麗でもある。ちいと纏う雰囲気は異なっているが、我とよう似ておるな」

(((自分で言うか……)))


 念話をセルケトまで拡張している内に、集まっていた市民たちは公爵の言葉を聞いたことで落ち着きを取り戻したのか、散り散りとなって去っていく。 


「暴動になるかと思ったけど、すんなり治まったな。あの公爵の人柄なのか、それとも実力があるからなのか」

(雰囲気を見るに、どちらもって線が濃厚だな。お前さんは何か感じ取れないか?)

「う~ん。あの人の着てる装備自体が魔力纏ってて、本人の魔力が見え辛いんだよな。ちょっと分からん」


「そんなことよりもロウよ、宿へは帰らんのか? 我は空腹だぞ」

「お前連れてると目立つから、ここで事態が収まるの待ってるんだよ。公爵様が立ち去るまでその場待機だ」


 公爵ともなれば、冒険者組合の支部長からセルケトの容姿についての情報が上がっていても不思議ではない。ロウが警戒しているのはそこだった。


(アルベルトの報告書には傲岸(ごうがん)な話し方とは書いていなくて助かった。ただでさえ目立つ容姿なのに話し方も独特だもんなあ、セルケトは)

(その割には好奇心旺盛だったり欲望に従順だったり、妙に子供っぽいところがある。そういった性格まで分析されていたら、今の姿でも特定されていたかもしれんな)

「むっ?」


 サルガスの念話が聞こえたのか、首を捻る話題の人物。曲刀たちの念話が伝わってもロウの表層心理は伝わらないので、知らぬは彼女ばかりである。


 少年が雑念に囚われながらも観察を続けていると、カレリア公爵は衛兵たちに今後の対応や竜が都市部へ現れた際の指針を再確認した後、馬車へ乗り込み商業区方面へと消えていった。


「あの様子だと、都市の他のところでも似たような騒ぎが起こってるのかもな? しかし、白竜か……見間違えじゃなきゃ、ドレイク以外にも現れたってことか」

(何とも言えんな。本当に確認されているならこんな程度ではなく、もっと大きな騒ぎになっていそうなものだ)


(そうですね。集まった者たちの言葉の中に「街道を溶岩で破壊した白竜」とありましたが、街道を破壊したのは枯色竜(かれいろりゅう)ドレイクのはずです。新たに全く別の竜が顕れ、違う場所を破壊した可能性もありますが……。天災の如き彼らが、同じ領域で破壊行動を起こすとは考えづらいですね)


 慌ただしく去っていった馬車を眺めながら聞いた情報を再確認していくロウだが、曲刀たちは市民の言葉を話半分程度に考えているようだった。


「ん? 何でだ? ドレイクが友達呼んだのかもしれんぞ? いるかどうかは知らんけども」

(その場合は、ドレイクも件の白竜の傍にいるはずですからね。あの圧倒的な存在感を放つドレイクなら、観察していた人物が気付かず見落としてしまうということもないでしょう。となれば、異なる竜が異なる場所を破壊したという線ですが……これは薄いです。まずもって竜が人里近辺で行動すること自体が稀ですし、ドレイクが顕れたのなら同じ領域で別の竜が行動するとは思えません)


「なるほど。なら、白竜がドレイクのライバルみたいな関係で、対抗意識を燃やしてドカーンとやっちゃうのは?」

(それならば、比較しやすいようにドレイクの「炎獄(えんごく)」の近くでやるでしょうね。ボルドーからそこまで距離の遠くないあの付近で竜が大魔法を放てば、私たちやロウなら確実に感づきます)


「そういうことか。白竜が見間違いじゃなくて本当に現れたなら、ドレイクの『炎獄』の様子を見に来たって感じかね」


 自分の疑問にすらすらと答えていくギルタブに、ロウはまるで竜博士だなと感心しきりだ。


 彼が考えを纏めながら頷きつつ、近くに寄ってきていた(さそり)を足先で追い払っていると、彼らの会話を黙って聞いていたセルケトが口を開いた。


「おぬしら、そのドレイクという名の竜と知り合いのような口ぶりだが。まさかロウは、竜も従えているのか?」

「まさか。一方的に殺されかけただけだっての」

(まあ、今のお前さんなら案外いい勝負しそうな気がするぞ。ブレスも「炎獄」も前よりは余裕をもって耐えられるだろう)

「耐えたところでこっちの攻撃が効かないだろ……」

「ロウは竜とも殺り合っていたのか。いやもしや、貴様は見かけ通りの年齢ではないのか?」


 少年が竜との戦闘経験があると知ると、正に驚愕と言った面持ちで問うセルケト。彼女も竜に関して“人の一生で見ることなどまずないが運悪く出会うと間違いなく死ぬ”という、最低限の情報は持っていた。


 それだけに、外見上はまだ幼いロウが竜と遭遇し、ましてや生き延びるなど、見かけの年齢では考えられぬ所業だと彼女には感じられたのだ。


「生憎と外見通りだぞ。竜には運悪く十日くらい前に遭遇したんだよ。向こうはとんでもない魔法ぶっ放して満足したのか、どっかに飛んでいったけどな」

(遭遇というか、居たから突っ込んでいったというか)

(私たちは止めたというのに、ロウは振り切って竜の方へ行きましたからね。困ったものです)

「ふむ……我が戦った時と似たようなものか。どうにもロウは戦いを好む性分よな」


「ぐ……。一応ドレイクの時は素早く離脱するつもりだったんだけどな。実際に戦ったらそれどころじゃなかったけど。お? 城壁の警備が少なくなってきたな! さっさと帰ろう」

(((露骨に話を逸らした……)))


 旗色が悪くなれば話を変える。中島太郎(なかじまたろう)流処世術之三、強制的話題転換である。セルケトに白い目を向けられながらも、ロウは宿への帰路についたのだった。

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