やるべきこと
「ヘイト様! ヘイト様!」
しきりに自分を呼ぶ声で、ヘイトは目を覚ました。
「ああ、よかった、ヘイト様…」
目の前には、涙ぐんでこちらを覗き込むシルバの姿があった。
意識がはっきりとしてくると同時に、フェガリのことを思い出す。
「フェガリ様は…?」
「ヘイト様が上がられてからしばらくして、下りてこられました。わたしや、クザンさんたちに礼を告げて…」
「そうか…」
俺から力を取り返して、行く先はおおよそ見当がつく。俺がやったことの肩代わりをしようというのだろう。
フェガリの気が済むのならそれでもいいのかもしれない。
では、俺の気持ちはどうか。
力を吸い取られたことによって、かつてのような感情は失われているように感じる。あの湧き上がるような憎悪の感情も。
ただ、それは正確には、完全になくなったわけではなかった。かといって薄くなったわけでもない。
「どういうことだ…」
顔をしかめるヘイトに対して、シルバが心配そうな表情を浮かべる。
「どうかしましたか?」
「いや、なんでもない」
体を起こそうとすると、案外普通に起き上がれた。
むしろ、前より気分がいいようにも感じる。
「シルバ、俺に何か変わったところはないか?」
問いかけると、シルバはジロジロとヘイトの体を見たあとできっぱりと言った。
「ないです」
「そうか…」
「やっぱり、どこか体調が悪いのですか?」
「わからない」
それが率直な答えだった。
シルバが、俺とフェガリの間に何かあったのか問わないのは、気を遣ってのことだろう。
「心配かけたな」
ヘイトが言うと、シルバはにっこりと笑った。
「いえ、ヘイト様が大丈夫なら、よかったです!」
さて、これからどうするか。
選択肢はそれほど多くない。
フェガリを追うか、それとも次の人間の町に向かうか。
どちらにしろ、行き着く先は同じになりそうだが。
ふと、フェガリの去り際のことを思い出した。
あの口元は、確かに何か言っていた動きだった。
何を言っていたのか…。
どうしてもっとよく見ておかなかったのかと、過去の自分が悔やまれる。
ともあれ、やることは決まったようなものだ。
「シルバ」
剣をもたげて立ち上がったヘイトを、シルバは見上げた。
「はい」
「次の町へ行くぞ」
「はい!」




