何万人目かの冒険者
「やっと着いたねー!」
両手を上げてクルクルと回るキャルルを尻目に、グランは目の前にそびえ立つ水晶の塔を仰いだ。
地上百階の建造物は遠くから見ると美しいが、近くで目の当たりにすると自分の存在のちっぽけさを思い知らされるような迫力がある。
「さ、いこいこー!」
開け放たれた門を意気揚々とくぐるキャルル。
誰でも歓迎、とでもいわんばかりだ。
後に続いて中へ入ったグランは、その光景に目を奪われた。
壁も床も天井も、一面が水晶でできている。それも、人の手が入ったような形跡はない。自然のまま、荒々しく突き出した塊もあれば、無数の粒が集まったような箇所もあり、それぞれが異なる光を反射している。
「綺麗・・・」
思わず呟くグラン。
これがフェガリの生み出した城・・・。
その壁面に手を振れたグランは、かつて生きていた同胞のことを思い出していた。
「ちょっと、なに泣いてんの?」
キャルルに言われて初めて気が付いた。
――この涙は、なに?
私は、何に泣いているの?
「感傷に浸ってる場合じゃないっての! それとも、情が移っちゃったわけ? あんなののどこに感情移入する余地があるってんだよ!」
「落ち着いてください、キャルル」
取り乱すキャルルをなだめるグラン。
「さっさと行くよ。途中の魔物で往生したら許さないんだからね!」
「お、往生、ですか・・・。わかりました。気を付けます」
そうして二人は、二階へと続く階段へと足を踏み入れたのだった。




