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クリスタルタワーの魔将軍 ~最凶の魔物の復讐劇~  作者: 鹿竜天世
第三章 主なき番人と世界の守護者
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ターニャ

 分厚く、重厚な扉。


 その向こうから現れたのは、いつぞやの天使と、自分ほど大きな体躯を持つ一人の女性だった。


「やー、また会ったね、ヘイト」


 ひらひらと天井付近を舞いながら、天使はそう言った。


「ターニャ。久しぶりだな」


 上を見上げてヘイトはそう返した。


「あ、そっか。あの時はターニャって名乗ってたんだね。ごめんごめん。キャルルっていうんだ、あたしのホントの名前」


「そうか」


 扉の奥から調停者を連れて現れたのが彼女だとして、今さら何も驚くまい。


 あの天使の正体が知れて、むしろ気が晴れたと言ってもいい。


「その様子だと、随分と余裕って感じだねぇ」


 キャルルがニヤリと笑う。


 何か勝算でもあるのだろうか。それとも、連れてきた仲間に余程の自信があるか。


「余裕・・・、というほどでもない。それより、そっちの名前を聞きたい」


 大剣を携えた女性は一歩前に踏み出すと、丁寧にお辞儀をした。


「グラン・イージスといいます。調停者にして、その頂に立つ者です」


 彼女は自己紹介をした後、小さく「肩書きは、ですが」と呟いた。


「あんたがグラン・・・」


「あなたが薔薇の魔将軍、ヘイトですね」


 左腕のシルバは、二人の様子を黙って見守っている。


「あんたとは話したいことがたくさんある。・・・そうだな、よければ、茶でもどうだ」


「えっ・・・?」


 予想外の展開に面食らったといった表情のグラン。


「グーニャ・・・じゃなくてキャルルも、いつかのように一緒に茶を――」


「っざけんじゃねぇよッ!!」


 和みかけた雰囲気をキャルルは一言だけでぶち壊した。


「ここまで来て、誰がのんびり茶ぁしばくんだよ! 頭わいてんのか!? それでゆっくり話し合いでもして、手を取り合って生きていきましょうってか!? 今さらおせぇんだよ! 今までどんだけの血が流れたと思ってんだ! お前のせいで全部メチャクチャなんだよ! 自覚あんのかよ!?」


「キャルル――」


「すっこんでろ、クソが!」


 諫めようとしたグランも即座に押し黙ってしまった。


 正直、キャルルの人の変わりようには驚いた。


 あれが本来の姿なのかもしれないが、あのターニャ(・・・・)ときとは雲泥の差だ。


 人とはあそこまで猫を被れるものなのだろうか。疑心暗鬼にさえなってしまう。


「話し合う気はない、と・・・」


「ったりめぇだろ!」


 噛みつきそうな勢いで答えるキャルル。


「ちょっと待ってください・・・!」


 グランはそう言うが、キャルルから鋭い視線を向けられて口をつぐんだ。


「ヘイト様・・・」


 シルバが声を潜めて言う。


「ああ、シルバ。厄介なのはキャルルだ。あれを黙らせればグランとは話す場を設けれそうだが・・・」


「かといって、キャルルさんを倒してしまっていいものでしょうか・・・。グランさんの反感を買わなければいいのですけど・・・」


「確かに、いい気はしないだろうな」


 あんな物言いをするとはいえど、曲がりなりにもここまで連れ添ってきた仲間だろう。


 ましてや調停者の長ともあろう者が、キャルルの一言で黙り込んでしまうのだ。


 何か裏があると思うのが道理かもしれない。


「さあ、ほら、やっちまえよ、グラン! 裏切ったりしたら承知しねぇからな!」


 キャルルに触発されて、グランはおずおずと剣を構えた。


「・・・すみません、ヘイトさん。私たちは戦わなければならない定めのようです」


 ヘイトは静かにグランを見据えた。

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