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異世界を中国拳法でぶん殴る!  作者: 犬童 貞之助
第二章 工業都市ボルドー
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2-1 第一回空間魔法実証実験

今回から第2章となります。街が拠点となり登場人物が加速度的に増えていき、主人公が多くの人々と交流を持つようになります。

「第一回! 空間魔法実証実験! パチパチパチ~」


 工業都市ボルドーへ到着後。

 ムスターファ邸で用件を済ませた俺は上層区から移動し、そのまま宿を探すために南から西側の居住区を散策して回った。


 幾つか宿を見て回り趣のある石造りの宿を見つけ、そこを活動拠点として据える。


 一泊二食付き。部屋に浴室やトイレがある上等な宿だが、小銀貨五枚とお値段が高い。


 貨幣には小銅貨、ミネルヴァ銅貨、小銀貨、ミトラス銀貨、ヴリトラ金貨、サマエル大金貨がある。


 小銅貨は十枚でミネルヴァ銅貨と等価であり、そのミネルヴァ銅貨は十枚で小銀貨と等価だ。


 このように下位の硬貨十枚で上位の硬貨と交換できるようになっているが、サマエル大金貨のみ、下位の貨幣であるヴリトラ金貨百枚で等価となっている。


 最小単位の小銅貨一枚は手のひらサイズの質素なパン一つ分ほど、日本円換算でおよそ十円ほどだろうか。


 俺の故郷リマージュの「異民と森」が一泊二食付きで小銀貨二枚だったことを考えると、ここ「ピレネー山の風景」は割高に感じてしまう。


 とはいえ、魔法実験を行いたいということを考えると、ある程度の防音効果を見込める石造りの宿は魅力的だった。


 冒頭の宣言はひと月分とチップを含んだ金貨二枚を支払い、案内された個室での発言である。


(やけにやる気だな? 疲れがたまって逆に気持ちが昂ってるのか)

(今日はゆっくり休むべきだと思うのです)


 我が相棒たる存在、意志を持つ曲刀たち──サルガスとギルタブは冷静だ。しかし俺は止まらない。


「慣れないことばかりやって鬱憤(うっぷん)……とまではいかないまでも、色々溜まってるんだよ。肉体的には睡眠がほぼ要らないし、精神の安寧(あんねい)の方が重要だ。ってことで実験を強行する!」


 我ながら居丈高(いたけだか)だなと思いつつ、魔力を解放。


 まずは防音のために風の結界魔法で周囲を(おお)い、そこから空間魔法のイメージを練っていった。


◇◆◇◆


 空間。スペース。


 縦横奥行に長さを持つ「場」。(ある)いは世界の広がりそのもの。


「……」


 その空間に手を加え捻じ曲げる様を思い描く。

 自分の目の前の場と、数メートル先にあるテーブル上の場――果実類の盛られた大皿付とを、頭の中で重ね合わせるようにして繋ぎ合わせる。


 身体の周囲を漂っていた紅い魔力は俺の思念にすぐさま反応。描いたイメージを魔法として世に顕現させんと世界への干渉を開始した。


 そのまま魔力の全力解放を続けることしばし。


 調査団の面々へ披露した大氷塊を五十個は生み出せる、膨大な量の魔力を消費したとき――魔法構築が完成した時に感じる、身体の芯が響くような手応えを得た。


 空間魔法、成功である。


(──っ!?)


(うおぉッ! 小規模とはいえ、個人で転移魔法を成功させるか!)


 曲刀たちの動揺が心地よい。今の俺は非の打ちどころのないドヤ顔をしていることだろう。


「ふぃ~。空間魔法、時間が掛かるな。とりあえずのところは名前か……よし。この魔法は『転移門』とでも呼称しよう」


 自分の目の前にある空間の揺らぎ──「転移門」を眺め、思案する。


 転移門は肉眼では単なる揺らぎでしかなく実体を(とら)えづらいが、魔力に意識を向けることで容易に感知できるようだ。恐らく空間を捻じ曲げるのに膨大な魔力を使うため、その痕跡が残っているのだろう。


 そして外見上、空間同士が繋がっているようには見えない。変哲のない空間だ。

 繋がっている先の光景を見ることが出来ないということは、光はこの門を通過することは出来ても潜ることが出来ない、ということだろう。


 ……字面で見ると訳が分からんな。


「意外とすんなり成功したけど、いきなりこれに手ぇ突っ込むのは流石に危険だよなー」


 出来立てほやほやの転移門は、今までの魔法と同じくいつ消えるかは分からない。


 ただの魔法ならいつ消えても問題ない……と言えば多少語弊(ごへい)があるが、大きな問題ではない。


 しかし、空間を繋げる転移門となると事情は変わる。


 魔法の効果が失効する瞬間に転移門を利用していたとしたら、果たしてどうなるのか? 生身の人間が利用するとして、結果は三つほど考えられる。


 A: 転移門消失の際にも肉体同士の結合が優先され、肉体が保護される。


 B: 転移門消失の際に繋げられた空間同士の座標が優先され、肉体は結合を無視され割断される。


 C: 転移門消失の際に通過していた肉体が捻じ曲げられた空間へ留まり、捻じ曲げられていた時の反作用――空間が元の状態に戻ろうとする力──の影響を肉体が受けてしまう。


 Aならば手を突っ込んでいても問題はないが、残る二つならば大問題だ。


 仮にBだとすると転移門を通過していた部分と肉体とは泣き別れだ。Cの場合は繋げた空間同士がごく近い場合を除き、反作用によって無残に部位が引きちぎられるだろう。大惨事である。


(門の状態を見る限りまだ消える気配はありませんが、実験中に不慮(ふりょ)の事故が起きないとも限りません。まずは物の出し入れからすべきだと思うのです)


「だよなあ。腕が千切れましたァ! じゃ笑えないし」


 黒刀のギルタブも同意見らしく、物での実験を提案している。命を懸けた挑戦ならばともかく、単なる実験で身体を張るのは愚かしいと言えよう。


 というわけで、もう片方の曲刀である銀刀サルガスの(さや)を──。


(待て待て待てッ! 止めろ! 何しようとしてるんだ!)


 俺が鞘を持ち転移門へ突っ込もうとすると、半狂乱で制止してくるサルガス氏。


「くくッ、すまんすまん。安心しろよサルガス、ちょっとした冗句だから」


(全ッ然、ちょっとした、じゃねェから! 全く。鞘は俺の半身でもあるんだぞ)


 プリプリと怒りを表す鈍色(にびいろ)の曲刀。


 感情と連動しているのか、刀身に浮かぶ波目のような紋様がうねっていて面白い。軟体動物であるイカの体色変化のようだとでも言えばいいのだろうか……。


「しかっし他に実験で使えそうなものは……」


 部屋を見回し竿状(さおじょう)のものを探すが該当なし。(ほうき)でもあればと思ったが、室内にはないようだ。


(ロウ、無ければ魔法で用意すればいいのです)


 ──天才か? 一人でやってたら魔法なんて思いつかず、角材買ってきてたかもしれない。三人寄ればなんとやら、か。


「採用! やっぱり一人で考えるより意見出してもらった方が効率良いな」


 早速魔力を集中させ石の棒をを創り出す。途中で崩れても困るので、使用魔力量は多めだ。


 強度チェックと出来の良さを確かめるべく、創り上げた棒を軽く振り回す。


 俺の身長とあまり変わらない長さの石棒はズシリと重く、硬質。適当に創った割には出来が良く、鋼鉄製の剣とも打ち合えそうなほどだ。というより叩き折れそうな気さえする。


(急ごしらえでその出来か。お前さんの非常識さは中々慣れないぞ)

(武器としても十分使用に耐える逸品のようです)


 創った自分でも驚きの出来だが……即座にこれくらいの武器を創れるのなら、普段持ち歩いている投擲(とうてき)用のナイフも不要かもしれない。


 それはさておき、いざ実証へ。

 手前にある転移門へグイと石棒を挿入。

 数メートル先にある卓上からぬるりと突き出す棒の先端。


 ──見事に成功である。


「何とも珍妙な光景だ」


 卓上の転移門から覗いている棒は、持ち手側から見ると断面が丸見えである。生物だったらホラーだぜ、コレ。


(断面が透過できていますね。物の内部構造を知る用途でも使えそうなのです)


 あるいは医療にも応用できるか――と考えたが、所詮は素人(しろうと)。良い状態悪い状態の判断が出来ないから難しいだろう。医療機器のCTスキャンをより高性能にしたようなものだが、使い手の知識が無ければ持ち腐れである。


 逸れた思考を戻し実験再開。もう一本石棒を創り、転移門の逆側からも突き入れてみる。


 すると、卓上の転移門からやおら棒の頭がニュッと突き出す。最初に突き出した棒とは丁度対称になる形だ。


(おぉ。反対側でも入り口として機能しているみたいだな)


 これなら自分は転移門を利用し攻撃しつつ、相手の攻撃は転移門の逆側を利用し攻撃の無効化、なんてことも可能かもしれない。


「転移門は盾としても使えそうだけど。その場から動かせないことと発動するまでに時間が掛かるのがちょっとなー。時間に関しては魔力の技術を磨くことで解決できそうだけども」


 そうやって分かったことをまとめていると、転移門を構成する魔力が乱れ始めた。


「お? ようやくか。意外と時間が掛かったな」


 乱れた魔力が消失し始め、転移門が今にもその姿を消そうとしている。

 果たして突き入れた石棒の運命や如何(いか)に?


 転移門が消え、石棒は──健在だった。


「むう。パターンAか」


 最も安全ではあるが、同時に面白みのない結果でもある。


(石棒には何かしらの影響を受けた痕跡がないようですね。これならば、転移門は移動、輸送手段として非常に有用且つ安全だと言えるのです)


 黒刀の言葉に頷いていると、俺の呟きを拾った銀刀が興味本位といった風に問いかけてきた。


(パターンAねえ。お前さんが言ってたBってやつだと、どういう結果だったんだ?)


「Bなら空間を繋いだ地点と起点とで物体が別れ断面が切断されて、Cなら歪んだ空間の元に戻る力で物体が引き千切られるって感じだな」


(怖ッ!?)

「それならそれで攻撃に使えるとも思ってたんだけど、当たり(さわ)りのない結果だったな」


 説明しつつ、今度は石棒に魔力を通す。折角創り出したのだから色々試してみなければ勿体ない。片方は壁に立てかけ、石棒の一つに意識と魔力を集中させる。


 金属を精錬するイメージと石材を切り出すイメージを掛け合わせ、より硬く鋭い形状を思い描きながら魔法を構築。指を這わせて()でつけるように棒を研いでいく。


 ごりごりと石棒を精練研磨すること、おおよそ数分。


 大振りな刃を持つ石の大太刀が完成した。


「ほう。我ながら、これは中々……」

((おぉ~))


 刃渡りは一メートルほど。肉厚且つ高密度の刀身は、魔力を纏い異様なまでの硬度を獲得している。


 精練していく途中、俺の腕が届かなくなりそうだったため反りを加えたが。結果として優美な曲線を描き、図らずも芸術品のような出来となった。


 が、しかし──。


「んー、やっぱり素人に武器製作は難しいか」


 二、三度袈裟斬り斬り返しと試してみたが、非常に振りづらい。


 数度振っただけで分かるほどなら、実用に耐える品ではないだろう。


 大太刀そのものが扱いづらいというのもあるが……それ以上に重心が刃の根元とも中腹ともつかない位置にあり、取り回しにくい出来となっている。単純な凶器は創れても、武器の製作となると難しいようだ。


(パッと見はいい出来に見えたが、何か問題があったか?)


「重心が変な位置にあって扱いづらい。武器としちゃ失敗作だな」


 加えて、この大太刀は高密度に圧縮されているため、石材というより金属塊並に重いのだ。小麦粉の大袋くらいの重量はあるだろうか? 武器としてはかなりの重量だ。売り物にはなるまい。


(なるほど。ロウでも魔法で武器を、となると難しいのですね)

「だなー。今後知識をつければあるいは、ってやつだ」


 世間話もそこそこに、再び空間魔法の実験と検証に打ち込む。


 転移魔法が案外すんなりと成功した──と言っても魔力の消費量は莫大なものだったが──ので、今度は異空間魔法──いわゆる空間収納、四次元ポ〇ットに挑戦することにした。


 これが実用レベルで扱えたら、いつも背負っている巨大なバックパックともおさらばである。一応周囲の目を(あざむ)くために、最低限の背嚢(はいのう)は必要となりそうだが。


 方針を定めたところで集中力を高め、想像力を羽ばたかせる。


 今回はイ〇バ物置程度──十立方メートルくらいの容量に挑戦だ。


 転移門での魔力の消費量は予想外に大きかったため、異空間魔法も消費量が膨大なものとなる可能性がある。まずは成功第一を主とし、成功したらそこから空間を広げていけばよかろう。


「──ん~」


 ──そんな考えのもと異空間魔法を実行し魔力を絞られ続けること、既に三十分。


 一向に実現しない。


(おいおい、大丈夫か? もう相当魔力を使ってるはずだが)

(「転移門」で言えば三十回分、ロウが先ほど作った石棒で換算すれば十数万本分の魔力を消費していますね。……この国中の騎士や魔術師を集めても、とても(まかな)いきれない量を消耗しているはずです)


「よくそんな詳細な量が分かるなー。まあ、余力はあるぞ。大体総量の五分の一は減ったか──お? ようやく成功か」


 問答をしていると、やっとこさっとこ魔法が成功した手応えが感じられた。目の前に白一色の窓のようなものが浮かんでいるし、これが異空間なのだろう。


「真っ白だな。中に入ってみたいけど……転移魔法で実験が空間を捻じ曲げたのとは違って、別の空間との接続なんだよな。今度こそ消滅時に身体が真っ二つになりかねん」


(異空間か。神域や魔界に繋がってたりしないよな?)

(空間に魔力の流れが認められませんから、少なくとも魔界ではないのです)


「なるほど、別の空間に繋がる可能性もあったのか」


 適当に実験繰り返してきたけど……迂闊(うかつ)なことやってたら不法投棄に怒った神が「こんのぉ罰当たりめが! 神の裁きじゃ!」なんて可能性もあった、のか? シュールすぎるぜ。


「この異空間が俺が創った空間だとしたら俺が神みたいなもんだし、それはないだろう。魔界についてはそのうち聞きたいけど、今はいいや。とりあえず、この魔法の名前は『異空間』に決定!」


 安直だが分かりやすさを重視したい。俺は実直な男なのだ。


 何はともあれ異空間の調査。

 一番槍は石の大太刀君である。それゆけー。


「おぉぅ。普通に入ったな。反対側は……『転移門』と同じでどちらも入り口か」


 ズブズブと白い窓に呑まれていく大太刀と石棒。何とも言えない奇妙な絵面だ。


 そのまま放り込んでおくか──と考えたところで、石棒の先端が何かにぶつかった様な感触が伝わる。


「ありゃ、空間の限界か? あんだけ魔力注ぎ込んだのに、意外と狭いのな」


 反対側の大太刀も同じように壁へと接触した。そのまま上下左右へと動かし形状を調べると、(おおむ)ね想像通りの、物置型の空間であることが確かめられた。


(こと)(ほか)狭いようですね。尋常ならざる量の魔力を吸い取って発現した魔法なので、もっと広々とした空間へ繋がるものかと思ったのですが)


 同意する様にギルタブも続く。「転移門」の魔力消費量に比べても明らかに多かったが……。


 疑問符を浮かべている内に、「異空間」を構成する魔力に僅かな揺らぎが現れた。あまり悠長なことは言っていられない。


「消えてしまう前に果物や石棒を放り込んで、物体に対する影響の確認だな」


 ポイポイポ~イと白い窓口へ食べ物や石棒を放り込んでいく。

 成功すれば燃費のクッソ悪い物置、失敗したら魔力馬鹿食いの実験設備。準備に時間が掛からなければ燃費度外視でもいいんだけども。


 今回も「転移門」と同様に、新たに用意した石棒を使用して魔法消失時の物体への影響を調べることにした。


「転移門のときとは状況が違うが、どうなるか」


(別の空間に繋がってるわけだからなあ。断面がスパッと別れるんじゃないかね)

(魔法の効果が消失するのですから、入り口が消えるだけだと考えます。空間を結合させた転移門でも物体間の結合が優先されましたし、今回も同様だと思うのです)


 曲刀二人で意見が分かれたが、ギルタブの意見にのっかる所存である。


 考えてみれば、一番最初に爆発魔法を使った時から今に至るまで、自分の魔法で致命的な傷を負ったことはない。


 ひょっとすると、魔法が発現した際に糧とした魔力に対しては、干渉力が弱まっているのかもしれない──と、ふと思った。


 それなら転移門や異空間で物体が保持されることにも納得だな──と考えていたところで、異空間へと繋ぐ白い窓が消失する。


 石棒は今度も無事である。次回試す時は俺の魔力が宿っていないモノで試すか?


(おお、無事か。空間魔法も存外安全だな)

(これなら腕を直接入れて調べてみても大丈夫かもしれませんね)


 黒刀は簡単に言ってくれるが、流石にそれはまだ抵抗がある。まだ十分な試行回数とは言えないし、結果がランダムという可能性も無きにしも(あら)ず、だ。


 今は結果を積み重ねていかねばなるまい。そんな思いを乗せつつ再び「異空間」を創るべく集中力を高めていく。


 空間魔法構築を随分と繰り返し、流石に集中力が切れてきたところだ。そろそろ一度中断するか──と考えたのも束の間、魔法が完了した際に感じる手応えあり。


「お?」


 なんと、「転移門」の魔法と同程度の魔力消費量で異空間へと繋がったのである。僅か一分ほどの出来事、これは驚きだ。


 魔力操作技術が上達したというには余りにも急激な変化。実験の中で制御力は上がっている実感があるが、いきなり三十分の一の時間とはなるまい。


(──おお!? 「異空間」が成功したのか! 今度は随分早いな)


(先ほどの異空間へと繋ぎなおすだけだから消費量が少なかった、ということでしょうか?)


 曲刀たちと同様の疑問を頭に浮かべながらも異空間内部を観察。白い入り口から覗く限りにおいて、投げ入れた果物や石棒には変化が見られない。


「繋ぎなおすだけだから消費量が少なかった、か。これなら物置として実用に十分耐える」


 うんうんと頷きつつも内心首を傾げる。最初に「異空間」を使った際も別の空間へと繋いだのではないのか?


 俺の目的に沿う異空間を探すのに膨大な魔力が必要だったのか、それとも一から異空間を創り上げたからこその消費量だったのか。後者ならば魔族どころか、もはや神の業に等しい。


 ──これはアレだな。考えると不味いやつ。

 面白そうだけど、まだそんな域に踏み込む度胸はない。


 思考を中断し、異空間へと腕を突っ込み果物や石棒を回収する。いざ検分!


(見たところ、入れる前と比べても変化は見受けられないのです)


「そうみたいだなあ。今回は経過時間が短くて変化する間もなかったって可能性があるし、また放り込んでおくか」


 意気込んで精査したが、外観にも魔力的にも別段変化が見られない。何とも肩透かしである。


「ふぅ」


 数時間ぶっ続けで魔力を解放したからか、流石に倦怠感(けんたいかん)がある。注意が散漫な状態での実験など危険以外の何物でもないし、ここは中断が賢明だ。


 気が付けば黄昏時(たそがれどき)。夕飯を食べて一息入れるとしよう。

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