表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
クリスタルタワーの魔将軍 ~最凶の魔物の復讐劇~  作者: 鹿竜天世
第三章 主なき番人と世界の守護者
102/103

決着の時

「なにしやがんだよ、ボケェッ!」


 下劣な言葉を吐き捨てながら苦しむキャルル。


 さすがに今の攻撃では仕留めきれなかったか。


 先のグランにはなった魔力の弾丸は、実はキャルルに向けられたものだったのだ。


 グランに掠りもしなかった弾の一つをヘイトが誘導し、塔の外を周ってキャルルを死角から攻撃したのだ。


 ヘイトの読み通り、キャルルの意識を逸らしたことによってグランの暴走は止まった。


 しかし、キャルルに再起されては元の木阿弥だ。


 動きの止まったグランを尻目に、ヘイトは即座にキャルルの元へ向かった。


 瓦礫の山に墜落して起き上がろうとしていたキャルルの眼前に、ケラプディスの剣先を向ける。


「ケッ、なんだよ、気が付いてたのかよ」


 キャルルは嘲笑を浮かべて言った。


「彼女は最初から戦う意思がなかった。それなのに、急に様子が一変した。何かあると疑わない方がおかしい話だ」


「てっきりあんたはもう正気を失ってたと思ってたのになぁ。全然平気そうじゃねーか。相棒がやられて、タガが外れたんじゃなかったのかよ」


「一時はそうだった。でも、これまでの戦いの間に俺は学んだ。憎しみだけでは、何も変えられないと。それ以外の心が大切なんだってな」


「らしくねーなぁ。最後くらい、ぶっ壊れてくれてもよかったってのに」


 キャルルこそ、調停者を裏から操っていた張本人だった。


 彼女はクウィストが分離した当時から、調停者――つまりはこの世界の統治者であろうと躍起になっていたのだ。


 それは、彼女自身が調停者というシステムを作りあげた生みの親であり、全ての調停者を意のままに操れる存在だったからだ。


 今までに得た膨大な知識の中から考察し、戦闘の間にその結論を導き出すまで、大変な労力を要した。加えて、自身の仮説が真実であるかどうかは、最後の最後、この賭けに勝利するまで分からなかった。結果的に、ヘイトは賭けに勝ったのだが。


「で、どうするよ。あたしを殺す? ま、そしたら全部終わるけどね」


「調停者という仕組みは破壊されるのか?」


「さあね。そんなの、死んでみないとわかんないでしょ」


 もしキャルルにとどめを刺すことで、グランの存在そのものが消え去ってしまうのならば、それは避けたい。


 躊躇うヘイトに、キャルルは言った。


「甘いなぁ、ヘイトくんは」


「ぐっ・・・?」


 背後からの衝撃で、ヘイトは自分の体を見下ろした。


 自身の胴体から、輝く白い刃が突き出している。


「話し過ぎだよねー。キャハハハハ!!」


 立ち上がるキャルルが悪意に満ちた笑みを浮かべる。


 肩越しに振り返ると、そこには涙を流して剣を持つグランの姿があった。


「・・・すみません、ヘイトさん。でも、こうするしかなかったのです」


「グラン・・・」


 グランの目は正常に見える。


 つまりこれは、彼女自身の意思で行ったということなのか。


 ・・・だとすれば、後悔はないかもしれない。


「グラン・・・、最後に伝言だ。クシフォスからの・・・」


「クシフォスが・・・?」


「クウィストが、裏切ったのは、・・・を、愛していた・・・から・・・」


「ヘイト・・・!」


 ヘイトは事切れた。


 聖剣の光に包まれて、彼の体が灰になっていく。


 その光の中にひときわ輝くものがあった。


「これは・・・特異点・・・?」


 手を伸ばし、光を手に取るグラン。


「そう・・・。これが、あなたの心・・・」


 グランは手に取った輝きを抱きしめ、いつの間にか晴れ渡った空を仰いだ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ