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クリスタルタワーの魔将軍 ~最凶の魔物の復讐劇~  作者: 鹿竜天世
第一章 最凶の魔物
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旅立ち2

 下に降りると、そこには傷ついた魔物たちがいた。皆、このクリスタルタワーを守る為にここに住んでいる者たちだ。


「ああ、ヘイト様、どうしてこちらへ」


 仲間の介抱をしていた武者風の魔物が言った。


「お前たち…」


 ヘイトはそれらの光景を見て、言葉が出なかった。


 ここにいる者たちは、来る日も来る日も攻め入ってくる人間を何とか食い止めようと、満身創痍になりながらも必死に戦ってくれていたのだ。


「申し訳ありません。我々も全力を尽くしたのです。しかし、あやつら来るたびに力を増しているようで…」


 武者風の魔物はうなだれた。


「苦労をかけたな。今まで来てやれなくてすまなかった。もっと早くにここに来るべきだった」


「そんな、とんでもない…」


「悪いが、もう少しだけ辛抱してくれるか? 俺はこれからここを出る。魔物と人間の戦いに終止符を打つためだ」


 ヘイトが言うと、武者風の魔物の顔に驚きの色が浮かんだ。


「ヘイト様自ら打って出るというのですか? それはなりません。もしそうなら、我々も総力を上げて出陣いたします。微力なれど、お力に――」


「ダメだ。ここの留守を預かる者が必要だ。俺が不在ということを知ったら、人間どもがどんな暴挙に出るか分からない。態勢を立て直して、守りを固めるんだ。お前にここの守備を任せる。頼まれてくれるか?」


 武者風の魔物は少し迷った様子だったが、受理してくれた。


「分かりました。ヘイト様のご意向とあらば、その命、謹んでお受けしましょう」


「お前、名前は?」


「名、ですか? そのようなものはとうの昔に捨ててしまいましたゆえ、持ち合わせておりません」


「ならお前は今日からクザンだ。クザン、後は頼んだぞ」


「ははっ、ありがたき幸せにございます」


「ああ、それから」


 ヘイトはそう言うと、クザンの額に手を当てた。


「ヘイト様?」


 驚きの表情を浮かべるクザンに、ヘイトは言った。


「お前に少しだけ力を分けてやる。これは、俺がいない間、お前が俺の代わりになるための力だ」


「分かりました。このクザン、命に代えてもこの塔をお守りいたします」


 ヘイトは頷くと、クザンと名づけた魔物に背を向けて、再びタワーを降り始めた。


98階から1階に至るまで、ヘイトはタワーの守護をしていた魔物たちにできる限り声をかけた。笑顔で返す者、奮起する者、礼を述べる者、踊りだす者…。いろいろな反応を見せる者がいたが、誰も泣いてすがってくるような奴はいなかった。皆、強い意志で生きている。ただ人間にやられるのを待っているような奴はいない。


ヘイトはそれを見て、なおさら元気づけられた。復讐の旅立ちには素晴らしい門出だ。


シルバを見やると、彼女もどこか嬉しそうだった。


俺は認識した。この世界における自分の立ち位置と、影響力を。


俺は、必ず成し遂げて見せる。


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