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クリスタルタワーの魔将軍 ~最凶の魔物の復讐劇~  作者: 鹿竜天世
第二章 この世に神のいるうちは…
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サラ姉の実力

「一瞬でバレる変装は、もはや偽装ともいえないと思うのだが、どうだ?」


 ワーズがパルミィの姿をしたそれ(・・)に細剣の切っ先を向けると、彼女は薄ら笑いを浮かべた。


 …不気味すぎる。


「拙者としたことが、不覚であった」


 剣を向けられたパルミィではない何かは、男声と女声が入り混じった妙な声を発した。


「貴様、エンクウだな?」


 ワーズは問うたが、エンクウは答えない。


 実質、それが答えのようなものだ。僕にでもわかる。この気配はパルミィのものじゃない。


 大体、さっきパルミィに偽装していた時の口調が悪かった。彼女の喋り方は特徴的過ぎるし、いつも一緒にいる僕たちなら、すぐに様子が変だとわかる。


「ジュリアートをどこへやった?」


 ワーズは続けざまに問いかける。


 が、エンクウは答える様子がない。


 そればかりか、彼は突如として行動を起こした。


 至近距離――もはやワーズの細剣が突き刺さりそうな間だというのに、クナイを投げつけたのだ。


 静寂の森に金属音が響き渡り、クナイがあらぬ方向に飛んでいく。


 あんなに近くから投げつけられたクナイを弾き飛ばすなんて、ワーズもただ者じゃない。


 しかし、その刹那にエンクウは後方に飛び退いてワーズから距離をとっていた。


「サラ、厄介だ。さっさと蹴りを付けよう」


 ワーズが冷静に言う。


 こういう時のワーズは恐ろしいほど落ち着いている。だからこそ調停者の素質があるともいえるのだろうけど、味方とはいえ、心底恐ろしい。なぜなら、何をしでかすか分からないからだ。


「そうね…。私もイライラしてきたとこだったし」


 …こういう時のサラ姉は――正直わからない。僕はまだワーズたちと行動を共にし始めて間もないし、サラ姉の戦闘スタイルは見たことがないから。だけど、聞いたことがある。サラ姉は、凄腕どころじゃない。魔法使いの中でも特別、馬鹿ぢからの持ち主なんだそう。


「おい、変態。動けるなら、森にパルミィの居所を尋ねてみてくれ。こっちは俺たちで片づける」


 そんな簡単に言ってくれちゃって…。


 ま、まあ、僕は戦闘に関してはからっきしだし、それ以外に選択肢はないのだけど。


 2、3回うなずいて、僕は木々の囁きに耳を傾ける。


 カサカサ…。


 葉が擦れ合う音。木々たちはパルミィを探してくれるようだ。


 ガサガサ…。


 少し騒がしくなってきた。もう少しで見つかるのかな…?


 ザワザワ…、バキッ。


 ん…? 今、枝が折れたぞ。


 メキメキメキ…、バキキッ!


 枝どころじゃない。根っこが断ち切れてる…!?


「覚悟しなさい!!」


 森に神経を集中させていた僕の耳に、いきなりサラ姉の声が大音量で鳴り響いた。


「えっ?」


 唸るような地響きが足を伝ってくる。


 そして、目の前で信じられないことが起こった。


 大地が隆起し、土――というより、地面がエンクウに襲い掛かったのだ。


 地面は割れ、土が波のようにうねりを上げている。


 これじゃまるで天変地異だ。立っていることすらままならない。


 たった一人の人間を倒すために、あり得ないくらい強大な魔法が発動している。


 そのさなか、僕は目を疑うような光景を見てしまった。


 ワーズが、波に乗っている。うねる土の波の上で、ワーズが細剣を片手に波乗りをしているのだ。


「えぇ…」


 どうやら僕の頭は、この状況を理解できないらしい。


 自分が波にのまれるかもしれないのに、ただただ突っ立って眺めていることしかできない。


 個人の放った魔法にしてはド級のスケールだったのが予想外だったのか、エンクウは遥か後方まで身を引いていた。


 しかし、土の波は植物も地形も関係なく無差別に巻き込み、エンクウのもとへと津波のように押し寄せていく。その先端にワーズを乗せて。


「冒険者風情が、図に乗るな!」


 土石流の勢いのまま、ワーズはエンクウ目掛けて飛びかかった。


 地面の揺れもあってかバランスを保てていなかったエンクウは、腰の短刀で咄嗟に応戦する。


 ワーズの鋭いレイピアが短刀の刃を滑るようにして、エンクウの喉元に向かっていく。


 エンクウは間一髪のところで頭を逸らせて避けたが、無理な体勢のせいでそのまま倒れ込んだ。


 そして、その上からとんでもない質量の土砂が覆い被さっていく。


「グオオオォォォ…!!」


 獣のような呻き声を上げながら、エンクウは土砂にのまれていった。


 やがて、森に静けさが戻って大地の傷跡が明瞭になった頃、一部始終を呆然と立ち尽くしたまま見ていた僕のところに、サラ姉がやってきて言った。


「パルミィの居場所はわかった?」

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