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クリスタルタワーの魔将軍 ~最凶の魔物の復讐劇~  作者: 鹿竜天世
第一章 最凶の魔物
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薔薇の魔将軍2

「ナイゼル! ウェストルのカバーだ!」


「はい!」


「ローガン! 私に続け!」


「了解!」


「行くぞ! うおぉぉぉぉっ!!」


 ――なんだこの強さは。


 特に隊長のアウーレとか言ったか。戦闘能力はそれほどでもないが、状況を把握する能力と、それを考慮して仲間に正確に指示を飛ばして統率し、連携を取る力は、過去に類を見ない強さだ。他の連中も、隊長の期待に応えるべく全力で行動している。真のチームワークとはこういうことを言うのだろう。


 一撃一撃が常に隙を突いてくる。これこそまさに、連携のなせる業だと言える。それでも、俺には到底及ばないが。


 ヘイトの放った攻撃で陣形を崩された四人は後方へと下がった。


「くそ、なんて力まかせの攻撃だ。人の域を超えている」


 ウェストルと呼ばれていた男は言った。


「もしかして人間じゃないんじゃ…」


 そう言ったのはナイゼルだろう。


 長引いた戦いのせいで、ヘイトは四人の名前を覚えるにまで至っていた。


「今さら気が付いたのか? あの大男はモンスターだ」


 汗をにじませて笑みを浮かべる最年長らしき大柄な男はローガンだ。


「無駄口を叩くな。今は目の前の敵にだけ集中しろ。あいつはこれまで戦ってきたどんな敵よりも強い。一瞬の油断が命取りになるぞ」


 アウーレの一言で、他の三人は口をつぐんだ。


「さあ、行くぞ!」


 アウーレは他の隊員に檄を飛ばし、先陣を切って突っ込んできた。


 久々に骨のある敵を前にしてヘイトの胸は少し踊っていたが、彼らが次の攻撃で戦いを終わらせるつもりであることを悟った。


 剣の柄を握りなおし、深呼吸をする。


 これで終わりにするつもりなら、必ず捨て身の攻撃を仕掛けてくるはずだ。その一瞬の隙を突く。


「くらえ!」


 アウーレが振り下ろした剣を軽々と避ける。


 ここで彼に気を取られてはいけない。後続が俺の隙を窺っているからだ。


 案の定、ウェストルが剣を構えて突進してくる。


「隙は無い」


 ヘイトはそう呟いて、逆にウェストルの懐に潜り込んだ。


 3メートルはあろうかという巨体に思いがけず接近されたウェストルは、反撃の間もなく突き飛ばされた。


「怯むな! 行け!」


 アウーレが叫ぶのが聞こえたが、ヘイトには関係ない。


「はあああっ!!」


 今度はナイゼルが向かってくる。


 最年少と思しきこの少年は、チームの足手まといになるまいと必死に動いていた。が、やはり足手まといだ。


 ヘイトは走ってくるナイゼルの首をいとも簡単にはねた。


 今まで散々連携を取って仲間をかばい合いながら戦ってきながら、この期に及んでこのザマか。期待外れだな。


「そこだぁ!」


 最後の砦だったローガンが飛びかかってくる。


「それだけか?」


 ローガンの全身全霊の一撃を片手で受け止める。


「ぐ、ぐぬ…」


 斬りつけたはずの剣の自由を奪われて苦い顔をしたローガンだったが、そのあとすぐに笑みをもらした。


「隊長、やっちまってくだせえ!!」


 振り向いたヘイトの目に映ったのは、もはや回避できぬほどに接近したアウーレの姿だった。



 今日の敵は手強かった。一つ目のパーティはそうでもなかった。ただ、ここまで辿り着いただけあって、力もあったし勘もよかった。二つ目のパーティは、戦闘に特化していた。あのレベルまで到達するには、それなりの時間と労力を要するに違いない。


 アウーレの死体を引きずりながら、ヘイトは考えていた。


 あとどれほどの人間がここにきて、俺に戦いを挑んでくるのだろうか。そして、俺を倒せるほどの力を持った人間は現れるのだろうか。だとしたら、それはいつなのだろうか。


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