グランの回想
あの時のあの行動を、今でもたまに悔いることがある。
もし、彼が生きていれば。あるいは、目の前に広がる世界は形を変えて存在していたのかもしれない。
けど、もうそれは叶わぬ夢だ。
だからこそ、私は迷わない。
歪んだ世界を元に戻すのではない。ありのままの姿を受け入れていく。
世界は今、あるべき方向へと道を進んでいるのだ。
私はそう、確信している。
◇
戦いの後、グランはキャルルの安否を確認した。
彼女はヘイトが事切れるとほぼ同時か直後に、その場で息絶えていた。
恐らくは、ヘイトから二回目の攻撃を受けた際、すでに致命傷を負っていたのだろう。
それでも彼女が話し続けていたのは、それほどまでに憎かったからかもしれない。
何が、という話ではない。キャルルはヘイトを、そしてヘイトを生み出した元凶を何より憎んでいた。
それは、自分が作り出した、世界の均衡を保つ存在である調停者の存在を真っ向から否定する敵だったからなのだろうか。
キャルルが守りたかったものもまた、私と同じだった。
だからこそ私は、薔薇の魔将軍を討伐した。
世界を治めるのは自分だなんて驕っているつもりはない。
ただ、私がああすることで、結果的に皆の思いを叶えられたのではないかと思っている。
それは自分を納得させるための都合のいい理由だろうと言われてもかまわない。
もし、本当の悪が私なのだとしたら、私は、一生を懸けて罪滅ぼしをするつもりだ。
皆が守りたかった、そして、創り上げたかった世界を目指して。
ここまで読んでくださって本当にありがとうございます。物語は一応、これで完結となります。思い付きで書き連ねたお話となりましたが、読んでくださっている方々がいるのだと思うと、それが書こうという意欲に繋がりました。こうして自分で初めて物語を完結まで書き上げられたのも、皆さんのおかげであると改めて感じています。また別のお話も、今度はもっと内容を詰めて投稿しようと思っているので、気が向いたらそちらもぜひ読んでみて下さい。最後に、本当にありがとうございました。