調停者会議…?
――とある薄暗い部屋の中。
「そ・れ・でェ、アレは結局どうなったんですかァ?」
やけに挑発的な口調で話す女。パルミィ・ジュリアート。
その話し方にはいつも苛立たせられるが、彼女は実力が相応であるがゆえに、余計に腹立たしい。
「ジュリアート、もう少し冷静に話してくれ。そのしゃべり方はイライラする」
僕の気持ちを代弁してくれた紳士。ワーズ・ハミルトン。
いつでも冷静沈着。それでいて、大胆不敵。選択を間違うことのない男。
「だってェ、気になるじゃん」
「同感ね。調停者として、見過ごすことのできない案件だもの」
大人びた雰囲気に穏やかな喋り方が耳をくすぐる大人の女性。サラ・ブランシェット。
キツイ物言いで知られる彼女は、実は身内にはすごく優しい。甘い香りや妖艶な仕草一つ一つは、いつも僕の脳みそをとろけさせる。スタイルもいいし、言うことなし。文句なしの百点満点。いや、それ以上だ。こっちをそうやって見るその視線もまさに僕の――。
「おい、変態、聞いてるのか?」
「え、あ、はい! 聞いていますとも」
ワーズに注意されて背筋が伸びた男。僕。マイク・ティコリス。
みんなの人気者。ムードメーカー的存在で、チームには欠かせないエース。変態っていうのは、ワーズが言ってるだけ。
「またサラ姉見てエロいこと考えてたんでしょォ? この変態ィ!」
あと、パルミィも。
「そうなの? ティコちゃん」
「ち、違うよサラ姉! そんなこと考えてなんて…!」
「別にいいけど、あんまり妄想して暴走しないようにね…?」
「サ、サラ姉…」
サラ姉にまでそう言われてしまっては、さすがの僕もへこむ。
「ゴホン、話を戻すぞ」
そうそう。このままじゃワーズの怒りが爆発しちゃう。
「はァい」
「ええ」
「はい」
一同が気を取り直したところで、ワーズが話を整理する。
「先日、ケプランでゾンビが大量発生する事案が起きた。それによって町は魔物で埋め尽くされ、もはや手が付けられない状況だ。元凶はすでに判明している。魔法の痕跡から出た結論から、犯人はソールシュルツ・アンクランとのことだ」
「アンクラン…」
ぼそっと呟いたのはサラ姉だ。
もしかして、あの死霊術師と面識があるのか? 僕もあったことは数えるほどしかないけど、どう見ても、まともじゃなかった。なんというか、人格が破綻してる感じ。うまく言えないけど、正気じゃないように見えた。
「アンクランは以前から死霊術に詳しかった。情報は正しいと思っていいだろう。動機についてだが、それはまだわかっていない。あの男は少しばかり狂っている節があるが、町を活気づけるために一生懸命なやつだった。それがなぜ、今回のような凶行にでたのか…」
まあ、ギルドのマスターを任されるくらいなんだから、冒険者からも相応の信頼があったんだとは思う。本来なら町を守る立場の人間が、逆に町を襲ったんだから、それは謎だよね。
「関係があるのかわからないが、さっきジュリアートが聞いてきた件――『紫眼の巨人』についても、話しておこうと思う」
これは最近巷を騒がせている噂の話だ。
「この『紫眼の巨人』とやらは、突如現れ、情報によればレヌシアの森深くにある村を一つ破壊したらしい」
「暴れん坊だねェ」
「その後、ケプランから調査の部隊が派遣されたものの成果はなく、ケプランもさっき話した通りの有り様と化した」
「つまり…何もわかっていないのね?」
「――いや、実は、ついさっき、ある女から情報が入った」
――女? ワーズに話を通せる人間なのだろうから、信頼できる人物だとは思うけど…。
「エメネ・ベウィだ。知っているか?」
…エメネ・ベウィ? 聞いたことないな。
「知ってるよォ? あの変人さんでしょォ?」
パルミィは知ってるのか。
「私も、名前だけなら」
サラ姉も!?
知らなかったのは僕だけなのか…。
「エメネ・ベウィは我々と同じ調停者だ。その昔、アンクランと組んでいたこともあると聞く。ケプラン崩壊のとき、まさに町にいたらしい」
「「「ええっ!?」」」
三重奏が響く。
そりゃあ、そんなことを聞いたら誰だって驚くだろう。
「ちょっとォ、そいつは何してたわけェ? 仮にも調停者なんでしょォ? 町が一つ潰されるってのがどういうことを意味するのかァ、ちゃんと理解してたのォ?」
パルミィの言うことはもっともだ。もっともなんだけど…。
「パルミィ・ジュリアート!!」
あー、ワーズがキレちゃった。
「その煩わしい喋り方、いい加減に何とかならないのか!」
「だってェ、これがウチの素だしィ」
「だから! やめろと言ってるだろ! お前はそれを無意識のうちにやってるんだ。その無意識が周りを苛立たせているのだから、改めるべきだとは思わないのか!」
「んなこと言ったってェ、どうすりゃいいのかわかんないもん」
「人の体に習慣づいた癖というのはなぁ…、意識しなきゃ治らないんだよ!!」
「ええェ~」
さすがはパルミィ。怒り心頭のワーズなんぞ、気にも留めてない様子だ。
「ティコちゃん、私たちは少しあっちに行ってましょうか」
おっと、これは新展開の予感…?
「そうですね。ラブラブな二人はほっといて、僕たちも向こうで仲良くしましょうか」
「え~、ティコちゃん、なんか期待してないかしら?」
「え、ええ? 何の話ですかね~あは、あははははは」
その後、僕とサラ姉はフツーにお茶会をした。




