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クリスタルタワーの魔将軍 ~最凶の魔物の復讐劇~  作者: 鹿竜天世
第二章 この世に神のいるうちは…
57/103

交渉

 砂漠の真ん中で相対する二人の人間と三体の魔物。


 甲冑を身に纏った二人の兵士は馬を降りると、兜を脱いでお辞儀をした。


「これはどうも。私は、グリテッド王国軍の参謀を任されております。トアキム・ラプステッダと申します。こちらは部下のチャーリー・グリーンフィールド」


「チャーリーです」


 紹介されたチャーリーという金髪の青年は、心なしか震えているようだった。


 それに引き換え、銀髪のトアキムは至極落ち着いた様子だ。


「クリスタルタワーの――」


 言いかけたヘイトを、トアキムは手で制した。


「ご紹介には及びません。すでに存じ上げております。あなたはもう、我々の町を一つ、滅ぼしておられるのですから」


 皮肉を込めた言い方だ。しかし、だから何だというのだろう。


「俺のことは知っているだろう。だが、他の二人はどうだ?」


「フフ…。それは、私の知る必要のないことです」


 この男は、こちらの神経を逆撫でしたいのだろうか…。


「さて、単刀直入にお聞きします。今回、このような大軍を率い、わざわざこの乾いた大地の果てまでお越し下さった訳を、お聞かせください」


「言うまでもない。お前たちを殺しに来た」


「やはりそうですか。しかし、こうして我々との対談に応じてくださっているあたり、何かこう、交渉の余地のようなものを感じるのですが、気のせいですか?」


「言うだけ言ってみろ」


「では…」


 トアキムが手を差し出すと、チャーリーはすかさず筒状の書簡を手渡した。


 彼は受け取った書簡をスルスルと紐解いていく。


「我、グリテッド王国国王、ブレンデルド・フルブリート・エスペテルロは、ここに――」


 トアキムはそこで息を大きく吸い込んだ。


「開戦を宣言する!!」


 …は?


「わかっていただけましたか? 我らの国王は非常に怒っておいでです。故に、あなたがたを完膚なきまでに潰す、と」


「それを言うために、ここに来たのか?」


「もちろんです」


 銀髪のトアキムは鼻を鳴らした。


「クザン」


「はい」


 ヘイトの呼びかけと同時に、クザンが腰の刀に手を伸ばす。


 それを見たトアキムはたじろいだが、すかさず言った。


「ま、待て。使者を殺せば犯罪だ。そんなことが知れれば、どこの国からも相手にされなくなるぞ」


「…おい」


 なぜかはわからないが、ヘイトはすこぶる苛立っていた。


 宣戦布告をするのに、どうして使者を寄越す? 黙って不意を突けば、それなりに損害を与えることもできただろうに。


 それとも、これはあれか? たかだか魔物だと高を括って、なめてかかっているのか?


「ヘイト様…!」


 今にも斬りかかりそうな勢いでクザンは待機している。


「いや、よせ、クザン」


 クザンは腑に落ちない様子だったが、柄から手を離した。


「そうだ、それでよい。さて、これで私は失礼する」


「おい待て」


「まだ何か用が…?」


「お前、交渉の余地があるのかと聞いたな。あれはどういう意味だ」


「なに…、少しからかっただけですよ。魔物にも、そういう手段が通じるのか、とね」


 トアキムは笑みを浮かべたが、その顔は宙を舞っていた。


「ひ、ひえぇぇぇぇ!!」


 チャーリーがその場にへたり込む。


 重たい頭部は砂に落ちると半分くらいまで埋まってしまった。笑みを浮かべたままで。


「俺たちに話は通じるかもしれないが、人の礼儀までは知らん。俺たちは魔物だ」


 ヘイトはそう言って踵を返した。クザンとシルバも後に続く。


「よろしいのですか? あの男をあのままにしていて…」


 シルバの問いに、ヘイトは笑った。


「斬っても斬らなくても、ここはどのみち、もうじき戦場だ」

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