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クリスタルタワーの魔将軍 ~最凶の魔物の復讐劇~  作者: 鹿竜天世
第二章 この世に神のいるうちは…
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決着

 シルバがワーズの本体を探している間に、襲い来る三人の敵を同時に相手していたヘイトは、自分の読みが信憑性を帯びてきたことに確信を得つつあった。


 ――これを利用すれば、一気に畳みかけることができる。ついでにあの複製野郎の主も消し去って、戦いに終止符を打つ。


「見つけました!」


 無数のシルバたちが一塊に集合しながら口々に声を上げた。


「城の外――町の中にいます!」


 最後の一匹を取り込んだシルバは、ワーズの本体がいる方角を指差した。


「よし」


 ヘイトは左腕の断面をシルバの体につけて装着し、軽く飛び上がって城を囲む城壁の上に飛び乗った。


 シルバと繋がっているからか、彼女から目的地のイメージが伝わってくる。


 人気のない町中を走り抜け、ヘイトは路地裏で細剣を手に佇むワーズを発見した。


「見つかったか」


 見た目は複製と遜色ない。そっくりそのままだ。


 ヘイトは逃げも隠れもしようとしないワーズ目掛けて、剣を振り下ろした。


 見るも無残な姿となったワーズがその場に崩れ落ちる。


「一人目だ…」


 そう言ったのも束の間、どこからか声が聞こえてきた。


「終わらせた気でいるようだが、残念だったな」


 ワーズの声だ。


「なに?」


 振り返るも、そこに彼の姿はない。


「本当の俺がどこにいるかなんて、誰も知らない。知る由もない」


 ――ハメられた!?


「落石ッ!!」


 頭上から聞こえた声とともに、巨大な岩石が降ってきた。


 あの女魔法使いか…!


 剣を突き上げて岩石を粉砕すると、瓦礫の間から今度はアンクランが現れる。


「終わりにしましょう!」


 彼は突き上げられた剣を、身を翻して避けると、空を仰ぐヘイトの喉元に剣を突き立てた。


 ガキンッと金属音がして、かろうじてシルバの体が間に割って入る。


「これでもダメですか…」


 アンクランは呟いた。


 ヘイトはシルバに思念を流してアンクランの顔面を掴み、屋根上に立っていたサラに焦点を合わせる。


 やはり面倒な方から殺るか…。


 邪剣を振りかぶり、ヘイトは屋根上のサラに投げつけた。


 ブーメランのように回転しながら飛んで行った剣を、サラは分厚い氷の壁で受け止めた。


 ――シルバ、少し我慢してくれ。


 ヘイトは、シルバに思念を流し続ける。


 銀色の流体に包まれたアンクランの頭が、ギシギシと悲鳴を上げる。


 果実が潰れるような音とともに、アンクランの首筋を血が滴り落ちた。


 彼を解放するも、その体は二度と動くことはない。


「すまない、シルバ」


「いえ、別に、かまいませんから…」


 シルバは狼狽していたが、そう返してくれた。


 続けざまに、ヘイトは邪剣に右手をかざした。


 氷に突き刺さった剣の柄からヘイトの右手にかけて、空中に暗い紫色をした煙のような筋が漂い始める。


「その剣は、邪剣ケラプディスだ。聖剣グラントと並ぶ業物。氷の壁が通用すると思うな」


 まるで遠隔操作されているかのように、剣が氷を引き裂き始める。


 あの女は魔法の腕こそ一流だが、近接戦闘となると果たしてどうだろうか。


「く、くあぁぁっ!!」


 氷壁の向こうで、ヒト型をしたシルエットが大剣に押し潰されていく。


 苦悶の叫び声をあげながら彼女は倒れ、後には返り血を浴びた氷だけが残された。


「片付いたか…」


 半ば肩で息をしながらヘイトは言った。


「さて、残るは――」


 言い終わるが早いか、ワーズが目の前に現れた。


「アンクランに、サラまで…。貴様、ただで済むと思うな」


 細剣をこちらに突き付けて鋭い眼差しを向けるワーズ。


「どこからどこまでが作戦通りだったかは知らないが、結果は結果だ。受け止めろ。それに、お前の実力じゃ俺には勝てない。あの二人よりも酷いことになるぞ」


「…だろうな。だが、今さら退くことはできないッ…!」


 ――血迷ったか。


 無謀にも直進してくるワーズに対して、ヘイトは素手で立ち向かった。


「はあッ!」


 並の人間同士ならばいざ知らず、ワーズの細剣はあっさりヘイトの右手に掴まれた。


「くッ…」


 ワーズは咄嗟に細剣を手放すと、後方宙返りで身を引いた。


 ヘイトはいとも簡単に細剣を握り潰して粉々に粉砕し、足元に欠片をパラパラと落として見せた。


「終わりだ」


 わずか二歩で、ヘイトはワーズとの距離を詰める。


 ヘイトが振りかぶった右の拳をかろうじて避けるワーズ。


 しかし、左手の二打目は避けられなかった。


 バキバキとあばらが砕ける音がして、ワーズは吹き飛ばされた。


「ゲホッゲホッ」


 血反吐を吐きながらも立ち上がったワーズの顎を、ヘイトは容赦なく蹴り上げた。


 金属製の甲冑を身に纏ったヘイトの足蹴りで、ワーズは高く打ち上げられ、地面に落ちて動かなくなった。


「うぅ…、酷い有り様ですけど、やりましたね…」


 シルバはどうやら目を背けているようだ。


「ああ。フェガリ様の仇だ…」


 ヘイトは空を見上げた。


 もうこの世に、魔神フェガリは存在しない。


 だが、まだ終わりはしない。


 俺の世界に、かの神がいるうちは――。

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