ランダバードの申し出
セバスとランダバードは二人して、警ら隊長であるレオのもとへ向かった。事情を説明し、討伐隊編成の際に候補として彼の名前を入れてもらうためだ。
レオは警ら隊の本部で煙草をふかしてくつろいでいた。
「失礼します、隊長」
唐突にセバスが訪れたので、レオは首を傾げた。
「どうした、セバス。今日はもう上がっていいんだぞ」
「はい。ですが、少し話がありまして」
そう言ったセバスの後方から現れた異様な気配を察知して、レオの表情は曇った。
「誰だ、その後ろの奴は?」
「彼は、クアリの村の生き残りです。名をランダバード・テロッサといいます」
セバスの紹介に合わせて、ランダバードは軽く一礼をした。
「ランダバード殿、あの方はケプランの警ら隊長で、マクラミアン・レオ隊長です」
ランダバードが頷いたのを確認して、セバスは続けた。
「隊長、実はこの者、近々結成される討伐隊に志願したいと言っておりまして…」
「何?」
レオは煙草を片手にランダバードに近づくと、品定めするように見た。
「知っていると思うが、討伐隊を指揮する人間はまだ決まっていない。編成を誰がするかも、当然未定だ。言うなれば、今はまだ机上の空論といったところだ。俺にその旨伝えたところで、別にどうなるものでもないぞ?」
「ああ、分かっている。話だけでも通しておこうと思ってな。今日は挨拶代わりだ」
ランダバードはそう返すと、早々に部屋を出て行ってしまった。
「なんだ、あの男は?」
ランダバードが去った後に、レオは口を開いた。
「私も今しがた知り合ったばかりでして――。申し訳ありません」
「謝る必要はないが…。あの男、相当な恨みを持っているようだったな」
レオは遠い目をして言った。
セバスが最初に会った時よりも暗い雰囲気はいくらか払拭されていたとはいえ、一目でそれを見抜くレオにセバスは感心した。
しかし、たしかに彼は、尋常ならざる気配を纏っている。
セバスは彼が出ていった扉を見ながら、あの面影を思い出していた。