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クリスタルタワーの魔将軍 ~最凶の魔物の復讐劇~  作者: 鹿竜天世
第二章 この世に神のいるうちは…
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集結する光と闇

「パルミィ・ジュリアート…」


 口にするのも懐かしく感じるその名を、フェガリは言った。


「へェ、ウチのことォ、覚えてるんだァ。嬉しいなァ」


「忘れるものか。私は、一度会った人物のことは全て記憶している」


「すごいねェ。尊敬しちゃうゥ」


「微塵も思っていないようなことを口にするべきではないと思うが、ジュリアート」


「ヘヘ…。相変わらず固いなァ、フェガリは…」


 この場に彼女が現れたのは想定外かつ、厄介だ。


 パルミィ・ジュリアートがいるとなると、他の三人もいるはずだが――。


「今日はワーズたちはどうした? 姿が見えないようだが」


「そう! そうなのォ! ウチィ、誘拐されちゃってェ。監禁されてたんだけどォ、見張りが死んじゃってェ…。もう何が何だかって感じなんだよねェ」


 どうやら彼女も戦いの戦渦に巻き込まれた被害者らしい。ならば、一応意向を聞いておいてもいいかもしれない。


「ジュリアート、お前は、そこの死にぞこないの仲間か?」


 フェガリはアンクランを顎でしゃくった。


 パルミィは片足だけで立っている男を一瞥して言った。


「ウーン…。仲間かって聞かれるとォ、そういう気もするしィ、そうじゃない気もするかなァ…。まァ、ワーズ次第ってとこはあるけどォ」


 彼女は本当に何の状況も理解していないらしい。というより、すべてワーズ任せといったところか。


「そうか。なら、そいつを消し炭にしたところで何の感情も抱かないな?」


「えェ? それはどうかナ…?」


 翡翠の色をしたパルミィの両目が光を帯びる。


 次の瞬間、フェガリを猛烈な旋風が襲った。


 風圧が刃となり、かまいたちのように襲い来る。


「何か癪に障ることでも言ったか?」


 フェガリは自分を取り巻く無色透明の防壁の中から問うた。


「あんタァ、フェガリだよネェ…!? 殺しちゃっていいんだよネェ!?」


 フェガリはため息をついた。


 これだから厄介なのだ。手綱を握る者がいないと、彼女はたちまち暴走する。


「風の魔法は扱いに気を付けた方がいい」


 フェガリはそう言うと、予備動作なしに魔法を跳ね返した。


 目視が困難な魔法は、それがどの方向に作用しているか把握することが難しい。仮に魔法を唐突に跳ね返されれば、相手がどうなるかは明白だ。


「ちょ、ねェ!!」


 パルミィは困惑した。


「今はウチが攻撃してるんだけどォ!?」


 風の勢いが強くなる。


 ――さて。彼女が面倒になるのはここからだ。


「ちょっとォ! そんなとこで突っ立ってないで、手伝いなさいよォ!」


 城壁の影でかろうじて難を逃れていたアンクランに白羽の矢が立った。


「…ジュリアートさん、そうおっしゃるなら、この足を何とかしてくれませんかね」


「しょうがないなァ!」


 風を巻き起こしながら、パルミィはアンクランに向けて手を振りかざした。


 見る見るうちに失われたアンクランの足が修復されていく。


「さすがです、ジュリアートさん。ですが、私に協力を求めるなら、あなたも協力してくれないと」


「知らないってェ! 勝手にしなさいよォ!」


 この時のアンクランの困り果てた表情も、なかなか珍しいのではないだろうか。


 こうも縦横無尽に風の刃が吹き荒れていては、接近戦に主眼を置くアンクランは思うように立ち回れない。


 パルミィも恐らくそれが分かっているのだろうが、そんなにシビアに力を制御できるほど彼女も器用ではない。


 フェガリはパルミィを指差した。


 こちらの動きに気が付いたアンクランがいち早く行動する。


 瞬間移動でパルミィに体当たりし、フェガリの指先から放たれた立方体の軍勢を回避させる。


「コラァ! なにしてんのォ!?」


 折り重なるようにして倒れ込んできたアンクランに対して、パルミィは怒りをあらわにした。


「今のを見ていなかったのですか? 彼の光線に当たれば、我々は消滅してしまいます」


「知るかァ、そんなの」


 起き上がった二人はこちらに向き直った。


「まあいいでしょう。誰であれ、加勢してくれるというのならば歓迎です。少々分が悪かったものですから」


 2対1か。


 二人の能力は分かっている。


 アンクランは瞬間移動。剣術の腕は並かそれ以上。調停者独自の保有する能力については、実戦ではあまり役に立たない。たしか、死霊術の類だったはずだ。


 パルミィの持つ能力はさっき見た通りだ。あらゆるものの修復。風の魔法は、単に彼女が得意とする魔法であるというだけだ。


「見つけたぞ、ジュリアート!」


 これからどう戦おうか戦略を練ろうという時に、またしても客が来た。


「心配したのよ、パルミィ」


「もう、ワーズもサラ姉も無茶苦茶だよ!」


 三人とも見知った顔だ。


 ワーズ・ハミルトン、サラ・ブランシェット、それにマイク・ティコリス…。


 こうなると5対1か…。いくらなんでも不利かもしれないな。


「わァ! みんな来てくれたんだァ!」


「来るのが遅くなって済まない。追跡に少々手こずったのだ」


 ワーズはそう言いながらマイクをチラッと見た。


「ちょっと、僕のせい!? あんまりだよ…」


「そうそう。ティコちゃん一人の責任にするのは酷というものよ」


「ありがとう、サラ姉。味方してくれるのはサラ姉だけだよ」


「サラ、あまりそいつを甘やかすな。ところで――」


 ワーズが気になったのは、杖を捨てて剣を持った男のことだった。


「そこにいるのはアンクランか? 死んだとばかり思っていたが…」


「事実を確認もせず死人扱いとは、酷いものですね。私はこうして生きていますよ」


「ケプランでのことはお前が絡んでいると聞いている。後で詳しい話を聞かせてもらおうか」


「もちろんです」


「そして…」


 次にワーズが見たのはこちらだった。


「魔神フェガリ…」


「まだ私を神と呼ぶデバッガーがいたとは。光栄の至りだ」


「この肩書きは崇拝ではない。嘲りだ」


「悪に手を染め、闇に落ちたと…? まあ、一方が正義を主張するなら、もう片方は悪にならざるを得んだろうな」


「理屈をこねるな、裏切り者が」


「創世者を裏切り者と称するか。さて、どちらが正義なのやら…」


「正義だ悪だは関係ない。お前を抹殺しなければ、この世界に未来はないのだ」


「…そうか。やってみるといい」


 五人の調停者を前に、フェガリは笑みを浮かべた。

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