第4章時点の人物紹介
タイトル通り人物紹介となります。とりあえずのところ主人公周辺の人物に留めました。
余談となりますが、読者様のご意見が無ければ今回の話は生まれませんでした。ご意見ご感想の投稿、ありがとうございました。
人物紹介
─ 主人公周辺
・ロウ:
本編主人公の褐色少年兼転生者、兼魔神。十歳。
この世界に転生する前は日本の大学生であり、幼少期より剣道や太極拳、八極拳と、武術の鍛錬に励んでいた過去がある。
前世の名前は中島太郎。太極拳の達人・陳發科の流れを汲む陳式太極拳と、八極拳の達人・李書文の流れを汲む武壇八極拳、その亜流を修めている。
温厚な性格ながら自身にとって都合の悪い話題となるとすぐに話を逸らしにかかり、何かにつけて責任を逃れようとする悪癖を持つ。そのため、無責任な言動をぶち上げ周囲から白い目で見られることが多々ある。
性欲に正直。しかしいざとなるとヘタレる。
・セルケト:
ロウが保護している力ある魔物。生後数か月。かつては少年と殺し合った間柄だが、戦いの果てに行動を共にするようになった。
青みがかった紫色の長髪に金色のメッシュが入る独特な髪色をしており、感情が昂るとこの金髪部分が輝くという奇妙な性質を持つ。
普段は美しい女性の姿をとっているが、本来の姿は蠍のような外骨格を持つ下半身に人の上半身、二対四本の腕を持つ異形である。
そんな魔物ながら、性格は穏和で純粋。豊かな感情表現で周囲を和ませることが多い。
迷宮の力を吸い取り生まれ落ちたという特殊な生まれであるため人の武術に造詣があり、剣術に槍術、弓術に理解がある。普段使いの武器は自身の外骨格を利用して創った、馬上槍のような円錐状の大槍。
・ウィルム:
ロウから大陸拳法を学んでいる竜。年齢五百歳ほど。かつては少年と殺し合った間柄だが、負けず嫌いを拗らせて行動を共にするようになった。
全長が二十メートルほどもある巨竜で、「青玉竜」という名を世に知らしめる若くとも様々な伝説を持つ竜。
中でも、人間族の王が彼女の貯め込んでいた財宝を奪い取り、人如きに自身の宝を奪われたと怒り狂った彼女が王を彼の統治する都ごと氷河に閉じ込めてしまったという伝説は、この青玉竜の苛烈な性質を示す端的な例として広く知られている。
前項のセルケト同様に普段は美しい女性の姿をとっていて、竜状態の鱗と同色のサファイアブルーな長髪をうねらせている。
全ての竜に共通する特徴として、燃えるようなガーネットの瞳を持つ。この瞳は「竜眼」と呼ばれ、あらゆる魔力の流れを感知し隠蔽の一切を見破る。
・サルガス:
ロウの愛用する曲刀にして少年の相棒。年齢不詳。極めて珍しい自由意志を持つ武器であり、魔力を用いて会話──念話を行うこともできる。
名のある魔族によって打たれた逸品ながら、価値を知らない者たちの手を転々としロウの手元へ納まることとなった。
積層構造が美しい鈍色の刀身と反りの浅い形状が特徴。刃渡りはそれなりに長く、八十センチメートルほど。持ち手も長めで、片手のみならず日本刀のように両手で振るうことも想定されている。
性別は男性であり、念話の声はいかにも軽そうな男といった雰囲気。
持ち主の行動に対し突っ込みを入れたり皮肉な言動をとることが多いが、ここぞという時には的確な助言を行う、オンオフがしっかりしている性格。そのため、少年も彼の言葉を採用することが多い。
ロウが最も信頼している人物(無機物)。
・ギルタブ:
ロウの愛用する曲刀にして少年の相棒。年齢不詳。銀刀サルガス同様に意志ある武器であり、彼同様に念話を行うことができる。
サルガスとは全く同時に打たれた兄妹のような関係にあり、二振り一セットで様々な持ち主の手を渡り歩いた。
光を呑むような漆黒の刀身と銀色の血抜き溝が特徴的で、反りがやや深く刃渡りは七十センチメートルほど。
銀刀とは異なり持ち手が短く完全に片手持ち用ながら、恐ろしいまでの切れ味と硬さを誇る。
反面、硬すぎる刀身が故に刃こぼれしやすく、頻繁にロウの魔力を使って自己修復を行っている。
性別は女性であり、念話では涼やかな声音で聞く者を魅了する。
魔族由来の豊富な知識で少年を補佐するが、少年への重すぎる愛が故に周囲への嫉妬で暴走するきらいがある。
・コルク、シアン、テラコッタ、サルビア:
ロウが生み出した魔神の眷属。生後数日~数か月。創造主の魔力や知識を引き継いでいて、大陸拳法や剣技も自在に操ることができる。
いずれも通常時は人型に擬態して活動しているが、本来の姿は人ならぬ異形。長男コルクは流体岩石、次女シアンは大質量の水。次男テラコッタは溶岩流体で、三女サルビアに至っては金属球体である。
名前の挙がっていない長女は工業都市に滞在しており、兄妹たちとは別の任に就いていてロウの傍には控えていない。
人化中は完全に人を模しているが、模しているのは外見だけで内臓の一切を持たないため言葉を発することはできない。そのため、彼らの他者とのコミュニケーションは身振り手振りが主となる。
性格は多様で、長男は日和見主義、次女は怠惰で、次男は理屈っぽく、三女は活発。全体の傾向として、創造主の性格の一部分を強調したようなものとなっている。
活動するための活力は創造主の魔力だが、食料品や自身の属性と同様の物質を取り込むことで、己の魔力に変換することもできる。ただし変換効率は良くないため、やはり創造主の魔力をねだることが多い。
─ サン・サヴァン魔導国周辺
・ヤームル:
魔導国から隣のリーヨン公国まで幅広く活動する豪商、ムスターファの孫娘。年齢十一歳。ロウから窮地を何度も救われたことで彼女の祖父が少年を重用し、孫娘の護衛兼教師とした。以降は友人関係となる。
幼くとも高い身体能力と魔力を有しており、同年代どころか大人をも圧倒する能力を持つ。
中でも魔術は特に秀でており、通常複数人で構築を行う高度な魔術──儀式魔術を、単独で構築する技量、魔力を有する。これは魔導国内でも片手で数えるほどしか可能なものがいない、極めて高度な技術である。
この技術は彼女の所属する学術研究機関、アレクサンドリア魔術大学で身につけたもので、長期休業中以外はこの大学で勉学研究に明け暮れるのが彼女の日常となる。
栗色の長髪をゆったりとした三つ編みで後ろに纏め、年齢に似合わぬ洗練された気品を醸す彼女は、学内において非常に多くのファンを持つ。
しかし、当人は人付き合いを選ぶ傾向があるため、交友関係がとても狭い。
・アイラ:
大学で入学試験を受けるために隣国から魔導国へとやってきた少女。十歳。ヤームルの数少ない友人の一人であり、扱えるものが多くない精霊魔法の使い手。
ヤームル同様高い身体能力と魔力を持っているが、彼女とは異なり魔術の知識は一切持たない。
人族の暖炉を転々としていた変わり者の精霊に魔力を分け与え、その魔力の濃さに驚いた精霊が契約を頼み込んできて以来、彼女は精霊魔法を使えるようになった。
決まった形式でしか出力できない魔術と異なり、精霊魔法は使役者の思うがままに出力することが可能である。
魔術大学での入学試験当日、溢れんばかりの魔力を使い直径十メートル以上もの特大火球を創り上げた彼女は、試験官の度肝を抜きつつもその場で合格を言い渡された。
以降は大学の学生寮に入寮し、ヤームルや後述する友人たちと共に大学へ通うこととなる。
・カルラ:
大学で入学試験を受けるため魔導国の地方都市からやってきた少女。十一歳。ヤームルやアイラの友人であり、よく行動を共にしている。
森人族と猫人族の混血であり、浅葱色の髪の毛の中から白い耳が直立し、ほっそりとした臀部からは白く細い尻尾が生える。
人間族よりも魔力的素養に優れる森人族、鋭敏な感覚を持つ猫人族の血を持つ彼女は、両者の特性を色濃く受け継ぎ魔力の流れを見通す「魔眼」を開眼している。
この「魔眼」を持っていたがために身勝手な傭兵団から攫われてしまうことになったが、その傭兵団もロウの手によって壊滅させられ、彼女も解放されることとなった。以降は少年のことを慕い、彼の近くにいたいがために大学へ行くことを決意した。
大学図書館内で特別な魔力を持つ蔵書を見つけ出すという入学試験を、僅か十数分という短い時間でパスした彼女は、友人のアイラ同様寮へと入り、晴れて大学の学生となった。
・フュン、アイシャ:
ヤームルの祖父、豪商ムスターファに仕える使用人。銀色の髪をシニヨン風に纏めているフュンは二十歳、金の長髪をポニーテールにしているアイシャは二十二歳。
普段はヤームルの身の回りの世話を行っているが、最近は彼女に命じられ大学入寮で忙しいアイラやカルラの世話をしている。
いずれも幼少期にムスターファから保護された過去があり、成人してからは恩に報いるため彼に仕えるようになった。
両者ともに優れた素養を持っており、フュンは精霊使役者として、アイシャは独特の徒手空拳による戦闘術──空手の使い手として、高位冒険者に近い実力を持っている。
彼女たちの休日の行動はフュンが料理研究を行うために買い物へ出かけるのに対し、アイシャは腕自慢の力試しや野良の賭け試合を求めて彷徨うというもの。
目的は対照的ながらも街中の散策という点では一致しているため、二人は街並みや店の雰囲気等の話で盛り上がることが多い。
また年齢が近い同性ということもあり、両者の仲は非常に良い。
・エスリウ・ジラール:
象牙色の長髪が高貴な印象を与える美しい少女。事実高貴な身分たる貴族であり、公爵家の令嬢である。十五歳。
ただし実体は魔神の娘であり、三眼四手で筋骨隆々の魔神。
魔術や精霊魔法に比べ非常に魔力効率の悪い技法、魔法を使いこなす人ならざる者。極めて高い身体能力に様々な効果を持つ「魔眼」、心臓が潰れても再生可能なほどの治癒能力を持つ。
得意とする魔法は火属性。彼女が全力を振るえば、四方数百メートルに存在する全てが炭化し、数秒で崩れ去る。
ロウとは殺し合った間柄だが、発端が勘違いだったと気づいてからは平謝りし許しを請うた過去がある。
絶大な力を持つ彼女だが、両親の意向に従い力を抑え人として振舞い生活している。
その一環で魔術大学に通っており、ヤームルは彼女にとっての数少ない心許せる友人の一人である。
・マルト:
エスリウの母親、魔神バロールに仕える樹木の上位精霊、ドリアード。普段は彼女の娘エスリウの従者として傍に控えている。年齢千歳以上。
植物神アムルタートによって生み出された彼女は精霊でありながら眷属のようでもあり、通常の精霊に比べ強力な精霊魔法を行使することができる。
精霊として長い年月を生きているため剣技や体術にも造詣があり、高位冒険者を凌ぐ技量を誇る。
エスリウ同様ロウとは殺し合った間柄だが、主と同じく平謝りした過去がある。
ウェーブのかかった若葉色の長髪を持つ美女だが、真なる姿は手先足先が樹木の枝や根となる異形の姿。
・レルヒ、イサラ:
後述する魔術大学教授アインハルトを父に持つ少年と女性。いずれも父親同様の灰色髪で、レルヒは十一歳、イサラは十八歳。
姉のイサラはロウの宿泊する「竜の泥酔亭」の従業員で、弟のレルヒは魔術大学へ通う学生。
過去にロウからトラブルを解決してもらったことのあるレルヒは、彼から大陸拳法の技術を少しだけ学んでいる。
家族仲は良好で、数年前まで家族で浴室に入り身体を洗い合う程だった。
しかし、胸が大きく成長してしまったイサラが父親や弟に身体を晒すことに羞恥心を感じ始めたため、この習慣はなくなってしまった。
・アインハルト、ヘレナ・フラウィア:
魔術大学教授とその助手。アインハルトは二人の子を持つ父親であり四十一歳、ヘレナは魔導国の建国に関わった名家・フラウィア家の才媛で二十五歳。
魔術大学で研究を行いつつ教鞭をとるアインハルトは、高い実力に裏打ちされた魔術構築理論、そして気さくな人柄や甘い容姿も相まって、教授陣では屈指の人望を誇る。指導力に惹かれたのか容姿に惹かれたのかは定かならないが、ヤームルも彼の講義を受講しその研究に携わっている。
ヘレナはそのアインハルトの助手であり、彼の構築する理論を全て理解した上で別の持論を持っている、彼の助手の中でも飛び抜けて優秀な女性である。
そんな彼らは研究のために冒険者組合へ依頼を出し、大陸北部の大砂漠へ向かう予定を立てている。この依頼を受けたロウは、彼らと共に大砂漠へ向かうことになるが……。
・アシエラ、アムール:
この世界では珍しい黒髪の姉妹。その正体は百年以上前に滅んだ王国の王族であり、国を滅ぼした吸血鬼によって隷属させられた吸血鬼である。姉妹のどちらも百歳以上。
吸血鬼とは魔物化した血によって憑りつかれた生き物のことであり、血の魔力によって強大な力や老いることの無い肉体を得る代わりに、血の命ずるままに血を求め啜らなければならない存在である。
吸血鬼として長い時を生きる中、姉のアシエラは戦いの技術を磨くことで人ならざる力を生きる糧とし、妹のアムールは人ならざる長い時間を使って金属工芸や木工細工などを学び、それを糧とした。
容姿が老いないため定期的に済む場所を変えてきた姉妹は、流浪の末にここ魔導国に辿り着く。二人は身につけた技術と処世術を生かして瞬く間に周囲へ溶け込み、数年経つ頃にはどちらも界隈で有名となっていた。
その結果ロウと出会うことになり、少年から正体を看破される事態となったが、反面彼の血を飲むことで吸血鬼として上位の存在、中位吸血鬼へと成長することにもなる。
より強靭な身体や強い魔力を得た彼女たちは、少年の正体を訝しみながらも自分たちの生活へと戻り、現在はアシエラが受けた高額依頼に向けて準備を行い英気を養っている。
次章の第5章が終わったあたりで、別の地域にいる人物たちへ焦点を当てたいと思います。