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クリスタルタワーの魔将軍 ~最凶の魔物の復讐劇~  作者: 鹿竜天世
第二章 この世に神のいるうちは…
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誤算と捜索

「あ、あのさ、僕、考えたんだけど――」


「却下ァ!」


 僕の提案は提示する前に却下された。パルミィに。


「マイク、少しは黙ったらどうだ?」


 ええ…、ワーズまで…。


 なんで僕だけいっつもこうなんだよ…。


 そりゃ、集会所の鍵の術式を勝手に教えちゃったのはまずかったと思ってるし、反省もしてる。けど、そこまで怒ることかなぁ…?


「ティコちゃん、私たちね、今、相当切羽詰まってるの。だから、みんなカリカリしてるのよ」


「そ、そっか…。そうだよね…」


 サラ姉の言う通りだ。


 数時間前、僕たちはクーパーによる襲撃を受けた。


 アジトでは事を穏便に済ませたかったワーズは、あとで急襲して刀を奪い返すつもりで、妖花月光刀を差し出した。そこまではいい。


 その後、クーパー率いるパーティーの追跡を始めた僕たち四人は、広大な森のど真ん中でその手掛かりを見失った。


 完全に忘れていたんだ。クーパーのとこには、エンクウっていう凄腕の忍びがいることを。


「煙に巻かれちゃったねェ」


「パルミィはいいよなー。いつも能天気で」


「バカァ! ウチだってこれでもいろいろ考えてるんだからァ!」


「じゃあ、何かいい案は見つかったのか?」


「ぐぬ、ぐぬぬぬぬぬゥ…」


「やっぱり何も思いついてないんじゃないか!」


「こらこら、ティコちゃん、あんまりパルミィをイジメちゃダメよ?」


「は~い」


 僕たちはいっつもこんな調子だ。今まで、これといって大きな危機に直面したことなんてないから。


 ただ、少なくとも僕はこういうとき、いつでも危機感を持っている。解決に向けて糸口を探そうと努力するし、仲間への協力も惜しまない。


 その点、サラ姉とパルミィはどっちかというと傍観者だ。


 もう気づいてると思うけど、僕ら四人の中で頭脳は誰かと問われれば、もちろんワーズだ。他の三人は、あくまでワーズの手足。だから、問題解決に一番尽力してるのは実質、ワーズかもしれない。


 それでも、何も考えなくていい理由にはならない。僕はそう思う。


「さて、どうしたものか…」


 ワーズがこれほど深刻そうな顔をしているということは、ちょっとヤバいってこと。


 サラ姉とパルミィは二人でイチャついてるし、そっちの方も気になるけど、ここは僕が一肌脱ぐべきだと思う。鍵の責任もあるしね。


「ねぇ、ワーズ。僕にいい考えがあるんだけど」


「なんだと?」


 その『なんだと』には、恐らく二つの意味が込められていたと思う。


 一つは、『この局面を打開できる案を代わりに見つけ出してくれるとは嬉しい限りだ。早く教えろ』。


 そしてもう一つは、『ふざけるな、死ね』。


「…えっとね、僕の力を使えばいいんだよ」


「お前の力…?」


 そう。ここのみんなは、まだ入って日の浅い僕の力についてよく知らない。ワーズが張り巡らせている思考の中に、僕の存在が無くても当然だ。彼にとっては戦力外なのだから。


 でも、こういうとき、僕の力は活かせると思う。


「うん。植物に尋ねるんだ。あの者たちはどこに行ったのかって」


「お前、そんなこともできるのか…」


「これでも魔法使いの端くれだからね」


 そう言って、近くにあった樹の幹に顔を寄せる。


 軽く額を当てて、木々のざわめきに耳を傾ける。


「でもさァ、ホントに意外だよねェ。この変態さんがさァ、魔法使いだなんてェ」


「そうねぇ。でも、私はティコちゃんにピッタリの職業だと思うわよ? 特に、攻撃手段を知らない魔法使いなんて、ティコちゃんらしいじゃない?」


「アハハ!! たしかにィ! 戦えない魔法使いも珍しいけどねェ!」


 …ダメだ、集中できない。


「それでェ、何か聞こえたわけェ?」


「なんにも聞こえないよ!!」


 僕が珍しく大声を出して怒ったからか、森全体が静まり返った。


「アハ、怒ってるのォ…?」


 パルミィの声は、笑いを含んではいるが、勢いを失っている。


「べつに、怒ってないよ…。ただ、集中できないんだ。静かにしてくれないと」


 パルミィは決して謝らないだろう。それはわかっている。でも、このテンションは明らかに反省している証拠だ。


「ジュリアート。少し静かにしてやれ。それに、サラもな」


 サラ姉も反省しているようだ。


 ま、個人的にはサラ姉にいくらうるさくされても、怒る要素なんて一ミリたりともないんだけどね。


 気を取り直して、木々の声を聞きに入る。


 ――答えは、すぐに聞き出せた。

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