光の中へ
無数の光の粒子の中に、俺はいた。
紺碧の空に浮かぶ星々の間を漂っているかのようだ。
グラウス・クーパー。
かつて冒険者界隈では向かうところ敵なしと恐れられた最強パーティーのリーダーは、もう見る影もない。
――最初にこの世界にやってきたのは、興味本位だった。
誰も踏み入れたことのない未知の世界を開拓できる…。そんな触れ込みに目を付けて、同行してくれそうな人間を集め、パーティーを編成した。
元の世界とは違い、ここでは冒険者ならば死んでも生き返る。どういうメカニズムかは知らないが、俺たちはそれをいいことに、危険を顧みず戦いを挑むようになっていった。
やがて、命知らずの冒険者パーティーとして、他の冒険者から注目を浴びるようになった。
その頃はまだ良かった。自分たちが好きでやってきたことを、周囲が見てくれるようになっただけだ。おかげで、行動範囲がぐんと広がったし、いろんな噂や知識を仕入れられるようになった。
あるとき、一人の冒険者の依頼を受けて、俺たちは洞窟に棲む魔物と戦うことになった。
死んでも生き返る…。そんな余裕からか、俺たちは何度となく全滅を繰り返した。
…それほどまでに、相手は強敵だった。
あの時の俺たちの実力では、敵わないような相手だったのだ。
そして、実感した。
俺たちに向けられた周囲の視線は、同情とも哀れみとも形容し難いものだった。
「まあ、そんなこともあるさ…」
「また次があるじゃない」
少し困ったような表情で、一言そう言っては足早に立ち去っていく者たちに、俺は苛立たしさを覚えた。
彼らは、俺たちがまだ無名の頃から、ずっと応援してくれていたというのに。
さらに腹立たしかったのは、自分たちを信じて応援してくれていた人々の期待に応えられなかった、自分の実力だった。
…力が足りない。そう感じた。
そして、その日を境に俺たちのパーティーは力を求めて彷徨う実力至上主義の集団に成り下がってしまった。
旅することに楽しさなど感じない。新天地を目指すのは、新たな力を求めて。それだけだ。
人々の期待を裏切ることはなくなった。代わりに、俺たちは周りから畏怖の念を抱かれるようになった。
昔のように頼られることもなくなり、ただ最強の冒険者パーティーという肩書だけが残った。
…そんな結末、俺たちの中の誰も望んじゃいなかった。
でも後戻りはできない。以前のように戻りたいと思っても、もう手遅れだ。
だから、賭けに出た。
打倒、魔神。
いつからか知らないが、超高層タワーを造り上げ、そこで魔神として君臨する者が現れた。そいつは強力な魔物を生み出し、挑んでくる冒険者を片っ端から食い物にしているのだという。
それさえ倒せば――。
俺たちの間には、そんな考えが芽生え始めていた…。
その結果が、これか…?
結局、俺は何もできないままじゃないか…。
いや、でも、これでいいのか…?
楽しかったあの頃に戻れないのなら、せめて永遠に苦しみから解放されるのも悪くないか…。
光の粒子の中に、クーパーは人影を見た。
見覚えのあるシルエットだ。
「エンクウ、シェイディ…。ああ、お前たち、ここにいたのか…」
手を伸ばし、二人の手を取る。その奥には、もう二人の仲間の姿もあった。
「ずっと探してたんだぞ…。もう、どこにも行くな…」
クーパーは仲間たちに導かれるようにして、柔らかな光の中へと吸い込まれていった。




